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第二話

すみません、月曜日投稿目指すとか言っといて、出来ませんでした。次回、次回こそは……

 ―――――朝の光が窓から入り込むその先、真っ白なシーツの上で微睡む美少女に口付けをしてみたいと思った事はありませんか。

 ……………自分は今、まさしくそんな体験をしようとしています。






「……う、うん?キィヤァァァァァァァァァ―――――………ッ!?」

「フンゲラァ!?」


 寝ているレイナに向かってウ――……ンとキスしようとしたら、起きたレイナに悲鳴を上げられながらブン投げられました。











 オハヨウゴザイマス。先までグチグチと説教されていたメタスラです。ちょっとしたお茶目じゃん、レイナめぇ、そんなに怒らなくてもいいじゃないか……


 今何をしてるかって?朝起きた後の行動何て決まってるだろ!顔を洗って歯を磨いてるんだよ。顔も歯も無いなんて言うなよ?長年の習慣でやらないと気持ち悪いから、態々体を変化させてやってるんだから。


「……うん?鶏?」


 シャコシャコ歯を磨いていたら、正面の窓から見える一軒の家の屋根に鶏?の様な鳥が羽ばたいて上り、今まさしく鳴こうとしている。


『コッ、コッ、コッ……―――――…コッカ、コオー……ラ』

「ゴブブフッ!?」

「うわっ、汚なっ!?」


 コケコッコーと鳴くんだと思い、鳴くぞ鳴くぞと歯を磨きながら物思いに耽っていたら、あんまりな鳴き声に口に含んでいたものを噴出してしまった。有名な炭酸飲料化かよっ!


「もう、メタスラってば、何をやってるのよ。」

「ご、ごめん。だけど、あれ……」

「うん?ああ、目覚まし鳥ね。何処にでも居るでしょ?」


 目覚まし鳥って名前なんだ……まんまだな。ただ目覚ましと名前に付いている割には、鳴く時間がそれ程早い時間じゃないような……?


 よくよく見れば、彼方此方の家の屋根の上に目覚まし鳥が居り、有名な炭酸飲料を連呼している。


「ほらほら、今日は、昨日あんたが馬鹿ばっかやってた所為で行けなかったテイマーギルドに行かなければいけないんだからね。ぐずぐずしないの。」

「……うす。」


 そのシュールな光景に茫然としてしまっていた俺に、クスクス笑っていたレイナが腰に手を当てて注意してくる。レイナの容姿も合わさって、修学旅行先のまるで初々しい学生カップルの様なやり取りに俺は照れて短く返答したのだった。

※注 メタスラの妄想です。


 ここはレイナが拠点としている宿屋。それなりの良い所とレイナが太鼓判を押すだけあって部屋一つ一つの広さがそれなりにあったりする。レイナ曰く酷いとこだと部屋は狭いわ、見ず知らずの人間と宛がわられたりするらしい。


 更には此処には井戸が各階に常備されており、井戸?魔法で水を汲みあげているそうだ。宿泊客ならば誰でも自由に使っていいそうだ。風呂が無いのが気になるが、俺は今メタスラだし、レイナの体臭が……そこっ!!あんまり酷いと臭いぞだと!?美少女の体臭は花の香りなんだぞっ!!


「……おっねぇさーん、俺を顔パック代わりにしてみない?隅々まで綺麗にするよっ!!」

「あんたは朝っぱらから盛るなっ!!」

「がぶらはっ!?」


 そんな馬鹿な事を考えていると後ろに気配が。思わず飛び掛かり気味に話しかけた。仕方ないじゃん、すぐ後ろをボンッキュッボンッな美女が通り過ぎたんだからっ!!


 そんな俺をレイナが踏みつける。ぐっ、まだまだ気絶なんかせんよ!…はっ、まさかレイナが先に顔パックして欲しいのかっ!?


「それはスマナイ事をしたっ!さぁ、遠慮なく顔に乗せるがいいっ!!」

「……なわけあるかっ!!」

「がめろぼっ!?」


 ほらほらベロベロベロ…って迫ったらレイナに打ん殴られ窓の外へと放り投げられました。ヒューって音が聞こえます。そういえば此処って三階だっけ?一階毎も結構な高さがあって三階でもそこそこの高さになっていたりする。


「わきゃっ!?」

「今の声は美女だぁっ!!」


 ばっしゃんって感じで、どうやら下に水たまり?いや水が張られた桶だ。水飛沫を上げて落ちた俺の側で可愛らしい声が聞こえた。俺の美女美少女レーダーによると、年齢はレイナよりは年上、リサさんよりは下って感じだなっ!!だが美少女って年齢じゃないと思う。


「えっ?はっ?えっ?」

「やぁやぁやぁ、お姉さんのお名前は?俺はメタスラって言うんだ。お近づきの印に此処にブチューってしてくれてもいいんだよ?」

「…………だ、か、ら、知らない人に迷惑をかけるんじゃないっ!!」


 目の前で可愛く混乱している美女を眺めていると、美女の悲鳴を聞きつけたレイナがすっ飛んできた。そんなに寂しかったかい?

