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限りなく水色に近い緋色【原作版・連載中止】  作者: 尾岡れき
第3章「鎖に繋がれた獣は、朝陽を前に夢を見る」
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 喧騒、と言ってもいいのかもしれない。朝の生徒たちの活気に戸惑ってしまう時がある。名前の知らない子達がこんなにもたくさんいる。同じ学校という名の箱に通っているのに、だ。


 ただ、とひなたは思う。


 以前と明らかに違うのは、ひなたに向けられた視線が、悪意か無視かの二択では無いということだ。制御できなかった自分の未熟さがあった。今でも、そこは爽に守られている自覚がある。


 でも、何より遠慮しなくて良くなったことが大きい。

 好奇心の目で見られることはあっても、拒絶では無い。だから、ひなたも緊張しなくても、自然に笑うことができた。


「おはようー、宗方さん」


 何気ない言葉が注がれて。


「お、お、はようございま、す」


 ペコリと慌てて、ひなたは頭を下げる。未だぎこちないと自分でも思うが、それで呆れた顔をする人はいない。未だ慣れない転校生――でも、それじゃダメだと自分でも思う。もっと、みんなと仲良くなりたい。それが率直なひなたの欲求だった。


「ひな先輩って人気あるよねー」


 ゆかりは眠気覚めず、語尾の途中であくびを被せる。普通は運動で脳が覚醒してくるものだが、学校に入ると眠くなるとは彼女の弁。自由奔放さが桑島ゆかりの持ち味で、そんな自然体なゆかりが、ますます好きになる。


 そんなゆかりだから、学校内でも目立つ存在な訳だが――言っている意味が分からない。


「私が?」


 目をパチクリさせる。


「ゆかりちゃんが、じゃなくて?」


 ゆかりはジトリとひなたを見る。やれやれ、と肩をすくめるしかない。隣を歩く爽も同様だ。


「噂の転校生に興味津々でご執着な爽やか王子とくれば、それだけでスクープよ」


 と彩子は言う。


「はぁ……」


 爽は人気があるんだろうなぁ、と単純に思う。こうやって通学する中でも、たくさんの女子生徒が「水原君」「水原先輩」と連呼しては「おはようございます」を繰り返す。爽は気怠そうに、おうむ返しで挨拶を繰り返すのみだが、ちょっと微笑んだだけで、彼女たちは黄色い声援だ。爽の人気たるや、さすがの鈍いひなたでも毎日接していると、感じるものがある。


「まして、【爽傘会(そうさんかい)】の桑島さんが今や、宗方さんと仲良しだしね」


「ソウサンカイ?」


「わー! わー! わー!」


 分かりやすく手を振って、話題を消そうとする。どうやら触れてはいけない話題だったらしい。


「でも、こうやって一緒にいると、水原先輩の笑顔って、嘘くさい」

「は?」


 あからさまに爽は、不機嫌に顔を歪ませる。


「なんで、それほど親交のない人に、社交辞令以上の笑顔を向けないといけないのさ?」


「私たちとの差もあるけど、ひな先輩との落差が酷すぎる」


「そこの見分けがつくようになったか、えらいえらい。水原君は腹黒王子だからね」


 と彩子は援護する気もない。


「腹黒でも王子も勝手に外野が言ってるだけだろ?」


 爽はムスッとするので、ひなたは小さく微笑む。


「爽君は周りから見ると、やっぱり憧れなんだね。うん、私も憧れるもん。やっぱり爽君はすごいんだと思うよ」


 恥ずかしげもなく、ひなたは言ってのける。


「憧れ?」


 爽は目をパチクリさせた。


「うん。だって爽君は私を変えてくれたから。泣いて諦めるだけの私から、前を向く私に変えてくれた。それはゆかりちゃんも、彩子ちゃんだってそうだけど。だから、みんなみたいに――」


 彩子は無言で、ひなたの肩を抱き寄せる。


「へ?」


「水原君は水原君の、ひなたにはひなたの、私には私の仕事がある。ただ、それだけのことだから、焦るな」


「え?」


 ひなたは目をパチクリさせた。私は焦ってなんか――ただ、私はまだ爽君の横に並ぶことができないから、だから、もっと――。


「これは過保護な水原君の責任でもあるんだからね」


 と彩子はやや厳しく、爽を見る。


「えっと、野原先輩、私の仕事は? 私はー?」

「桑島さんは、とりあえず赤点を取るな」


「取ってないしー」

「再試験の情報を知らないとでも?」


「……う、あれは水原先輩が……」

「テストを人のせいにしない。日頃の復習でしょ、重要なのは。一夜漬けをしようとした桑島さんが悪い」


 ピシャリと彩子に言われて、ゆかりは見るからに落ち込む。テスト前日に爽と偵察に出たツケとは言え、その代償は大きい。茶髪にピアスの彩子にそう言われて、ゆかりはますます落ち込むしかないが、彩子は支援型サンプルであり、爽のバックアップでもある。知識量で一般人が勝てるわけがない。


