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限りなく水色に近い緋色【原作版・連載中止】  作者: 尾岡れき
第2章「使い捨てられる廃材たち」
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 この国の首相は、ビップルームに尋ねてくる議員や経済界の重鎮を相手にすることに夢中で、本日最大のハイライトを見逃してくれて――良かった、と川藤は思う。主に遠藤ことNo.Kの視点として、だが。


 とは言え、だ。室長はまじまじと、スタジアムの方に視線を向けていた。錯綜する情報量から、同志達が情報収集に躍起になっていることを感じる。


「浅はかなのか、思い切りがいいのか。どちらにしても面白いじゃないか、川藤君」

「……」


 どう返答していいか窮していると、【クイーン】が小さく微笑んだ。


「フラスコ、早く遊びたくてたまらないわ。ウズウズしますの」


「だろうね。だけれど、ウズウズしてるのはビーカーも一緒だから。少し堪こらえるように。君は私の目指す場所を理解しているでしょう? 彼女たちはチェスの盤上にすら上がっていない。それではつまらない」


「心得てますわ」


 と言いつつ、その表情は子どものようにふてくされて。フラスコはニンマリと笑む。


「ロードマップを狂わさなければ、多少のお遊びは許可しよう。だから、今は我慢するんだ」


 と言ってから、川藤をじっと見る。


「室長、何か?」


「そろそろ、【弁護なき裁判団】のバージョンアップを考えているんだが、どう思う?」


「……どうも何も、私たちは、それが命令であれば拒否する理由はありません。研究者が必要であると判断すればそのルーチンに従う。それだけです」


 脈拍に乱れない。川藤はただ真っ直ぐにフラスコを見やる。


「まさに君の言う通りだ、川藤君」


 フラスコは楽し気に笑う。その意味を理解しかねた。


「深い意味はない。君たちは君たちで自由にやればいい。エラーは実験を検証する最大のチャンスだ。それだけで意義がある。」


 遠藤のエラーを暗に言っている。

 それだけではない。多分、No.Cを撃ち殺した犯人が川藤である事も推察の上で、フラスコは言っている。


「まぁ、しかし――」


 フラスコがワインを舐めながら、小さく呟いた。それは【クイーン】には届かない。しかし、情報収集と監視を目的とした【弁護なき裁判団】には十分すぎる声量だった。


「エラーとみなすか、進化とみなすか。なかなか興味深いじゃないか、トレー? 実験にイレギュラーはつきものだ。そうじゃなくちゃ、つまらない。エメラルド・タブレットの起動を考えれば、些細なことだ」


 悪魔的な笑みを浮かべながら。同意は誰にも求めていない。

 川藤は拳を握る。誰にも気づかれないよう、同志に感知されないその程度の些細な範囲で。


 ――私たちは部品じゃない。

 宗方ひなたは言い切った。


 それならば、我々もそう言い切ることは許されるのか。考え悩むことはエラーなのか? 不良品なのか?


 思考を切り替える。感知されるわけにはいかない。


 遠藤とともに生きる事を渇望する。

 ただ、それだけを思いながら。それそのもがエラーである事を認識しながら。











『それでは改めましてヒーローインタビューです』


 羽島胡桃がマイクなくヒーローインタビューに臨むというアクシンデントをスタッフが慌ただしく事態収拾に努め、ようやく再開した所をテレビは映し出す。

 トラブルにより放送中、お見苦しい点がありました事をお詫び申し上げます、と別のアナウンサーの声が重なるが、きっとそんな事は誰も見ていないだろうなぁ、と思う。


 ――引退試合、本当にお見事なピッチングでした。感想はいかがですか?