※注 落ちたメタスラが誰かに迷惑を掛けてないか心配しただけです。


「問答無用っ!!」

「ふっとんだぁっ!?」


 いやさ、駆け寄りながらの正確無比な蹴りはどうかと思うんだ。ほら美女も目を丸くしてるし。あっ、今…目覚まし鳥と目が合った。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………」

「いえいえ……」


 再びヒューって音を聞いて、べちゃぁ…って着地したらレイナが美女さんに謝っていた。


「それでお姉さんのお名前は?」

「今聞く事かっ!!」

「ふははは、そう何度も当たらんよ!……はぶしっ!!」


 そんな事よりもお姉さんの名前の方が大事な為、お姉さんに質問すると足が落ちて来た。レイナの格好は今日はズボン。これがスカートなら覗けるのにっ!と悔しがりながらもメタスラ自慢の足で避けて見せたら、今度は両足が降ってきた。フェイントとはやるなレイナ。


「あ、え、えーと……」

「あっ、こいつの事は気にしなくていいですから……」

「そんな事言わずにっ」

「ちいぃ」


 舌打ちっ!?レイナさん、はしたないですよ?でもそんなお蔭でお姉さんはクスクス笑いだしたし、結果オーライって事で。


「私はカルラって言います。昨日この町に来たのよ。」

「メタスラっす。昨日この町に来ました。お揃いですねぇ。」

「こいつは……」


 美女さんはカルラさんって言うのかぁ。喋り方は上品だし、腰まである流れるような赤い髪はふんわり風に靡いてるし、胸も大きいしっ!!胸も大きいしっ!!胸も大きいしっ!!大事な事なので三回強調させて貰いました。


 でもなんか違和感あるんだよな。何というか作ってるっていうか。普段は姉御とか呼ばれていそう。まぁ女性は秘密の一つや二つ持ってるもんだろうし、演技してるのも普通の事だろうし?ツッコまないでおこう。


「それじゃあ、私もまだ用事がありますし、先に失礼しますね?」

「あっ、すみません。私はレイナって言います。この町で冒険者してますので、困った事があったら聞いてください。」


 くすくす笑っていたカルラさんが一言断って去って行く。レイナが慌てて名乗りつつ俺を握りしめていた。身が出る、身が出るぅ!!バイバーイって手を振っただけじゃないかぁっ!?


「それでスカート捲りしようとしていた奴の言い訳じゃないわよっ!!」

「違うっ!!直に行こうとしてただけだっ!!」

「なお悪いわぁっ!!」


 何故か俺の行動を読み切っていたレイナに、違った部分を指摘したら空に向かって投げられました。地面にぶつけられるよりはマシとはいえ、この背筋がふわりとする感触は嫌なんだけどな。






「リィ―――サ、さ―――――んっ!!」

「大人しくしてろって、言ったわよねぇっ!!」


 ふはははは、そんな言葉は聞いていないなぁっ!!という元気のいいやり取りに、受付に座っていたリサは苦笑した。昨日一日、それもクエスト完了手続きの間と、その後の談笑にすら満たない短い間だけという付き合いの筈なのだが、メタスラの印象が濃過ぎて、しかも分かり易いという謎現象。頭から離れないのだ。


「ふげらばっ!?」


 ただ、直後に扉を突き破る様にして飛来した銀色の何かが壁にぶつかり、飛び散る様子に顔を引き攣らせてしまう。


「……まったくもう!!」

「あ、あのねぇ……」


 次いで扉を潜ってきたレイナが、潰れてグッタリしているメタスラに向かって説教の様なものを始めてしまう。一言文句を言いたくなってくるが、そんな気力も根こそぎ奪われており、頭を抱えてカウンターへと突っ伏してしまった。ひんやりと冷えているカウンターが気持ちいい。


