EP.03 記憶──とある冬の日
少女はひたすら歩いていました。
自分の捨てられた意味も忘れ、ただひたすらに。
疲れ果てた時、彼女に降り注いだ光、奇跡。
──それは
「……またこの夢」
お祈りをして眠りにつくと、少女は必ず夢を見ました。
しかし、悪夢ともいい夢とも呼べないそれはいつも曖昧に終わります。
多分、自分の記憶なのだろう、と少女はぼんやり思うのですが、思い出すことは出来ません。
まるで、封印されているかのように。
その記憶だけが、少女の奥底に封印されているかのように。
──今年ももうすぐね。光臨祭。
──今年は無事に終わると良いですね、奥様。
──そうね。あの日みたいにならなければきっと無事にいくわ。
──はい。私も影ながら支えます。
少女は自分の母親“らしい”人と使用人の言葉に首を傾げました。
一体何の話だろう、と。
そして、“こうりんさい”とは何だろう、と。
──今年の候補の子は?
──それはそれはとても立派ですよ。
──邪魔者は?
──あの日みたいにならないよう、使用人全員で警備に当たります。
──分かったわ。
ちっとも分からない話に、少女はついていけませんでした。
きっと、自分には関係のない大人の話なのだろう。
そう少女は思いました。
そう、思いこむことにしました。