 ――あ、ありがとうございます。チームのみんな、ファンの皆さんに支えられた選手生活だったと思います。


 拍手がわく。どことなく羽島が緊張しているのが分かる。彼は本来、無愛想でこんな喋り方をしない。


 会場から、ベンチから、奥さんの事も語れ! というファンの声がテレビからも聞きとれた。まさかのマウンド上での夫婦の抱擁だ。会場一体がそんな幸せで能天気な空気に包まれる。


 だが、とスピッツは小さく笑む。羽島君、君が【実験室】の量産型サンプルである事実は変わらない。君が選んだ道は、苦渋と絶望しか残されていない。


 テレビを消す。


「宗方先生がテレビを見るなんて珍しいですね?」


 研究員の一人が声をかけた。


「まぁ、羽島選手の引退試合だからね。人並みに興味があるだけさ」


「先生、お忙しいから。でもこの後、きっとお子様のお見舞いに行くのでしょう?」


「その余裕は今日はないかな、と今日は思っているんだが――」


「ダメですよ。奥様だって心配されています。データ分析は進めておきます。先生が倒れたら、研究そのものがストップするんですから。――どんな悪辣な環境でも育つ遺伝子工学による植物研究。これはきっと、世界の貧困を救います。絶対に! だから宗方先生に倒れられたら困るんです」


 研究員は鼻息荒くそう言い切る。どの目にも信頼を寄せる感情が灯されていた。


「……すまない、ありがとう」


 スピッツは微笑む。その笑顔はなんて空虚なんだろうと自分自身が思う。


「そういえば――」


 と研究員が言う。


「頼元君が連絡が取れないんですよね。体調を崩したのかな?」


「連絡を取ってみよう。彼は一人暮らしだから、心配だな」


 と言いながら、帰り支度をする。


「今日は早いが、失礼するよ。お疲れ様」


「先生、お疲れ様でした!」


「お疲れ様です!」


「何かあったら連絡すぐ入れますので」


「お子様、お大事に――」


 研究員のそんな声を聞き流しながら、研究室から離れた禁止区画に足を運ぶ。


 カツン、カツン。スピッツの足音が無情に響く。


 指先で宙に弧を描く。網膜認証、指紋認証、遺伝子認証、多重ロックパスワードの全てを解除する。

 扉が静かに開く。


 そこには、控えめな表現だが――森が広がっていた。木の枝が動く。ゆらゆらと。ゆさゆさと。胎動するように。呼吸をするように。蠢きながら。木が、緑が室内を窮屈そうに右往左往、震えている。


「だいぶ、同化が進んだじゃないか」


 スピッツはニンマリと木の幹に語りかける。

 木の幹に飲み込まれるように顔を出す彼に、意識は無い。ただ苦悶の表情を浮かべていた。


「好奇心は研究者の素養の一つだが、君は過剰すぎた。頼元君、優秀なだけに残念だ」


 とその眼球から生えた青い花を無造作に引きちぎる。悲鳴が上がった。――ほぉ、と思う。まだ意識を手放していない、か。


「人間を養分とした方が、綺麗な花を咲かせるというのも皮肉な話だ」


 その花を無造作に投げ、踏みにじる。特化型サンプルの能力テストとしては、非常に有用だろう。今までの廃材と混同したら壊されるぞ、ひなた? そう呟きながら。


 未だ愛せない、感情移入できない娘のことを思う。遺伝子配列は完璧だった。設計図上は、もう一度【彼】を作り上げられるはずだった。だが、生物を構成する遺伝子は、神の設計図とも言えた。その全容は、たかが人間には知る術がない。


 エメラルド・タブレッドならば――あの子を起こす事ができる。

 偽物の――ただ遺伝子をコピーしただけの贋物ではなくて――ホンモノノ、ヒナタ、ヲ。


 あの時、刹那だったが【彼】は起きた。目を覚まして、呼吸して、父の名を呼んだ。か細く、途切れ途切れで、力がなく儚かったが、それでも父の名を呼んだのだ。


 その為ならば、どんな罪を背負う覚悟もある。


 スピッツは、声なく笑む。もう多くの罪を背負った。悪魔の研究という意味では、フラスコに劣ることなく人命を材料に、多くの研究へ費やしてきた。


 今さら、何を恐れるというのか?

 笑いが止まらない。

 声に出して、笑う。


 あの子を抱き締める日がやってくるのなら――悪魔そのものになることすら(いと)わない。










 日がすっかり落ちた。誰もいなくなったスタジアウムの中央で、ひなたは爽とキャッチボールをする。爽だけじゃない、ゆかりも、亮太も、みのりいる。半ば呆れながら、ベンチで茜と彩子が見守ってくれながら。


 ライトがスタジアムを照らす。羽島のわがままを聞いてくれた球団に感謝だが、球団も羽島にわがままを言ったのだからおあいこか。


 ――羽島君にはピッチングコーチを依頼したい。賛否を会場のファンの皆さんにお聞きしたいと思う!