「……ねぇ、レイナ?そろそろ話進めてもでいいかしら?」

「あっ、ごめんなさい。」

「そうだぞ。人の話はちゃんと聞かなくちゃ。」

「アンタが言うなっ!!」


 取り敢えずレイナに声を掛けて説教を終わらせ、本題へと入ろうとしたのだが、何時の間に復活したのだろうか、メタスラがカウンターの上に鎮座し、自分が元凶だと言うのにリサに賛同していた。レイナのツッコみにリサもまた声にこそ出していないものの同意してしまう。


「まぁ、取り敢えず、ハイ…これ。」

「何これ?」

「クエストの指名依頼用の用紙ね。序に遺品整理依頼書よ。」


 そんなメタスラの事は横に置いといて、でないと中々話が進まないからだ。レイナに向かって二枚の紙を渡す。それを受け取り、名前等の必要事項を慣れた手つきで書いていくレイナ。そんなレイナの手元を見てメタスラが疑問の声を上げた。


 リサはレイナが書類を確認して書き込んでいる間の暇つぶしも兼ねてメタスラに説明する。


 一枚目はギルドからの指名依頼書であり、通常ならば掲示板に貼られた簡易依頼書を受諾した証拠書類であり、これがあれば、冒険者が依頼人と揉めた時にギルドが証人として間に立つことが出来ると言うもの。


 だが指名依頼の場合は少し異なる。指名依頼の場合、その依頼者はギルドという事になり、ギルドがどれだけの人数を雇ったかという把握の為に使われることが多い。本来ならば依頼内容が異なった時にギルドが責任を取ると言うものなのだが、当然ギルドも依頼を出す時に、冒険者の性格や実力を精査している事もあって形式化している。


 二枚目は普通の依頼では出されないもの。まず無茶な依頼を受けようとする冒険者には、ギルド側から待ったが掛かるし、依頼を受けられないシステムとなっている。ましてや命の危険もある稼業である以上、態々ズルしてまで依頼を受けるメリットがないのだから。


 だが指名依頼の場合は時たま、その冒険者の実力以上の依頼が舞い込む事も珍しくも無く、ましてや今回の場合は国からの正式依頼であり、ギルドとしてもそれなりの人数は用意しなければならなかったのだ。


 その為、もしこの依頼で命を落とした時の為に、拠点としている場所にある遺品を現金に換えて、書類に記された人へと渡してもらうという契約を結ぶのだ。


「はい、書けたわよ。」

「……受理完了よ。」

「それにしても早かったわね?」

「……マスターがゴリ押ししたのよ、証拠品もあったしね。それに上の人達は独自ルートで既に掴んでいたみたいなのよ。」


 国営、特に国防に係わる貴族達の中には、既に今回の騒動が起きると分かっていた者達も居たのだ。もっともその情報が役立つ場面まで秘蔵しようとしたのは、流石政治家であるといえよう。


 だが一部清廉潔白、まだまだ若くそう言った事を知らない若い貴族が情報を流したというのがこの依頼の顛末であった。その為、本当にオーガが居ると分かれば動き出すのは早かったのである。


 メタスラが確保してきたオーガの討伐証明部位である角の存在も、国として無視できないギルドマスターが直接出張って来た事も一役買って、しかも情報を隠していた貴族達は保身の為に積極的に動いた事も、今回の早期正式依頼へと繋がったのだった。


「てことは、やっぱり?」

「……そうよ。」


 二人の懸念、いや一定以上の実力を持つか、頭の回る人間ならばすぐさま理解しただろう。この騒動が他国からの破壊工作の一端であり、そして内部に間諜が居るという事を。出なければ三国が、それぞれの周辺国や隣国に舐められない様に国の威信まで掛けている場所に、オーガという巨大なものを放てる訳がないのだから。


 そしてこれが諜報活動も含んでいるとすれば、まだまだ異端な魔物を放されている可能性が高いのだ。


「二人だけで分かりあうなんて、なんかイヤ~ン!!」

「……そういえば、コイツも居たんだった。」

「静かだったから完璧に忘れていたわ。」

「ひどっ!?」


 レイナとリサが、周りの低レベル冒険者には分からないよう、暈して会話している所に、そんな低レベル冒険者と同じく分かっていなかったメタスラが声を掛ける。そんなメタスラの態度に二人共脱力させられ、それぞれカウンターへと突っ伏した。


「そういえば、コイツもなのよね?」

「そう…、そうよね。」

「何が、何が?」


 そこでレイナがハタと気付いた。初心者の森に居ない筈の魔物という分類ではメタスラもそれにあたる事を。レイナに言われてリサもその考えに居たり、二人してメタスラを見つめる。


 唯一分かってなかったメタスラが何がと聞くも、二人は考えに耽っているのか答えない。無言で二人に見つめられた事でメタスラが妖しくクネリ出し、レイナによってカウンターへと叩きつけられるまで時間が止まったのだった。






 後で説明してくれるそうなので、今は置いておこう。それよりも重要な事があるっ!!


