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それぞれの事情2

あとはお后になるであろうオード将軍の愛娘だが・・・。

なにぶん国交が結ばれたのはつい最近だし戦場で見える将軍や兵士と違い

姫君や貴婦人とは武人にとってとんと縁の無いもの。

美女の基準こそ人間と似通っているが醜女だと王太子がかわいそうだ。


ちらりとオード将軍を見やる。


熊のような体格と背負った大剣は身長に近い長さの巨大なもの。

顔も厳つく武人としては好感が持てたがもしも娘が父親似だったらと思うと

俺が婚約者なら裸足で逃げ出したくなる。

戦利品が在庫整理品にランクダウン。 ダイヤが石炭に変わったようなもの。


我ながら失礼極まりない想像だが将軍家の人間は皆偉丈夫だという。

その血が娘をゴリラに変えても仕方ないとも思えるのだ。


「見えてきました、あれが我が家ですぞカリウス将軍。」


オード将軍の言葉に俺ははっとなった。 いかんいかん。

ついつい最悪の事態を考えてしまう。


建物は質素ながら堅実な造りの豪邸でいざというとき軍事拠点として使えるで

あろう工夫があちこちに散見できる。

もしも此処に50人の騎士が陣地を構えたら倍の数を伴っても

落とすのは容易ではあるまい。


「立派な建物だ・・・装飾は少ないがまるで要塞のようですな。」


「どうもむさい建物で申し訳ない。」


謙遜からかそう言って頭を下げる将軍に俺と副官達は慌てた。


「そのようなことを! 我らはむしろこのような建物を手本にしたいくらいだ。」


「精強なスタルフォスの方々にそう言っていただけると私どもも鼻が高いです。」


そういうとオード将軍は初めて柔和な笑みを浮かべてくれた。

今までの戦闘で疲れきっているにも関わらず領地の建て直しに

気をくばっているのだ。 そろばんを弾いているだけのノームの

連中のために爪の垢をいただきたいくらいだ。


領地について幾つか話すとようやく打ち解けることができた。


しかし将軍という役職を代々任されるだけあって領地運営にも

おもわず唸るような素晴らしい見識がある。


このような将軍の薫香を受けて育ったのだから中身は問題ないだろう。

あとは見た目・・・。 少なくとも人間であってくれとこっそり祈った。


人の姿をしたゴリラでは殿下が不憫だからな。



そんなこんなで屋敷の前に到着すると屋敷の中が緊張に包まれているのが

手に取るようにわかる。 獣の本能がそう言っている。


「それでは娘を呼んできます。」


そう言ってオード将軍は馬を下りて玄関に向かう。 

堂々たる振る舞い、ただ歩く姿すら無駄が無いように見える。


しかし見送る背中がかすかに動いたのを俺は見逃さなかった。

将軍ほどの男が何をそんなに驚くのか。


そう思った瞬間、玄関がゆっくりと開かれる。

そして俺は出てきた人物に眼を奪われてしまった。


将軍と同じ少しくすんだ緋色の髪に見事な装飾を施された軍服を

纏った絶世の美女が微笑みを浮かべて佇んでいたからだ。

そしてその美女は整った唇からとても優しげな声で言った。


「お帰りなさいませ、お父様。」


彼女がオード家の御令嬢か!

まるで神話から飛び出してきたような姿に皆呆気にとられている。

無理もない、俺とて妻を至上と信ずるバカの一人だからこそ

こうして平静を保っていられるのだ独身者には耐えられまい。







挨拶を済ませたのにお父様はとても驚いた顔して固まってしまいました。

こんな顔はお客様には見せられませんね。


「遠路はるばるようこそスタルフォスの皆様、私フローレンシア・リリィ・オードです。 皆様の勇名は各地にとどろいておりますよ。」


騎士の礼儀を尽くして挨拶をすると狼の頭を持つお方が馬を下りて

挨拶を返してくれました。


「これは・・・、当方無骨者ゆえ武人の儀礼にてご容赦くだされ。」


そう言うと背を曲げて軽く頭を下げてくれました。

失礼の無いようにしましたがいかにも武人といった方ですね。


「それで、私はいつスタルフォスに向かえばよろしいのでしょうか?」


きっと向こうからは聞きにくいでしょうしこちらから

聞いておきましょうか。

しかし返事は歯切れの悪いものでした。


「申し出はありがたいのだがオード将軍令嬢、我が方の受け入れ準備が

 まだ整っておりませんので・・・。」


「そうですか・・・申し訳ありません、浅慮でしたわ。」


そうでした、私としたことが参戦してくださったことも忘れて

嫁ぐことばかり考えてしまって・・・。


いえ、と気遣いまで頂いてしまい申し訳ない限りです・・・。


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