第二話:魔王と勇者と青年の出会い
更新が少し遅れました><
月曜日に更新するつもりだったのですが話しをまとめるのに時間がかかってしまい火曜日になってしまいました。
申し訳ありません〜
この世界は魔王が恐怖の象徴ではない世界。
名をケルトリアと言う。
草木の育たぬ最果ての地と言われるこの場所に聳え立つ古城。
その王室でなにやら話し声が聞こえる。
すこし、覗いてみることにしよう。
「なぁフィヴ、外の世界が見たい。」
そう言ったのは人間で言うところの15、6歳の女の子だった。
短めに切り揃えられているライトグリーンの髪の間から見える小さな2本の角が、彼女が人間でないことをものがたっている。
背丈は高いほうではない。たぶん160cmもないだろう。
そんな幼さの残る彼女が現在の魔族の長、魔王である。
その魔王である彼女の側近・・・というより世話係のような存在が彼ら、フィヴとフィルである。
なぜ二人なのか?それは彼らが双子の魔族だからだ。
フィヴとフィルは双子なのに対照的な性格をしている。フィヴは活発で積極的だが、フィルは物静かで消極的だ。
「そう言われましても、あなたは今や魔王という立場。軽々しく出歩けるものではないのですよ。」
彼女は生まれてからこの最果ての地から出たことが無い。
しかし魔王となった今では他国との貿易もあり、最果ての地以外の話を耳にすることも多い。
そうなれば15,6歳の少女が興味を持たないはずが無いだろう。
だいぶ話がそれてしまった、なぜ彼女が魔王をしているのかを話そう。
魔王には、魔族の中でもっとも魔力が高い者が選ばれる。
年齢や性別などは関係なく、5人の審判員に選ばれた者が魔王となる。
魔王の地位を継承する条件は先代の魔王の命が尽きたときだ。
それが病気で命を落とそうが、寿命をまっとうしようが、殺されようが、先代の魔王の命が尽きたときのみ魔王の地位が継承される。
なぜこのような制度なのか、それは魔族の持つ魔力は生まれてから死ぬまで変化しないからだ。
先代の魔王が病気で若くしてこの世を去ると、幼い者が魔王になる場合がある。
彼女、セフィリアン・シートがいい例だ。
彼女が魔王になってから半年、政はすべて先代の魔王の側近が執り行っている。
魔王の側近も地位が継承されれば継承される。側近を選ぶ権利を持つのは魔王のみ、最大4人まで選ぶことができるのだ。そして選ばれたのが先ほども紹介した彼らだ。
「それでも外の世界が見たい。あたしは魔王って名前の飾りなんだから居ても居なくても変わらないでしょ?」
「そんなこと言うものではありませんよ。」
「政以外にやることなんて無いじゃない、やっぱりあたしなんてただの飾りなのよ!」
彼女はそう叫びながら王室を飛び出していった。
フィヴは急いで追おうとして勢い良く閉められた王室の扉に激突して目を回していた。
それから数日が経ったある日、魔王ことセフィリアスの姿が最果ての地から突如として消え去った。
そして、それを追う様に魔王の側近であるフィヴとフィルの姿もいつの間にか消えていた。
息を切らし、剣を支えに立つ者が居た。
その前に横たわるのは禍々しい色をした肌に長く伸びた2本の角と爪、巨大な体躯を持ち、世界を恐怖のどん底に叩き落した悪魔、魔王だ。
どうやらこの世界はケルトリアとは違い魔王は恐怖と悪の象徴らしい。
「やった、ついに魔王を倒したんだ・・・」
鎧は所々穴が開き、剣にはひびが入っていて今にも折れてしまいそうだ。
けれど戦うべき者はすでに倒れている。
兜のせいで顔は半分くらい隠れていて見えない。
男とも女とも取れる声質で中背中肉、華奢というわけではないががっちりしているという訳でもない。
今にも崩れてきそうな玉座の間から魔族幹部との戦いで別れた仲間の元に戻るため、魔王に背を向け立ち去ろうとしたときだった。
「我をここまで追い詰めるとは見事だ・・・・。」