「何でレイナはスカートじゃないんだぁっ!?」

「こんな往来で何を叫んでるのよっ!!それにアンタが覗くからでしょうがっ!!」


 ゲブラッ!?踏むのはダメ、踏むのはダメ!!変な扉開けちゃうぅ…、ふざけたのは俺だけどさ、だからって気持ち悪そうに引かなくてもいいと思うんだけど。


「はぁ、何で私はこんなのをティムしようとしてるんだろう……」

「俺が美女美少女の味方だからだろう。」

「……欠点じゃない。」

「失礼な、美点だ。」


 何て事をワイワイと話しながらやってきましたのは、テイマーギルドぉ。冒険者ギルドと違って建物は小振りだけど、獣舎?らしきものや、その背後に柵で囲まれた放牧場?がある。あれだ、冒険者ギルドが庁舎とかだったら、こっちは牧場みたいな感じだな。


「ほら、さっさと行くわよ。」


 ここにはどんな美人さんが受付やってるんだろうとか考えていたら、後ろからレイナによって急かされた。


「おっちゃんなんて反則やぁっ!!」

「だから大人しく出来んのかっ!!」

「ワダラブヘッ!?」


 木製の扉を開けて中に入り、いの一番に受付へと向かった俺の目に飛び込んで来た光景。強面の、スキンヘッドの、いやあれは禿げただけだっ!筋骨隆々の、おっちゃんの姿だった。俺の心からの叫びにおっちゃんは顔を引き攣らせ、俺はレイナによって蹴り飛ばされた。


「えっ、えっと……」

「すみません、テイマー資格の受講と新規登録です。」

「あっ、はい。」


 俺とレイナのやり取りに戸惑ったような声を出すおっちゃん。何というか、顔と性格が一致しない人ですなぁ。レイナの言葉に書類を持って裏へと入って行く。


「こんにちは。貴女が新規テイマーさんで良いのかしら?」

「女神来たァ――――っ!!」

「コラァァッ――――――!!」


 ふははは、甘いぞレイナよ。レイナの怒り方が近頃可愛くて仕方なくなってきたんだ俺は。だが、そ、れ、よ、り、も、裏から出て来た目の前に美少女の方が俺には大事なんだぁっ!!


 見よっ、あのサラサラな糸の様な髪を後頭部で纏め上げたポニーテイルを。慎ましやかだが、脱いだら凄い事が俺の目には分かった胸を。小顔で、優しげに細められた顔を。


「ハンブラバッ!!」

「飛び掛かるなって言ったでしょっ!!」


 おう、無意識に飛び掛かってましたか。でもさ、地面に叩き落とさなくてもいいんじゃないかな。


「あは、あははは……」


 ほら美少女さんも顔を引き攣らせながら笑ってるし。


「アンタの所為でしょ、アンタの。」


 それはスミマセンでした。だからタダでベロベロエステを行わせて頂きます。


「やめんかっ!!」


 再び飛び掛かろうとして、またも地面に叩き落とされた。オノレ、ユルスマジ。


「その胸で溺死してやるぅっ!!」

「いい加減に、しなさーいっ!!」


 最終的に壁にベチャァって感じで投げつけられたと言っておこう。






 それから俺達は美少女の、ソニアさんって言うんだけど、声も幼い感じで可愛いぃ。の案内で教室の様な、前にホワイトボード?があり、その正面に幾つもの椅子がある場所にやって来た。俺は机の上に、レイナはその椅子に座っている。


「これはまた、メタリックスライムの知性種とか珍しいですよね。」

「……売ってあげましょうか?タダで譲っても良いわよ?」

「え、遠慮しておきます……」


 レイナさんレイナさん、その手を放してください。お願いします、割と真剣に。グニューって握りつぶされながらソニアさんの方へと差し出されるけど、俺なんかした?そんなに避けなくてもいいじゃないかっ!!