「ま、そこは涼太に勉強を見てもらって――」


 と言いかけた爽の言葉は、


「一緒に頑張ろうね、ゆかりちゃん! 大丈夫、私の復習も兼ねてやらせて!」


 と言うひなたの言葉で遮られた。


「あ……」

「だから、そう言うところが腹黒王子なんだって」


 間髪入れず、彩子が言う。


「……涼太と、俺とで見るって言おうと思ったのに……」

「なら、最初から言えばいいのに、ひなた以外には素直じゃないから、そうなるんだって」


「爽君も手伝ってくれるって、ゆかりちゃん!」


 そこはしっかり、ひなたが聞いている。


「本当ですか、水原先輩!?」

「え、あ、うん……」


 コクンと頷くしかない。

 賑やかで、可笑しくて、笑いが溢れて。

 そんな中、彼女は足音を立てることなく、近づいて――接触は開始された。


「宗方ひなたさん?」


 と言う彼女は、ひなたと同じ学年を示す、紺のリボンタイをしていた。


「丁度よかった、あなたを探していたの」


 彼女はニッコリ微笑んで言う。

 優雅な素振りで、ひなたに目礼をしてみせる。


「生徒会書記の山田ほたるです。噂の転校生さん、ほんの少し、お時間を頂けたら嬉しいんだけど」


 ひなたはこの時点では知らなかった。


 【デバッガー】水原爽や【雷神トール】桑島ゆかりがいたにもかかわらず、ほたるの前進を止めることができなかったことを。


 電波妨害ジャミングにより感覚通知が停止していたことを。


 爽のバックアップである【デベロッパー】野原彩子のサーバー領域も、沈黙(シャットダウン)していたことを。


「お時間、いただけるかしら?」


 山田ほたるは、柔和な微笑をたたえる。

 何も疑わずにひなたは


「もちろんです!」


 と大きく頷いた――。

 その瞬間に電波妨害ジャミングは嘘のように霧散して。


「それなら、放課後に生徒会室で。皆さんでいらしてください」


 彼女は踵を返し、生徒の波の中に消えて。

 最初からいなかったかのように、賑やかな声に紛れて。

 まるで、最初から何事もなかったかのように――。











「ビーカー、【アイギス】が例のサンプルに接触したよ?」

「そうか」


 特に関心を示す訳でもなく、パソコンで動画ファイルを再生しては停止、別のファイルを再生を繰り返す。


「アイギスのセリフじゃないが、僕にも彼女に入れ込む理由がわからないよ、ビーカー」


 彼は肩をすくめるが、ビーカーは振り返る。その顔は彼が今まで見た、どんな顔よりも歓喜であふれていた。


「彼女だけには入れ込んでいないぞ?」


 ニンマリと笑んで、パソコンを見やる。つい先日、弁護なき裁判団から拝借した動画データだ。彼らが、勝手に編集をする前のオリジナルデータを抜き取る。No.EやNo.Kから管理権を外した途端、システムがザルである。盗み出すことが容易いこと、容易いこと。


 現在再生しているのは、スピッツの作品(サンプル)だった。【限りなく水色に近い緋色】や【デバッガー】の健闘は想定内だ。廃棄隊4号は特化型サンプルとしては脅威だが、手がない訳ではない。そこは水原爽(デバッガー)ならきっと見つける。個体としての火力など、戦略面から思考すればそれほど脅威ではない。

 だが――。


「これは、悪魔的だな」

「へ?」


 彼は目をパチクリさせる。


「だって、こんなの【廃材(スクラップ・チップス)】でしょ?」

「その定義は?」

「え?」

「だから、その定義はと聞いている。なぁ【グングニル】よ、【廃材】の定義ってなんだ?」


 グングニルは熟考する。自分の研究者の投げ掛けは、決してお遊びではないことを熟知している。【実験凶】とつけられた渾名は酔狂ではない。


 実験室の中でもビーカーは恐れの眼差しの目で見られている。

 今、この瞬間も自分(サンプル)に向けて思考実験をしているのは間違いないのだ。


「……【廃材】とは膨大な遺伝子改変情報をもつサンプルが、管理できず制御もできない状況下にあり、生命維持の危機に現在、もしくは近い将来予見される遺伝子研究被験体に該当する、通称失敗作の俗称で――」


「そう言う学術レベルを聞いているんじゃない。グングニル、お前から見てスピッツのサンプルは廃材に値すると、本気で思っているのか? それを聞いている」


 ゴクリと唾を飲み込む。

 パソコンを見やりながら、データーを漁る。否――あえて、操作する必要もない。グングニルとは、北欧神話、主神オーディンが持つ槍だ。まさに神の領域で、データーベースに干渉していく。


