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カリウスの危惧と確信と

「困った・・・しかし令嬢が曲者ということもある。」


謁見を終えてカリウスは二・三日の休みを頂き

その後王宮から正式に令嬢を迎えるための書類一式を

持って再度オード将軍家とサマル帝国皇帝に挨拶に向かう

運びとなった。


そんなカリウスの頭は王太子の嫁となるオード将軍家令嬢

フローレンシアのことだった。


「(あの美貌は並のものではなかった・・・。)」


あの無垢で優しげな微笑はカリウスに初恋を思い出させるような

そんな美しくも儚い野に咲いた花のような印象を与える。


「(そういえば妻と初めて会ったときも彼女はそんな

  笑みを零していたな・・・。)」


カリウスも恋愛結婚だった。 それもかなり熱烈な。

馴れ初めのシチュエーションが似ていたことも彼が初恋を

思い出すのに一役かっていた。

そんなことを考えていると自然と自分の屋敷へと向かう足が

早まる。 無性に妻に会いたいのだ。


屋敷に着くとカリウスは乱暴に甲冑を脱ぎ捨てる。


「旦那様、どうかなさいましたか?」


「アンナと話がある、ちょいと長くなるから昼は遅くなる。」


「畏まりました、ですが一体なにを急いでおられるのですか?」


早足に歩いていく主人の甲冑や篭手を器用に外しながら

執事や女中はほうほうのていでついていく。

そんな執事達に向かってカリウスは真面目な顔で答えた。


「初恋を思い出した。 跡継ぎができるかもしれん。」


「それは・・・、御武運を。」


執事達はその一言で察したのか途中で歩を止め、主人に恭しく

頭をさげ、その姿を見送った。


「あなた?」


おっとりしたカリウスの妻、アンナは必死な形相で帰ってきた

夫を怪訝そうな表情で出迎えたがカリウスはそんな

彼女を気にする様子もなくアンナを寝室に連れ込んだ。


「あなたっ、まだこんな明るい・・・うちからっ!」


「すまん、女神に当てられた。」


半ば破くような脱がし方で覆いかぶさったカリウスは

何かに魅了されたように妻と熱い午後のひとときを過ごしたのだった。




数時間後、カリウスは自分に寄り添うように眠る妻の髪を

撫でながら王太子の嫁について再び考えをめぐらせていた。


「(やはり彼女を娶ることは間違いではない!)」


直感とアンナと結婚したことで順風満帆な自分を重ね、

人生の岐路、その際に感じた直感とそれがもたらした結果。

そして妻を思わせるような女性が悪い女性のはずがない。


惚気交じりの勘でしかなかったがカリウスは自分の中にある

獣の勘に絶対の自信があった。

それゆえに危惧も必ずあたるだろう。

彼女には必ず悪い虫も寄ってくる。

王太子の今後のためにも必ず結婚は完遂されなければならない。


冷静になったつもりがまた滾ってきたのでカリウスは

妻をそっと抱き寄せた。

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