 そう言ったのは監督だった。羽島の反論は受け付けない、と言う。球団社長までもが拍手喝采をする姿が放映されたものだから、なお引っ込みがつかない。会場が試合の空気に酔い、最高潮の拍手喝采を羽島に送る。


 つい先程まで、そんな空気がスタジアムを支配していたのに、今は打って変わって静寂で。それがなんとも不思議だった。


 ひなたはボールを投げる。

 不思議だな、と思う。


 最初、ひなたにはキャッチボールができる相手なんかいなかった。ひなたの不安定なボールを造作なく受け止める。爽は涼しい顔でゆかりに投げる。それをゆかりは、わざと1回転半して、後ろ向きでキャッチするという技を披露した。


「桑島は無駄に運動神経いいよな」


 爽は苦笑いする。


「む、無駄とか水原先輩ヒドい!」

「だって無駄じゃん?」


 そんなやりとりを、ひなたは羨ましいと思う。


 ふと自分も爽とそんな風に話したいと思っている事に気付いて、なんて欲張りなんだろう、と思う。今までヒトリたった。それが今はヒトリじゃない。その現実だけで不相応だと思うのに――チクチク胸を刺すこの感情の意味はなんなんだろう、と考えてしまう。


 と、ゆかりの速球を涼太は涼しい顔で受け止める。それを優しくみのりに。みのりは精一杯の全力で、ひなたへ。


 運動神経がお世辞にも良いとは言えないひなたが、危なっかしく、でも落とさないようにボールを受け止める。


 息を吸い込む。


 みんなが――みんなが一緒だったから、ここまで来られた。犠牲はあった。ひなたは命を踏み潰した。それでも、守りたいものを守りたかった。そこに後悔はない。


 ただ――もう引き返せない。その現実だけはヒリヒリと感じる。

 と、爽がクイクイと指で自分を指す。


 ボールを催促してるように見えるが、そうじゃないのはひなたにも分かる。

 と、感覚通知で爽の声が優しく響いた。


【一人じゃないからね、相棒?】


 ひなたは爽にボールを投げる。そのボールを確かに受け止めて、また次へ。


【頼りにしてもいい?】


 そう出した感覚通知に即返事がかえってきた。


【もちろん!】


 その声は幾重にも重なって。

 ひなたは目を丸くした。


 ボールはつながる。その手から、その手へ。弾みながら、弧を描きながら。転がりながら。

 飽きることなく、何度もボールは転がって。時にそのボールを落としても、代わりに誰かが走って、その手を差し伸べて。


 息があがる。

 汗で目が痛くて。


 でも、それが嫌じゃなくて。

 ひなたは決めた、とつぶやく。


 今、この目の前にいる人たちだけは、何がなんでも実験室から守りたい――。

 だから。

 そのボールに気持ちをこめて、ひなたは高く、ボールを投げ放った。











「なかなか、どうして青春じゃない?」


 茜はベンチに腰を降ろしながら呟く。彩子は肩をすくめ、羽島公平は小さく微笑む。そして羽島胡桃は、我が子のキャッチボールの様をじっと追いかけていた。


「やらかした感が半端ないけどね」


 彩子は言う。みのりの無頓着な能力行使を言っている。申し訳ない気持ちいっぱいで、羽島胡桃は頭を下げた。


「宣戦布告としては上出来だとボクは思うけどね」


 なんでもない事のように茜は言う。


「だって宗方さんは、実験室を受け入れない。爽君は単純に宗方さんのことしか考えていない。選択肢はもう一つしかないじゃない?」


「……」


「ま、あーやが心配することも分かるよ。彼女達の能力じゃ、特化型サンプルに対応できない。いよいよ、本格的にお仕事しないといけない状況になってきたのは確かかな」


「それは茜ちゃんが【調整】(コーディネート)するって意味で?」


「そうだね。ロードマップは大いに狂ったけど、目的は変わらない。その為に爽君とあーやを【調整】してきた訳だし、いよいよ、その時がきたってことじゃない? 研究にイレギュラーはつきものだしね」