「これは……」


 絶句した。意志を明らかにもち、奇襲と撤退の判断が迅速であり、攻撃型サンプルである【限りなく水色に近い緋色】と【雷神(トール)】への対策は処理済みである。宗方ひなたの筋力局所強化が想定外だったにすぎない。何より恐ろしいのは、この植物が本体ではない。全く別の場所から、神経的な電気信号の送信を確認する。距離にして、地下3キロ。あまりにその動きが早く、形跡も残していない。


「そう言うことだ。グングニル、お前が特化型サンプルとして優秀なことは認めるが、それでも不完全だ。学習が足りない。なぜ、調べることなく【廃材】と決めつける? このサンプルの全貌はカケラも掴むことができないが、スピッツ大先生のことだ、これで終わるわけがないだろう。明らかな改良を加えてくるのは間違いない」


「スピッツは何を考えて、このサンプルを?」

「さぁ、な。ただ、面白いことも見つけたので、アイギスに指示は出しておいた。グングニルも顔を出してやれ」

「は?」

「お前らの本分は、学生だから、な。たまには青春もしておけ、ってことだ。生徒会に依頼がきていただろう?」


 ビーカーは、呑気な口調で言うが、ここまで言われて裏がないわけがない。データベースを再検索する。ビーカーがわかりやすい場所にデータを放り込んでくれていたので、目的のモノはすぐに見つかった。


「依頼主の遺伝子情報が、スピッツのサンプルと血縁として合致?」

「そう言うこと、だ」


 ビーカーはニンマリと笑う。正直、学校なんかママゴトにしか思えない。ゲンナリしかないのだが、ビーカーが付け足した言葉は、さらに悪意しか感じなかった。


「宗方ひなたと、お兄ちゃんを探してやってくれ、生徒会長(・・・・)











「ふーん」


 茜は興味なさ気に、情報処理室で、パソコン操作に集中していた。


「まぁ、あリえる話なんじゃない?」

「それだけ?」


 姉に報告するも、返答は淡白で爽は逆に驚く。山田ほたると接触した際、爽のみならず、彩子のサーバー領域まで沈黙したのは、驚愕だった。正直、予想だにしない事態だ。緊急ミーティングと相成ったわけだが、姉の反応の今一つさに戸惑ってしまう。


「んー。あのね、爽君、実験室の全てが【廃材】か【量産型】だと思っているわけじゃないよね?」

「いや、そんなことは――」


「だったら、警戒を怠った君たちが悪い。単純に考えてね、元実験室研究者の【トレー】が花凛な女子高生として通っていること事態、不自然な話じゃない?」


「花凛な女子高生は全面否定するけど、そこは私たちのツメの甘さたと思うよ」

「ちょ、ちょ、全面否定って、あーや、それひどくない?」


「生徒会には気を付けろって、姉さんはずっと言ってたし、花凛じゃないのは事実だしね」

「そこは同調しなくていい!」


 茜がムキになるのがおかしい。ひなたは思わず、クスリと笑った。


 昼休みの限られた時間に、ひたなが、ゆかりが、涼太が情報処理室に集まっていた。みのりや羽島、ひなたの母――シャーレがいないだけで。


 ひなたはぐっと拳を固める。つまり、あの生徒会書記は、実験室のサンプルなのかと思うと、自分の能天気加減がイヤになってくる。――でも、その反面、嬉しいと思ってしまう、日向は変なんだろう、と思う。


「しかし、爽君、珍しいね。君はいつも、コソコソするのが好きだったじゃない?」


「姉さん、それあんまりだから」


 爽は憮然と頰を膨らます。そこまでは思っていないが、茜はひなたの想いを代弁してくれる。爽は自分で解決をしようと動くのが常だが、今回は相談をしてくれた。それが何より嬉しかった。


「生徒会書記、山田ほたるさん、か。いかにもな名前だね、言われて見たら」


 とパソコン画面の在校生徒名簿を見やりながら、涼太は言う。住所、電話番号、全て架空。それがまかり通る、この学校のシステムに疑問を感じる。


「つまり、あの書記さんが実験室のサンプルってこと?」


 ゆかりが聞く。


「研究者ビーカー、お墨付きの特化型サンプルだね」


 と茜は淡々と答える。


「アイギス、レヴァーティン、グングニル。多分、電波妨害(ジャミング)の特性から考えたら、アイギスかもね」


 と彩子はスクリーンに山田ほたるの写真を映し出す。その次に、ひなたの写真を映し出していく。


「え? 私?」

「野原、後で俺にその写真を――」


 と二人の男子の言葉が重なって、気まずく沈黙する。


「水原君と優等生を喜ばせるために出したんじゃない」


 冷然と彩子はため息をつく。


「私も、欲しいかも。ひな先輩かわいいわー」

「桑島さん、あなたも黙れ」


 彩子はため息をついて、指で無造作に空をなぞる。彩子の領域では、すべての機器を遠隔操作することが可能だ。写真は次から次へと、変わって――山田ほたるに戻る。ひなたは目をパチクリさせる。彩子は何が言いたいのか――。


