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限りなく水色に近い緋色【原作版・連載中止】  作者: 尾岡れき
第3章「鎖に繋がれた獣は、朝陽を前に夢を見る」
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 テレポートしたら、川藤を捕獲する――。

 爽が感覚通知で流した指示(コード)は単純明快だった。同時に、川藤を始めとする弁護なき裁判団の配置を、彩子が感覚通知で送信してくれる。


「サンキュー、野原」

「どういたしまして」


 彩子は爽のとなりで、小さく笑んだ。待ちくたびれた、と言わんばかりに軽く背伸びをして。


 その隙も容赦なく、川藤は念力弾を放ってくる。それを爽は涼しい顔で、不可視物理防御壁(ファイアー・ウォール)を起動させ、造作なく防いでいく。


「ヤツら必死だね」


 ゆかりは、ようやくとばかりに笑む。


「むしろ上々だね。思考ルーチンがパンクしてくれるなら、その方がやりやすい。姉さんと涼太が打ってくれた手を無駄にしない為にも、せいぜい利用させてもらうよ」


 と爽も小さく笑んで、ほんの一瞬、刹那――ひなたの手を握った。


「そ、爽君?」

「おまじない。ひなた、チカラを俺に頂戴?」


 爽は小さく微笑む。その目は、不安そうな素振りは一切ない。大丈夫だと、言っている。唇を微動だに動かさずに。


 大丈夫、ぜったいに大丈夫――と。


 彼は弁護なき裁判団――彼は実験室のサンプルで。

 本来は、破棄すべき敵対対象で。


 それでも、入り交じるのは複雑な感情の糸が絡みにからんで。

 二人を知ってしまったと言うのが、おおきい。

 ニクめない、では済まされない遠藤と川藤に感情移入している自分がいて。


〈それでいいんだよ〉


 爽は感覚通知を飛ばす。茜自身が川藤の回収を望んでいる。何てセンチメンタリズムなんだろうねと当人も笑いなから。


〈姉さんの想いは別として、ひなたはそれでいいんだよ〉

〈だね――〉


 ゆかりもあわせて感覚通知をとばす。難しいことは分からないし、考えない。でもひな先輩の考え方は好き。単純に壊すより難易度は上がるが、無理ではない。そうゆかりは思っている。


〈迷わなくていい。どうせ俺たちは実験室に向き合うしかない。目立ちたくないって最初は思っていたけど、もうそんな事を考えても遅いしね。危険なら絶対ブレーキをかける。でも、今回はむしろ川藤を取り返すべきだ〉


〈ひなた? 私にとってはね、No.KもNo.Eも同じ兄弟サンプルだからね。ひなたがそう思ってくれるのは、嬉しいよ?〉


 と彩子まで。ひなたは目を丸くして――そして、大きく頷いた。


「それじゃ、いきますか」

 と爽はニンマリと笑む。

 川藤――No.Kは咆哮を上げた。


 呼応するように、学生やサラリーマン姿の男性、主婦、そして杖をついた老紳士までもが、どこから流れてきたのか、色のない目と力無い足取りで川藤の前に立ちふさがる。


「え?」


 ひなたは目をパチクリさせるが、爽はまるで動じない。


「弁護なき裁判団の番号無し(ノンビルド)だ。廃材(スクラップチップス)を再利用した、姉さん最悪の研究成果だね」

「あの人たちには意思はない。あくまでホストであるNo.Xが統率してるだけ。その意味、わかるよね?」


 彩子は言う。

 ひなた自身、全てを救えるとはもう思っていない。廃材の意味も、ひなたなりに感じている。


 そして全て、爽の想定内。

 だから――。


 ゆかりと顔を見合わせて、ひなたは迷いなく、その掌に火炎を産む。ゆかりはその指先に、青白い雷光を纏わせて。


(迷い?)