振り返ると、倒れていたはずの魔王が膝をついた状態で起き上がり自分を倒した者に向かって言い放った。
「我はもうじき死ぬだろう。だが勇者、貴様が守ろうとしたこの世界、セルレイヌもろとも葬ってくれようぞ!」
魔王の最後の攻撃を止めようと切りかかったが、剣が魔王に当たった瞬間、剣が折れた。
それをあざ笑うかのように魔王のこぶしが勇者を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた勇者は壁にぶつかりその場に崩れた。
「無様なものだな勇者よ、貴様も所詮その程度なのだ。ふはははははは!」
高笑いする魔王を唐突に襲った衝撃に魔王が振り返るとそこには杖を掲げるローブを着た少年魔術師と、自分と同じ大きさの大剣を構える少女戦士の姿が目に映った。
彼らは勇者の仲間であり、各々倒すべき相手に向かい別れたのだが、それに決着がつき勇者を追って来たのだ。
「ぐぅ・・・貴様らあああああああああああ!」
魔王が叫ぶ。それと同時に倒れていた勇者がいつの間にか起き上がり、折れた剣の剣先つかみ魔王の心臓部に突き刺した。
今度こそ魔王は絶命したが魔王の放った最後の技が暴走し、勇者たちもろとも魔王城を飲み込んで技は消滅した。
狂弐がいつもと同じ帰り道を歩いていると、近くのグラウンドからものすごい地響きと光が見えた。
まったく、今日はやたらと問題が起きるな。
少しはゆっくりさせろよなったく。
なんて事を思いながらそのグラウンドに足を運ぶ。
グラウンドに着くとその真ん中に二人ほど誰かが倒れていた。
一人はライトグリーンをした髪を短めに切りそろえた女の子だ。高価そうな装飾を施してあるゆったりとしたグレーの服に黒いマントを着けている。
もう一人は兜をしていて顔は半分くらいしかわからないが、たぶん女の子だろう。全体的に明るめな色の布地に鎧を着ている。
そして共通することが一つ、なぜか二人ともぼろぼろなのだ。
ライトグリーンの髪の少女はなぜか服の裾やらが破けていたり、袖なんか片方なかったりする。
兜を着けている少女は着けている鎧がほとんど壊れていて使い物にならないような状態だ。
そんな二人を前にした狂弐。
さて、どうしたものか。
ここに放置していくわけにも行かないしな、かといって二人を抱えて家までいけるわけではない。
手は2本しかないのだ。
おし、とりあえず
「おい、お前ら起きろ」
頬を軽く叩き呼びかける。
すると少しして二人が目を開けた。
「あれ、あたしはいったい・・・ここは・・・?」
「ここは・・・・そうだ、メシア!イャクウ!」
頭を抑えてゆっくりとあたりを見回すライトグリーンの髪をした女の子と、キョロキョロと何かを探すようにせわしなく周囲を見渡す鎧を着た少女。
「おう、お前らこんなところで何してんだ?と言うより何者だ?」
その言葉でようやく狂弐の存在に気づいた二人が立ち上がり狂弐を見る。
もともと立っていた狂弐は思う、こいつら結構背低いな。年齢的には14、5歳に見えるな。
「お前はいったいなんだ」
「あなたはいったい誰ですか?」
二人の対応は俺が何者かと言うことらしい。最初に質問したの俺なのに・・・まあいいか。
「俺は鎖野狂弐、とある学校の2年だ。で、お前らに聞きたいことが山ほどある・・・が、とりあえず俺の家へ来い。まずは傷の手当てをさせろ。」
正直なところ、この特殊な格好をした彼らとこの場に居たくないのだ。
俺がまるで危険な趣味の持ち主に思われる。それだけはマジで勘弁だ。
しかし、彼女らは怪訝な顔をして俺のことを見たまま動こうとしない。
「ん、どうした?」
もしかしたら俺の言ってることが分からないのかもしれない、なんて思った矢先。
「怪しすぎる、いきなり家に来いって何をたくらんでいる」
「あなたは、いきなり何言ってるんですか?」
露骨に警戒されている。