「ここに来るまでにアンタがソニアの胸を揉みしだいたからでしょっ!!」

「おう、若気の至り……」

「それで済ますなっ!!」

「アンギャ―――……」


 痛みはない、何度も言うけど痛みは無い。その辺はメタルスライム、いやメタリックスライムだったな。になったお蔭なんだろうけど、精神がガリガリ削られるんですよっ!!


「だったら大人しくしてなさいよっ!!」

「無理だっ!!」

「即答すんなっ!!」


 胸張って事実を話しただけで拳が落ちてきました。レイナさん、近頃暴力的じゃないですか?ほらほら、ソニア嬢もドン引きですよ?


「…あのー、もういいですか?」

「すみません、どうぞ説明を始めて下さい。アンタも大人しくしてないと、男に売るわよ。」

「大人しくしてますっ!!」


 何て、何て恐ろしい事を言うんだレイナはっ!!背筋がピシッってなったじゃないかっ!!


「あ、あはは…、えーと、レイナさんは新規にテイマー資格の受講だという事ですが、ティムモンスターが知性種という事で、今回は簡単な説明だけで終わります。もし、知性種以外の魔物をティムしたい時は改めて受講をお願いします。」


 なんか原付の免許みたいだよな。俺がそんな事を考えている間に、どんどん説明していくソニアさん。ようはアレでしょ?ペットは責任持って飼え、ペットの責任は飼い主の責任になるからねっ!って事でしょ?


 俺、ペットかぁ……、でも飼い主がレイナならばよしっ!!


「後は、ティムモンスターの登録と新規登録の手続き書類に必要事項書いてもらえば終わりですね。」

「結構短いのね。」

「これが知性種以外のティムモンスターの場合は、更に適性試験だとか、ちゃんと躾されているとか見ないといけないんですけどね。」

「……コイツは良いの?」

「……あ、あはは。」


 おい、それは何か?俺が躾けられていないみたいに言うなよっ!!ソニアさんも目を逸らさないでくれっ!!


「毎度毎度、女の人見かける度に襲い掛かるのは、何処の誰よっ!!」

「何っ!!そんな奴が居るのかっ!!オノレ、許すまじ、俺が退治してやるっ!!」

「お前だぁっつうのっ!!」


 グベラッタァ……、ホワイトボードにぶつけられたけど、意外にこのホワイトボード………ギザギザしてた。


「こんな所にティムモンスターを虐待する人が居ますよ?」

「わきゃっ!?」

「……大丈夫よ、これはメタスラ用の躾術だから。」

「なんとっ!?」


 ホワイトボードの方を、顔を引き攣らせながら見ていたソニアさんの後ろに回り、レイナの悪逆非道な行いを訴えると、可愛らしい悲鳴を上げて跳び退ったソニアさん。


 あのレイナさん?何で拳をポキポキ鳴らしながら迫ってくるんですか?俺、何かしました?


「少しは反省しなさ―――――いっ!!」

「ふげらっ!?」


 俺は再びホワイトボードとキスをした。






「やぁレイナ。珍しい所で会うね。」

「うげっ、ジョッシュ……」


 メタスラとレイナがテイマーギルドを出た所で、キザッたらしく髪を掻き上げる青年に出会った。レイナは顔を顰めながら、その青年の名前を呼ぶ。


 髪は肩の所まであり、顔も女性受けしそうな女顔。だが体格は細身ながらガッシリとした印象を抱かせ、更には貴族の証たるマントを羽織っており、見えている部分の重厚な鎧も一目で良いものだと判る。そんなモテル要素満載ながら、ウザったいほどのキザさが全てを台無しにしていた。


「おりゃっ!!」

「ぐべっ!?」

「ちょっ!?」


 そんな青年がレイナが嫌がっている事を覚る訳もなく、レイナの行く手を阻み、そんな青年を美女美少女の味方だと公言しているメタスラが許す筈もなく、顔面に向かって跳びかかる。


 レイナしか視界に入ってなく、油断していた青年はあっさりと顔面にメタスラを貼り付け、息が出来ないのかメタスラを引き剥がそうと踠も、メタスラも引き剥がされまいと必死にしがみ付く。


 そんな様子を最初は驚いたものの、次第に可笑しくなってきたレイナから笑いの声が漏れ出した。


「………ぷはっ!!」

「おわっ!?」

「な、なんなんだ君はっ!?」

「俺、メタスラ。美女美少女の味方だっ!!だから、とっとと放せ怪人将来禿げるぞ金髪巻き毛っ!!」

「誰が、怪人かねっ!!それにケアだけは毎日しているから将来禿げる事も無いっ!!」


 引き剥がしにかかる青年の方が勝ったのか、メタスラが引き剥がされ目の前まで持ち上げられる。突如顔面に貼りつかれたというのに、意外に常識があったのか、直ぐにはメタスラを害そうとせず、息を切らしながら話しかけた。


