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ご先祖様!・・・ご先祖様?

お祈りを済ませて顔を上げると霊廟に飾られた大剣が眼に飛び込んできます。

ご先祖様の武具は皆此処に安置され、先祖代々祀られています。


「始祖様がこれを振っていらしたのですね・・・。」


戦拵えの無骨な大剣は刀身に曇り一つなく磨かれ、うっすらと青みがかった

美しいもの。 もしも売れれば鉄の塊としてみてもとんでもない額になるでしょうね。 鍔の所にはめ込まれた唯一の飾りの宝石が光っています。


ああ、私がもっと強かったら、始祖さまのような強さがあったら

きっとお父様に心配をかけなくてもよかったのに・・・。


そう思うと悲しくなります。 お父様・・・非力なフローラを

お許しください・・・。


『嘆くことはないぞエルヴィンの子、フローレンシア。』


突然、聞きなれない、けれど懐かしいような優しげな声が響きます。

どなたでしょうか? 他人はおろか使用人すら此処には入らないのに。


『大きくなったのう、フローレンシア。』


声は複数、けれどその一つに私は聞き覚えがあります。


「まさか・・・祖父様なのですか?!」


『憶えていてくれたか・・・うれしいのう。』


きょろきょろと霊廟を見渡しているとご先祖様が眠る棺から

体が半分透けた騎士が起き上がり、こちらに微笑みかけてきます。

その中に私が大好きだった祖父オットー侯爵がいました。


『オットーの孫か、美しくなったのう、ワシは憶えておるか?』


斧槍を携えた騎士はかすかにしかありませんが・・・。


「もしかすると大祖父様?」


そう言うと大祖父様は目を細めて喜んでいる御様子でした。

他の方々はさすがに生前あったことはありませんがみな

活躍なさった高貴な騎士であり将軍。


『して、困りごとのようだが・・・。』


始祖様が大剣を杖のように突きながら棺に腰掛けます。 本当に

人間の三倍はありそうな大きさです。 オットー祖父様も巨躯を誇って

おいででしたが・・・本当に大きな方です。


「私はこのたび隣国に嫁ぐことになりました、ですが・・・。」


私は始祖様たちの前で不安と自分の無力感を洗いざらいぶちまけました。

せっかく聞いてくださるのだし、きっと隠してもばれてしまうでしょうから。


『なるほどのう・・・。』


皆大任を任されたことは多いでしょうからきっと助言をいただけると

思っていましたが虫が良すぎるでしょうか。


『ならば我等で力を貸そうであはありませんか。のう、始祖殿。』


始祖様の隣に座るご先祖様が言います。 するとご先祖様達はこぞって頷きます。 心に光が灯ったような心強さにうれしくなります。


『私はフローレンシアに槍の使い方を授けようぞ』


そう言うとご先祖様の槍が光となって砕け、

まるで息をするように私の体に吸い込まれていきます。


『ならばそれがしはこの細剣とソードブレイカーを!』


『私は斧と投擲武器を』


『無手の格闘術と弓を』


『私は長剣と馬術と騎乗槍を』


ご先祖様はどんどんと私に力をかしてくださいます。

くださいますが・・・。


『では始祖たる私はこの大剣と、皆の技術を活かす膂力と体力を

 フローレンシアに与えようぞ!』


ご先祖様は始祖様に連れ立って立ち上がり、両手を挙げます。

すると今までよりも強い光が中心に集まり私の中に満たされていきます。


力がみなぎってきます、きますけど・・・。


『これでフローレンシアもいずれの戦士にも負けぬ!』


もしかしてですけど


『オード家の戦士として戦場を駆けることが出来るぞ!』


もしかして・・・


『戦に男女は関係ない、その実力を遺憾なく発揮するがよい!』


ええー・・・


ご先祖様達は皆満足そうに笑うと少しずつ姿が薄くなり

やがて霞のように消えてしまいました。


でもまってください。


私が貸して欲しい力って心の強さというか覚悟というか。



「貸して欲しいのは武力じゃありませーーーーーーーん!」



ご先祖様は脳筋でした。


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