狂弐は眉をヒクヒクと痙攣させながら極力表情を崩さずに二人を指差して言った。
「お前ら、怪我の手当てしなくていいのか?それにその格好何とかしないと不審に思われるのはお前らの方だぞ。」
そう言われて二人とも自分の姿を再確認した。
「ふん、だからどうした」
「た、確かに酷い格好ですが・・・」
今更ながら言うが狂弐はあまり我慢強い方ではない。というより超がつくほどの短気だ。
なにか【ブチ】という音が聞こえた気がする。
その直後、狂弐が切れた。
「そんな格好でいるお前らとこの場に長く居たかねぇんだよ!!人が気を使って声かけてやったってのにそういう態度を取るなら俺はもう知らん!」
突如として切れた狂弐に体をビクっと振るわせた二人を他所に、狂弐は踵を返して歩き始めてしまった。
とっさのことで何がなんだか分からなかった二人だが、今彼が居なくなってしまったらとてつもなくまずい状態になるのではないかと思い狂弐を追い、謝った。
「う、疑ったりして悪かった。」
「ごめんなさい、いろいろと混乱していて・・・。」
一瞬だけ止まった狂弐だが、二人の言葉を聞いてか聞かずか「付いて来い」と一言だけ言うとまた歩き始めた。
後ろの二人は少し首を傾げて狂弐に付いて行った。
しばらくすると狂弐の自宅に着いた。
二階建ての一軒家で庭付きと結構広い。
狂弐は二人をリビングに案内した後「少し待ってろ」と言ってリビングから出て行ってしまった。
二人残された彼女らはしばらく無言だったが、その空気に耐えられなくなったのか兜をかぶった少女がライトグリーンの髪の少女に話しかけた。
「ねぇ、どうしてあそこに倒れていたの?」
突然話しかけられてびっくりしたのか、少し体を振るわせた。
「それは」
ライトグリーンの髪をした少女が口を開いたとき、ガチャと音がしてリビングのドアが開き狂弐が戻ってきた。
「とりあえずお前らこっち来て座れ。」
リビングの真ん中で立ち尽くしていた二人をソファに座らせてガーゼと消毒液を使い二人の傷を治療していく。
このとき治療の邪魔だと言うことで兜を着けた少女に鎧と兜を取るように言った。
鎧の下にも布地の服を着ているので裸になるわけではない。
言われたとおりに兜と鎧を取った彼女は、短めの黒い髪を少し乱している。
そして、一番特徴的だったのが左右の目の色が違うことだ。
確かオッドアイとか言った気がする。左が赤で右が青色をしている。
しばらくして傷の手当てが終わると二人にマグカップを渡した。
「ホットミルクだ、砂糖が入ってるから少し甘めだぞ。」
そういわれて恐る恐るコップに口をつける二人。
「ん、おいしい」
「なぜか落ち着きます。」
少し驚いた様子の二人に、椅子に腰掛けた狂弐が尋ねた。
「んでだ、まずお前らの名前を教えてくれ。」
まずライトグリーンの髪をした少女が名乗った。
「あたしはセフィリアン・シートよ。」
次にオッドアイの少女が名乗った。
「ボクはリアルト・シャルンです。」
「セフィリアン・シートにリアルト・シャルンねぇ。んじゃセフィリアンとリアルトは何者で、なんであそこに倒れてたんだ?」
もっともな疑問で、さっきリアルトがセフィリアンに聞いたのと似たような質問だ。
二人はその質問に同時に答えた。
「あたしは・・・」「ボクは・・・」
「魔王よ」「勇者です」
その言葉に三人は固まってしまった。
リアルトはセフィリアンを見つめ、セフィリアンはリアルトを見つめ、狂弐は二人を見つめている。
しばらくして、三人は別々の行動を取った。
リアルトは座っていたソファから右方向に跳ねるように立ち上がりる。
セフィリアスも座っていたソファから左方向に飛ぶように立ち上がった。
そして狂弐は大笑いをしている。
「勇者?魔王?ばっかじゃねぇの!あっははははは可笑しー頭大丈夫かお前ら。」
しかし二人はその言葉にも耳を傾けず互いを睨み動こうとしない。
