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柿!

場所は戻ってオード家領地。


フローレンシアは祖母の服を気に入り、体になじませるように

サイズを合わせた後は普段着のように着こなしている。

プレートが張り付けてあって重量もそれなりなのだがそれでも

涼しい顔をしているのだから周囲は驚いている。


彼女はお気に入りであるから好んで着ているのだが領民や

スタルフォスの軍人達は彼女が平服ではなく軍装を行うことで

領内の規律を守っているのだとおもっているようだ。


「今日もいい天気ですねぇ。」


「そのようです。」


護衛の騎士達とともに領内をめぐり、スタルフォスの軍人と共に戦いぬいた

領民達の慰労の言葉をかけて回る。

建物の復旧は人手がスタルフォスから流れたため早くに復興したが

農地などは簡単にはいかない。 人が居ないからだ。

スタルフォスの軍人達は土木工事や狩猟には長けていたが

農業ともなると門外漢らしく村人に混じって鍬を振るう姿は

どこかぎこちない。

しかも戦乱で馬や人に踏み荒らされてしまったので作物が取れるように

なるにはまだ数ヶ月かかるという。


「しばらくは税は無理ね、飢饉に備えないと。」


ぱかぱかと馬を進めながら私は考える。

保存食はどうしたらいいのだろうか?そしてその量産体制は

どうしたら?  そう考えていたところふと一本の木が

眼に飛び込んできた。


春もそろそろ終盤という頃合になんとなく地味な花を咲かせている。


「フリンツ、あの木はなにかしら?」


「え、ああ、あれは柿ですよ。」


「柿?」


「ええ、食べられるものが多いのですがこの柿は何故かとても渋くて

 食べられるものではないのです。」


柿・・・そういえば、聞いたことがあるわ。

甘くて美味しいし、木材にもなる良い木だけどたまに実が食べられない

木があるんだって。


「(もったいないわねえ・・・。)」


そう思っていた私の頭に不意にご先祖様の言葉が響いた。

言葉というよりは彼らが経験した記憶がよみがえったのでしょうか?

『オード殿、渋い柿は他の柿よりも食べられるようになるのに時間が

かかるのだ。 だが食べられるようになるとびっくりする

くらい甘いのだぞ。』

『そうなのか、してその方法は・・・?』

『ああ、憶えておくといい、これは保存食にもなるでな。』


おお、これぞ天恵です! 


頭に響くご先祖様のお言葉を反芻しながら私は騎士のフリンツに

このことをつたえることにしました。


「フリンツ、あの柿の実を美味しく食べる方法を知っていますよ。」


「なんと!それは本当ですか!」


「ええ、それに保存食にもできるはずよ。」


フリンツはそう言うと早速村の人達に相談してくれました。

なんでもあそこの木はたくさんの実をつけるそうですが

大抵は食べられないので畑の肥しになっていたそうで。


「それで・・・お嬢様はどんな方法を?」


「それはあの渋ーい柿を干してしまうことです。」


「干す? そうすると甘くなるのですか?」


えっへんと胸を張って頷くと村の人達は驚いていました。

柿が美味しいといことすら知らない人がいたようです。


「ええ、柿は体にもいいしドライフルーツのように長持ちします

 からたくさん作って造りおきしておけば非常時に備える

 ことができますよ。」


「それはすばらしいです、なにしろこのままでは今期の収穫高が

 心細かったので・・・。」


「あの柿は体にも良いそうですよ、曾祖父が昔戦場で仲間の騎士から

 その製法を教わったと。」


なるほどー!とよろこんでくださるので私としても嬉しいです。

これはご先祖様の功績として残るでしょうね。


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