 迷いなら――ある。いつだってある。どうしていいか分からない。でも今思うことは、たった一つだけだった。


「限りなく水色に近い緋色、それで本当にいいのか?」


 言葉を投げかけてきたのは、弁護なき裁判団で。川藤や遠藤によく似ているその貌――。


 でも、そこには二人にような感情は、少しも浮かばせない。

 ひなたから見ても、彼らがニンギョウだと言うことが分かった。


「いいのか?」


 彼は繰り返す。プログラミングされた笑顔を、その顔に貼り付けて。


「何がですか?」


 ひなたは、真っ直ぐに見やる。迷いならある。いつだってある。でも迷って、本当に大切なものを欠けさせてしまうのなら、そんな迷いは噛み砕く。その意志がひなたにはあるが、彼はお構いなしに雄弁に演説を続けていた。


 無関係な市民が、ここにはこんなにもいる、と。

 無為に、被害を出したくないだろうと。

 君にとって、No.Kは利用価値はないはずだ。そもそもこの攻防が無駄じゃないか?

 私たちとしては、同志No.Kを返却してくれたらそれでいい。


 犠牲は最小限、お互いにとってウイン・ウインであるべきだ。


 君にとって、No.Kはそんなに価値があるサンプルじゃないだろう? と。

 彼の演説は、終わることなくとめどなく続くが、ひなたの頭の中にはまるで届かない。


「呆れた、あれで交渉のつもりなの?」


 という彩子の声すら、耳に入らなかった。


「ひなた!」


 爽が制止してくれた声も、ひなたには届かなかった。

 弁護なき裁判団のサンプルに向かって、自分の意志で距離を縮める。


「No.D!」


 他の弁護なき裁判団の声と、川藤の苦しそうな咆吼が入り乱れて、ひなたの鼓膜をなおのこと刺激する。


 この気持ちを抑えられない。

 でも、これだけは絶対に譲らない。


「川藤さんは、私の友達。モノでも、サンプルなんて名前でもない。無関係なんかじゃない。彩子ちゃんが、茜さんが待ってる。何より遠藤さんが待ってる――」


 だから、譲れない。諦めない。知らないフリなんかしない。


「私たちの川藤さんを返して!」

 ひなたの感情に比例するかのように、炎が膨れ上がった。











 弁護なき裁判団が暴走しているように見えるが、そのすべてが計算された上で稼働している。ただ問題は、誰がそれを計算しているか、ということだ。


「そう思わない、【ビショップ】?」


 遺伝子研究特化型サンプル【クイーン】は楽し気に、そんな茶番劇を屋上から観戦を決め込んでいた。


「クイーンが興味を持つなんて、珍しいじゃないか」


 ビショップは揶揄するように言うが、実際、彼女の意見は正鵠を射ている。

 本来、弁護なき裁判団の管理はフラスコから譲渡を受けて、研究者プレパラートが管理者を担っていた。フラスコの名の下に、一時的にビーカーやシリンジに移ったことはあったが、基本的なシステム管理は、プレパラートが担当だ。だが開発者トレー不在で、弁護なき裁判団の管理はままならかった。


 それだけにトレーが完成させた弁護なき裁判団は揺るがない盤石さがあった。他の研究者が手を加えられるモノではないし、本来の半分も稼働率を上げる事はできなかった。


 だからプレパラートは弁護なき裁判団のシステムを参考に、監視システムMotherを完成させた。


 完璧なネットワークで無駄なく、特化型サンプルから廃材までを管理するとMotherは謳うが、トレーが作り上げた自律思考型サンプルネットワークである【弁護なき裁判団】には遠く及ばないというのが、研究者たちの見解だった。


 研究過程のすべてを電子情報で掌握すると言えば聞こえはいいが、相手は実験室の研究者だ。データの改竄なんてお手のものだし、AIに掌握される程、善良さと良心さを実験室の研究者が持ち合わせているはずもない。


