荒事!
柿についてわいわいと話していると不意に村から怒鳴り声が聞こえて
きました。 一体何事でしょうか?
「村長!大変です!」
剣呑な雰囲気が村の集会所からひしひしと伝わってきます。
青年の慌てぶりから考えて間違いなく困りごとでしょうね。
「村長さん、私もご一緒します。」
「申し訳ありません、お願いします。」
揉め事とあれば私が力になれることも多いでしょう。
仮に貴族が関わっていたら村長さんでは対処しきれないでしょうし。
そう思いながら村長さんの後ろをついていくと集会所前の広場で
数名の獣頭の騎士が村娘を強引に誘っていました。
「や、やめてください!」
「そう言うな、この村よりいい暮らしができるぞ?」
「私には・・・結婚を約束した人が・・・!」
「どうせ平民だろ? こっちは貴族なんだから問題ないはずだが?」
村娘は年若く結婚を控えていてもおかしくない年齢で可愛らしい
見た目をしています。 対する獣頭の騎士も身なりは立派ですが
あれでは酒場の荒くれ者となんの差も感じませんね。
「おやめなさい!」
皆よりも前に一歩出て言うと騎士たちの視線が一斉にこちらに向きます。
「スタルフォスの騎士殿とお見受けします。」
こちらの身なりを値踏みするような視線を無視して言葉を続けると
騎士達は女性を離してこちらに向き直りました。
「武勇を重ねた誇り高きスタルフォスの騎士がか弱い娘を力任せに
自由にする暴挙・・・家名に傷がつくのではありませんか?」
「知った風な口を・・・褒章を望むことの何が悪い。」
「・・・なんと、どうやら獣であるのは顔だけでない様子ですね。」
私の言葉を受けて不愉快になったのか騎士達はそれぞれ目を細め
代わりに牙を口端から覗かせる。
「身分がどうあろうとその言葉は看過できんぞ?」
「看過できないのはこちらも同じ、ではどうなさるのですか?」
言うが早いか騎士の一人が手を地面に着くと獣のように地面を蹴り
一足飛びにこちらに踊りかかってきました。
「貴様を頂くまでよ!」
風のようなスピードで飛び上がったかと思うと左右に体を振り
地面から地面へと飛び移るように飛び跳ねていきます。
なんてスピードでしょう、常人では残像を追うことすら難しいでしょう。
しかし今の私は常人ではありません。
「えいっ!」
鞘を払わずに腰から剣を抜くとタイミングを見計らって横一文字に
振りぬきます。
「ぐぶっ・・・!」
めきっと鈍い音がして鞘が騎士の顔面を捉えます。
これは鼻が折れたかも。
振りぬいた勢いのままに転がると家の壁にぶつかって停止しました。
死んでいないといいですが、スタルフォスの騎士は
頑丈だから大丈夫でしょうが。
「去りなさい、この地を騒がせたことはいずれカリウス将軍にも
届くでしょう。 恥の上塗りはおやめなさい。」
同盟国での無体と女性に負けたという二つの恥を前に普通ならば
この場で引いてくれるはずでしたが・・・。
「・・・ハッ、獣が強い雌を前に退くと思ったのか?」
「!」
騎士達の視線がさらに鋭く、そして好戦的なものに代わっていきます。
もしかして文化的に間違った対応をしたのでしょうか。
「何故俺達が褒章に女を選ぶとおもう?」
「・・・お世継ぎですか?」
「そうだ、俺達には雌を侍らせたり着飾って楽しむ虚栄心など
ない。 あるとするなら子孫の繁栄のみよ。」
つがいの雌を食わせるために騎士をしている。と開き直られてしまいました。
一斉に襲い掛かってこないのは騎士道というより
所有権をはっきりさせたいからでしょうね。
私を囲むように4人の騎士が一切の油断のない視線でこちらの様子を
探っています。 最初が駄目でも次、そしてまたその次に
私を負かし、手に入れて見せようという獣の本能。
ご先祖様の力を手に入れたからこそわかる殺意にもにた戦闘意欲に
私は思わず冷や汗をかいていました。