 だがメタスラの方は青年を敵だと認識しており、体を変化させて、シュッシュッとシャドーボクシングしている。その上勝手に青年を名付けて少しズレたツッコみを入れられていた。


 そんな様子が可笑しかったのか、ついに腹を押さえて笑い出してしまうレイナだが、メタスラと青年に見られている事に気付き、ウォッホンと取り繕う様に一つ咳をして立ち上がる。


「レイナ、幾ら知性種だからって、こんな品性の欠片も無いモンスターをティムする事無いじゃないか。」

「あら、いいでしょ。私の勝手だもん。」

「だもん。って……」

「それに、ジョッシュよりも役立つわよ、コイツ。」

「本当かい?」

「………以外にね。」


 メタスラは疎外感を感じていた。最初はレイナが嫌がっていると判断したのだが、話し始めると意外に楽しそうにしている。レイナが楽しそうにしているのならば、自身が貶された事は横に置いておける。何よりレイナに反論して貰えた方が何よりも嬉しかったからだ。


「褒めた途端これかぁっ!!………これさえなければねっ!!」

「……あ、あはは、何というか、……暴力的になったね。」


 だからレイナに向かってメタスラが飛び掛かるのも何時も通りで、青年はいつの間にか掴んでいた筈なのに抜け出された事に驚き、レイナがメタスラを叩き落とした事に苦笑せざるを得なかった。


「取り敢えず、私は家には帰らないからねっ!!そう言っといてっ!!」

「ちょっ、ちょっと待てって、私との婚約は如何するんだい。」

「知らないわよっ!!もう私はリ・プランじゃないし、自立してるのっ!!婚約だって御破算でしょっ!!」


 潰れたメタスラを引っ掴み、その勢いのまま、その場を去ろうとするレイナを呼び止めた青年に、レイナは叫ぶように言葉を放ち門の方へと走り出した。


 そんなレイナを我儘な子供でも見るような目で、レイナの姿が見えなくなるまで見送った青年は肩の横で手を広げ溜息を吐いた。






「誰あれ、誰あれっ!!」

「うっさいっ!!元婚約者よっ!!」


 今レイナがすっごい不機嫌です。俺!?俺の所為!?少なくとも、あの怪人将来禿げるぞ金髪巻き毛と話していた時は此処まで不機嫌じゃ無かったよね?少なくとも笑っていたし、幾ら女心が秋の空だって言っても、ここまで急に変わるか!?


「……ごめん、八つ当たりだった。」

「いや、いいけどさ……、何でそんなに不機嫌なのさ。」

「ジョッシュが苦手って訳じゃないの。咄嗟に家の事言い訳にしちゃった事が気に入らなくて……」


 んで、すぐさま落ち込んだレイナを慰める事になった。婚約者ってのも気になるけどさ、それ以上に美女美少女の味方を称する俺にとっては、今の落ち込むレイナが見ていられなかった。


 不機嫌な理由を尋ねたら、何と家出少女だったんですよレイナはっ!!


「あれ?」

「如何したのよ、ってか何で私はメタスラなんかに事情を話してるんだろう?」


 ほらほらふざけたよ?何時もの過激なツッコみばっち来いっ!!と構えたら、こっちを見た後レイナが立ち上がる。ツッコみ無しで。というか、その後半の言葉にグサッと来ましたよっ!?


「だから、謝罪代わりに揉ませろっ!!」

「何で私が、謝らなくちゃいけないのよっ!!」


 これは行けるかっ!と胸に飛び掛かったら、空中でキャッチされ、そして結構な高さがある町をグルリと囲む壁を越えて、ホームランされました。真っ青な空が視界一杯に映り込み、下で門番のおっちゃんが「……ちゃんと門から出てけよ。」と呟いていたのが聞こえたのだった。


 今日一日で聞きなれたヒューって音と浮遊感。そろそろ地面に着くかな?って時にレイナに再びキャッチされた。


「ほら、馬鹿な事してないで、こっからは頼りにしてるわよ?」

「まかせれっ!!」


 美少女に微笑まれながら、そんな事言われたら、張り切るに決まってるだろ?ピョンとレイナの手から逃れた俺は、レイナの歩調に合わせる様にレイナの横をピョンピョン跳ねながらついていくのだった。

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