 実験室の研究者は――研究の為に悪魔に魂を売り渡す事も厭わない――否、彼らは悪魔そのものと言ってもいい。彼らの脳裏を占めるのは、研究の成果と進歩だけなのだ。


 常識やモラル、良心の外側で科学はつねに進歩し続けてきたのだ――とは、フラスコの口癖でもある。ビショップはその意味を理解しているだけに、Motherの稼働は形骸化される事は容易に想像できた。


「あら、私だってたまには真面目に考えるわ。フラスコの役に立ちたいもの」


 にっこり笑って言うクイーンの言葉に、ビショップは思考を停止させた。

 全ては、フラスコの掌の上で。その現実は、滞りなく進んでいる。宗方ひなたも、水原爽がどんなに坑がっても遠くそこまで及ばない。シナリオ通りに彼女たちは踊り続けている。


「弁護なき裁判団は、あの小娘を煽っているようですらあるのよね」


 クイーンの言葉に、ビショップも頷く。


「今まで安定稼働していたのに、No.Eのエラーだけでは片付けられない挙動のおかしさがあった。ぱっと見た目は、弁護なき裁判団全体が暴走したように見える。でも、彼らの様相はまるで煽っているようですらある。プレパラート女史がそんな芸当ができる野心家とは到底思えない。弁護なき裁判団の管理権を盗まれたと考えるのが妥当だね」


「問題は誰がってことよね」

「大方の予想はつくが、弁護なき裁判団を盗んだのが誰かは、たいした問題じゃない。それねに、彼女たちにはもう少し踊ってもらわないとね」


「私もそろそろ遊びたいんだけど――」

「クイーン」


 ビショップは囁くように言う。


「分かってるね、まだ僕たちが動く時じゃないんだ。悪ふざけはフラスコは喜ばない。【チェス】が動くのは《《今じゃない》》」


「ずいるいわよ、ビショップ。その言い方は」


 クイーンはフラスコを最優先するようにプログラムされている――否、プログラムされる前から、その為に生まれてきたのだ。


 でもね、とビショップは思う。誰が仕掛けたは、実はさほど問題じゃないんだ、クイーン。問題は、限りなく水色に近い緋色がフラスコのシナリオ通りに踊るかどうかで。ビショップは目を細めながら思う。暴走してくれるなら、それはそれで有り難い。


 全て、こちらのシナリオ通りなら、それでかまわない。

 【限りなく水色に近い緋色】――君は抗おうとするのだろう。


 それが無駄なことで、それが如何程罪を重ねることなのか、限りなく水色に近い緋色、君は気付いていないのだ。


 無造作に、十字を空へ切る。


 君は命を、踏み潰す。細胞という細胞を焼き払うことでしか、自分を証明できない。

 哀れで、救いようのない子羊だ。

 そして本当に大切なモノを、なくしてしまう。

 主は、君の遺伝子を持って赦すだろう。

 全てはエメラルド・タブレットの為――。


「え?」


 と瞬きをして、クイーンは、今起きた現実を確認をしようとする。確認するまでもない。遺伝子研究特化型サンプル集団【チェス】は、弁護なき裁判団以上に、感覚リンクで全員がつながっているのだ。


 ポーンが見ているものは、手に取るように分かる。分かるからこそ――信じられない。


 サンプル・限りなく水色に近い緋色は確かに感情に飲まれたはずだ。彼女は暴走をする。そして弁護なき裁判団は逃亡をする。データ観測をする最良のチャンスだというのに――


「どうして、能力上限稼働オーバードライブしない?」


 ビショップの呻きにも近い声に、ポーンが捉えた彼女――宗方ひなたは満面の微笑みを浮かべていた。










 弁護なき裁判団が暴走しているように見えるが、そのすべてが計算された上で稼働している。ただ問題は、誰がそれを計算しているか、ということだ。


「そう思わない、【ビショップ】?」


 遺伝子研究特化型サンプル【クイーン】は楽し気に、そんな茶番劇を屋上から観戦を決め込んでいた。


「クイーンが興味を持つなんて、珍しいじゃないか」


 ビショップは揶揄するように言うが、実際、彼女の意見は正鵠を射ている。

 本来、弁護なき裁判団の管理はフラスコから譲渡を受けて、研究者プレパラートが管理者を担っていた。フラスコの名の下に、一時的にビーカーやシリンジに移ったことはあったが、基本的なシステム管理は、プレパラートが担当だ。だが開発者トレー不在で、弁護なき裁判団の管理はままならかった。