「まさかあんたみたいなのが勇者だなんて思わなかったわ!」
「それはこっちの台詞だ。そんな姿の魔王なんて始めてみたけど、魔王は魔王だ!」
火花がちりそうなほどにらみ合っている二人をなだめるように狂弐が喋る。
「おい、お前らとりあえず座れ。何の因果があるかは知らないけど今は俺の質問に答えろ。殴り合いだの殺し合いだのはその後俺の家以外の場所でやってくれ。」
だが二人の耳には届いていない。
少しして取っ組み合いが始まった。武器を持っていないため取っ組み合いになったのだ。
けれどその二人の頭に狂弐の拳が炸裂した。
「てめぇら俺の話を聞いてたのか?今は俺の質問に答えろっつったよなぁ?そんなにこの場で天昇したいのかごるぁ!」
拳骨の痛さと狂弐のあまりにも強い殺気に二人は震えながらソファに座りなおした。
「んで、なんであんなところで倒れてたんだ?」
二人が何か目配せしているのを見て見ぬ振りをしながら言葉を待った。
先に話し始めたのはリアルトだった。
「ボクは、多分ここじゃない世界で仲間とともに魔王を倒したんです。でも、魔王の最後の攻撃が暴走してこの世界に飛ばされてきたんです。」
「リアルトが居た世界はなんていうんだ?」
「ボクが居たのはセルレイヌという世界です。」
「わかった。で、セフィリアンはどうしてあそこに倒れてたんだ?」
「あたしは魔王の仕事が嫌でお城を抜け出したら勇者って名乗る人たちに襲われて、殺されそうになったから魔力を開放したら制御できなくなっちゃって気が付いたらあそこに倒れてたの。」
「仕事って、世界を征服することか?」
狂弐が不思議そうな顔でつぶやいた。
「ううん、あたしの居た世界、ケルトリアでは魔王は恐怖の象徴ではないわ。人間の王と同じで種族を束ねるだけの者よ。」
それで、なぜ二人がボロボロだったのかその理由がはっきりした。
二人が勇者と言う単語と魔王と言う単語にやたらと反応したのはそういうことがあったからなのか。
にしても二人とも名前長いよな・・・、よしセフィとリアって呼ぶことにしよう。
狂弐が考えて居るとリアが話しかけてきた。
「あ、あの、貴女は何者なんですか?」
こいつは何抜かしてやがるんだ?
前に自己紹介しただろうが!なんで思うが口には出さない。俺って優しい!
「俺は鎖野狂弐、見てのとおり学生さ。」
すると今度はセフィ尋ねてきた。
「ここってどこなんですか?それに、学生って何?」
「ここは地球の日本って場所だ。そして学生とは、生きるすべを学ぶ者のことさ。」
二人は未だによく分からないといった顔をしているが無視する。
「ところでよぉ、お前らはさ、両方とも何らかの暴走でこの世界に飛ばされて来たわけだろう?元の世界に帰る術はあるのか?」
「「あ・・・」」
二人の顔が真っ青になってゆく。
「はぁ〜・・・その顔見るとないんだろ。仕方ないから家に置いてやる。だからさっさとこの世界のことに慣れろ。わかったな?」
「は、はい、ありがとうございます。」
「わかったわ。ありがとね、えっとキョウジ・・・でいいのよね?」
「おう」
こいついきなり呼び捨てかよ。まぁいいか。
かくして、勇者ことリアルト(以下リア)と魔王ことセフィリアン(以下セフィ)の奇妙奇天烈なドタバタ生活が始まろうとしていた。
「おい作者」
なんだよ?
「さっきリアが『あなたは何者なんですか?』とか聞いてきたときの"あなた"って貴女書いてなかったか?」
んなのしらねーよ。
「調子ぶっこいてると絞めるぞごるぁ♪」
知らないものは知らないんだからしょうがないだろう。
それに、俺は急がしグエェ
「逃げんな、少しばかり自分の立場を知る必要性があるようだな」
い、息が・・・狂弐、し、絞まってる絞まってる絞まって・・・・。
「この小説を読んでくださった皆さんありがとうございます。これからもこの狂弐を応援してください。それでは」
だ、誰もお前なんか応援しな「黙れゴルァ!」ゴフ