「写真が少ない、な」


 爽がボソリとつぶやき、彩子は満足そうに頷いた。


「水原君が色ボケしてなくてよかった」

「なんだよ、色ボケって」

「ひなたのことを考えると周りが見えなくなる誰かさんのことを言ってるけど、何か?」

「はいはい、時間がないんだから、じゃれあわない」


 と茜がパンパンと、手を打つ。


 彩子は何度も写真を映し出す。自分の写真が、何度も映し出されて気恥ずかしい、と思ったひなたの思考が止まる。

(え?)

  ――なんで、私の写真の方が山田さんより、多いの?


「そういうこと」


 と彩子が再度、頷いた。


「ひなちゃんが注目の転校生だとしても、たかだか1ヶ月。その期間から比べても、あまりに写真が少ないか。山田ほたるの情報量が極端に少なすぎるね」

「涼太、馴れ馴れしく言うな」


「爽、お前こそくっつきすぎ」

「俺はひなたの相棒だから――」


「そう思ってるのは爽だけかもね」

「なに?」

「なんだよ?」


「ごめん、桑島さん、このうるさい奴らに電流流しておいて」

「ラジャー」

「え?」


 固まる爽と涼太、ニンマリとゆかりは笑みを浮かべて――再度、茜が手を打つ。


「電子機器のあるところで、電流は厳禁。後でにしてくる、桑島さん?」

「ラジャー」

「いや、後でとかいらないし」


 爽はげんなりして言った。ゆかりの電流は、精度も出力も制御力も向上しているので、シャレにならない。


「なら水原君も優等生も、真面目にやれ」


 と言う彩子の言葉に、思わずひなたは笑みがこぼれた。緊張感がない――わけではない。前回の廃棄体4号との接触を含めて、実験室の動きがまるでよくわからない。シリンジは実験室とは別と考えた方がいいと、爽は言った。そう考えると、実験室の動きは極めて、静寂と言わざる得ない。あの植物型サンプル、そして今回のビーカー直下のサンプルの接触。どれを取っても、動きがよくわからない、と茜は言う。そして、生徒会役員なのに、学校のデータベースにある情報は薄くて浅いものばかり。正直、薄ら寒さを感じる。それでも、みんながいる、それがひなたに勇気をくれて――。


「ビーカーは実験室の研究者だけど、全く別と今回も考えるべきかもね」

「え?」


 ひなたは茜を見る。


「とりあえず、コンタクトをとっても深入りしないように、状況を整理していくこと。即答も即交戦も避ける。宗方さん、できる?」


 ひなたはコクリと頷く。山田ほたるは、ひなたを名指ししている。茜は感情で動かず、状況を見極めろと言っている。まして生徒会にはビーカーの特化型サンプルがいる。それだけで警戒するに理由としては充分すぎる。ひなたは唾を飲み込み――茜が信頼してくれたことが嬉しい。


「なんて顔して笑うのかなぁ、この子は」


 茜は困惑した顔で、パソコン画面に視線を移した。え? とひなたは思う。何か困らせることをしたのだろうか?


「爽君、桑島さん、あーやは宗方さんをサポート。油断は絶対にしないこと」

「茜ちゃん、私も?」


 彩子が目をパチクリさせる。


「相手は特化型サンプル、電波妨害(ジャミング)をしてきたんでしょ? それなりの準備が必要だよ? 生徒会室は敵地だからね。最悪、あーやの領域(テリトリー)に引きずり込んであげたらいい。多分、そんな事態にはならないと思うけどね」


「へ?」


 ひなたは茜を見る。


「相手も、実験室のサンプルだからね。騒ぎは嫌うはずよ。特に支援型サンプルのアイギスからの接触ならね」


 と言った瞬間に、休憩時間の終了を告げるベルが機械的に鳴る。


「それと、金木君。君は私に付き合ってくれる?」


 茜は意味深に笑みを浮かべたのだった。










 茜はディスプレイを見やる。


〈放課後、伺います。〉


 署名はない。アドレスも無作為に作られ、発信元は海外サーバーをいくつも経由し、特定不明。こんな単純な文面に、複雑なルートを経由する輩は、ごく少数しか心当たりがないし、このタイミングでは一人しかいない。


 メールデータそのものを、完全に削除してから、パソコンの電源を落とす。返信の必要はないし、そもそも届くはずがない。


 ――おいで、川藤さん。

 私は、作った子を見捨てない。


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