 それだけにトレーが完成させた弁護なき裁判団は揺るがない盤石さがあった。他の研究者が手を加えられるモノではないし、本来の半分も稼働率を上げる事はできなかった。


 だからプレパラートは弁護なき裁判団のシステムを参考に、監視システムMotherを完成させた。


 完璧なネットワークで無駄なく、特化型サンプルから廃材までを管理するとMotherは謳うが、トレーが作り上げた自律思考型サンプルネットワークである【弁護なき裁判団】には遠く及ばないというのが、研究者たちの見解だった。


 研究過程のすべてを電子情報で掌握すると言えば聞こえはいいが、相手は実験室の研究者だ。データの改竄なんてお手のものだし、AIに掌握される程、善良さと良心さを実験室の研究者が持ち合わせているはずもない。


 実験室の研究者は――研究の為に悪魔に魂を売り渡す事も厭わない――否、彼らは悪魔そのものと言ってもいい。彼らの脳裏を占めるのは、研究の成果と進歩だけなのだ。


 常識やモラル、良心の外側で科学はつねに進歩し続けてきたのだ――とは、フラスコの口癖でもある。ビショップはその意味を理解しているだけに、Motherの稼働は形骸化される事は容易に想像できた。


「あら、私だってたまには真面目に考えるわ。フラスコの役に立ちたいもの」


 にっこり笑って言うクイーンの言葉に、ビショップは思考を停止させた。

 全ては、フラスコの掌の上で。その現実は、滞りなく進んでいる。宗方ひなたも、水原爽がどんなに坑がっても遠くそこまで及ばない。シナリオ通りに彼女たちは踊り続けている。


「弁護なき裁判団は、あの小娘を煽っているようですらあるのよね」


 クイーンの言葉に、ビショップも頷く。


「今まで安定稼働していたのに、No.Eのエラーだけでは片付けられない挙動のおかしさがあった。ぱっと見た目は、弁護なき裁判団全体が暴走したように見える。でも、彼らの様相はまるで煽っているようですらある。プレパラート女史がそんな芸当ができる野心家とは到底思えない。弁護なき裁判団の管理権を盗まれたと考えるのが妥当だね」


「問題は誰がってことよね」

「大方の予想はつくが、弁護なき裁判団を盗んだのが誰かは、たいした問題じゃない。それねに、彼女たちにはもう少し踊ってもらわないとね」


「私もそろそろ遊びたいんだけど――」

「クイーン」


 ビショップは囁くように言う。


「分かってるね、まだ僕たちが動く時じゃないんだ。悪ふざけはフラスコは喜ばない。【チェス】が動くのは《《今じゃない》》」


「ずいるいわよ、ビショップ。その言い方は」


 クイーンはフラスコを最優先するようにプログラムされている――否、プログラムされる前から、その為に生まれてきたのだ。


 でもね、とビショップは思う。誰が仕掛けたは、実はさほど問題じゃないんだ、クイーン。問題は、限りなく水色に近い緋色がフラスコのシナリオ通りに踊るかどうかで。ビショップは目を細めながら思う。暴走してくれるなら、それはそれで有り難い。


 全て、こちらのシナリオ通りなら、それでかまわない。

 【限りなく水色に近い緋色】――君は抗おうとするのだろう。


 それが無駄なことで、それが如何程罪を重ねることなのか、限りなく水色に近い緋色、君は気付いていないのだ。


 無造作に、十字を空へ切る。


 君は命を、踏み潰す。細胞という細胞を焼き払うことでしか、自分を証明できない。

 哀れで、救いようのない子羊だ。

 そして本当に大切なモノを、なくしてしまう。

 主は、君の遺伝子を持って赦すだろう。

 全てはエメラルド・タブレットの為――。


「え?」


 と瞬きをして、クイーンは、今起きた現実を確認をしようとする。確認するまでもない。遺伝子研究特化型サンプル集団【チェス】は、弁護なき裁判団以上に、感覚リンクで全員がつながっているのだ。


 ポーンが見ているものは、手に取るように分かる。分かるからこそ――信じられない。


 サンプル・限りなく水色に近い緋色は確かに感情に飲まれたはずだ。彼女は暴走をする。そして弁護なき裁判団は逃亡をする。データ観測をする最良のチャンスだというのに――


「どうして、能力上限稼働オーバードライブしない?」


 ビショップの呻きにも近い声に、ポーンが捉えた彼女――宗方ひなたは満面の微笑みを浮かべていた。











「な、なんだ、これ……?」


 まだ頭が朦朧とする中で、レヴァーティン――田中真は目をこする。


「真、起きた?」


 にっこり笑いながらグングニル――生徒会長――は展開されている投影画像を見やる。


「弁護なき裁判団の暴走――と言えば聞こえはいいけどね」


 グングニルはにんまりと笑む。


「計画的な暴走じゃないかな」

「計画的?」


 アイギス――山田ほたるは、首をかしげる。


「そうだよ。よく考えてあるよね。一見、使い古されたレガシーデバイスであると思わせながら、乱れることのない統率のとれた動き。そして、このタイミングで、無関係な一般住人を盾にするような演出。あきらかに【限りなく水色に近い緋色】は苦手とするでしょう? どう考えたって、煽っているとしか思えない」


「そんな事を聞いてるんじゃな――」

「分かるよ。僕もほたるも、同じ事を考えているからね。でも単刀直入に言ったら、君が傷つくだろうと思ったんだよ」

「うるせぇ、バカ」


 真の悪態に蓮は、小さく笑んだ。


「一つ言えることはね、真。君はもしかしたら、敵に塩を送ったのかもしれない、ってことだよ」

「……」


 真は唇を噛む。蓮に言われなくても、結論はすでに自覚していた。


「バケモノか、お前は――」


 映像に向かって唾を吐くが、結論は変わらない。











  水色が、緋色の手に触れる。

 遺伝子情報の海を駆け回りながら、緋色は水色の思わんとする事を即座に理解した。


 ――ありがとうね、緋色。


 水色がにっこり笑む。

 別に水色に礼を言われる筋合いはない。


 ただ、面白いとは思っている。


 力の暴走とばかり思っていた、能力上限稼働オーバードライブだが、レヴァーティンは、その暴走ギリギリの所まで、出力を上げていた。 もちろん、浪費は激しいだろう。そんな事は水原爽でなくても分かる。宿主《水色》のヒヨワな体力でもって、1分か。


 だが、時間はそれで充分すぎた。

 誤れば、暴走する可能性は拭えない。


 だが、無知なサンプルのままではない。


 水色は能力を制御することに意識を向けつつある。だからこそ、こうやって緋色に助力を請うた。


 弁護なき裁判団を、包囲し、一時的にでも機能停止させた上で、川藤を取り返す。なんて、水色。お前は強欲なんだ――。


 水色の誰も傷つけたくないという陳腐な想いと、何が何でも川藤を奪取したいという思いなど、興味はない。


 だが、水原爽もそれを望むのは、明白の理。

 ならば、彼奴に恩を売りつけておくのも一興ではないか。

 水色、お前の強欲に応えよう。







 能力上限稼働オーバードライブ――。

 水色と緋色の声が重なった。

 

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