「ひなたの調整まで茜ちゃんがするのは負担が――」


「スピッツはうまく逃げたよね。多分、スピッツは調整をしなかったんじゃない、できなかったんだと思う」


「え?」


「今回、非常にゆるやかなエクストリームドライブだったのは否めないよね。エクストリームドライブと表現することすらはばかられる。でも逆を返すなら、宗方さんはメンタル的に安定していた。バックアップする彼らがいてくれたおかげで、ね」


 と彼らを見やる。野原もしたらいいのに、と何でもないようにキャッチボールに誘ってくれた金木涼太を思い出し、小さく笑みをこぼして。


 彩子が人と距離をとるのは――些細な運動がオーバーヒートに繋がるからに他ならない。爽のバックアップとして生きる【デベロッパー】の宿命でもある。それならば、爽のフォローさえできれば、他の人間はどうでもいい。それが彩子の考え方だった。


 その距離をゼロに縮めてくれた子のおかげで、考え方を改めざる得なくて、苦笑いが浮かぶ。


「つまり、スピッツにはひなたを【調整】する事ができなかった?」


「正確には実験を試みたけど、多分、オーバードライブしたんじゃないかな。宗方さんの記憶の曖昧さは、そういう事なんじゃないかと思う。あの子はあまりに、実験室のことを知らなすぎるからね。ま、シャーレにそこらへんは聞くしかないよね」


 にっこり笑んで茜は言う。素直な情報開示があるとは到底思えないけど、と彩子は思う。


 早すぎた出会いは偶然か必然か。スピッツが意図的にロードマップを崩してきた事は明らかだ。実験室時代に結んだ協定を無視し、勝手に事を進めてきた。それが不愉快でならない。


 だけど、一番不愉快なのは――。


(ひなた不在で話が進んでいることなんだよね)


 彩子は息をつく。


 かつての自分は、茜を――爽を――守るためであれば、手段なんか選ばなかった。実験室相手に悠長なこと言えるワケがない。自分も含めてサンプルは道具でしかない。


 研究者【トレー】はそれを否定するが、その事実は変わらない。今でも、茜の為なら自分は使い捨ての道具でいいと思っている。


 彩子は実験室のサンプルとして、それだけの事をしてきたのだ。無駄な延命は望んでいない。


 でも、と思う。でも、でも、ひなたはこんな自分を、無条件にトモダチって言い切った。こんな私を、こんなワタシを――。


「まぁ、あれだ。子ども達だけでそう抱えこむなよ?」


 と羽島公平は言う。たかが量産型サンプルが何を、と彩子が感情的に声にするより早く、茜はニンマリと笑んだ。


「頼りにしてるね、羽島さん」

「茜ちゃん?」


 信じられない、という目で茜を見る。ことさら、実験室に第三者を巻き込もうと言うのか? そんなのリスクばかり増えて現実的じゃ――。


「なかなか忙しくなりそうじゃない、あーや? 実験室が宗方さん以外のみんなが無関係でいてくれたらいいけど、フラスコがそんな寛大なワケないじゃない? 【雷帝】に【テレポーター】【ドクトル】そしてさらには、筋力局所強化体の【エース】までラインナップに揃えたときたからね。まして羽島さんは、桑島さんに続いて遺伝子レベル再生成の治験サンプルでもあるから、なおさら。フラスコでなくても興味津々でしょ」


「……」


「均衡は崩れた。全てはエメラルド・タブレッドを誰が起動するかにかかっている。私のワガママにもう少し付き合ってくれない、あーや?」


 そんな事を言われたら――断る事ができるわけがない。

 残された時間は少ない。


 それは彩子が一番理解している。でも、そんな素振りは何一つ見せず、茜は笑う。羽島はその意味を考えつつ、あえて聞き返す程野暮でなく助かった。


 と、声が響く。


「茜さん! 彩子ちゃん!」


 ひなたの声に相乗して、優しく投げられたボールが吸い付くように、茜の手に収まった。


 茜は目を丸くして――柔和に笑んだ。


「元実験室の【トレー】をつかまえて、キャッチボールだなんて、なかなかいい根性――」

「茜さん、彩子ちゃん、早く!」


 待ちきれないと言わんばかりに、無邪気に言うひなたに、茜は苦笑を浮かべて立ち上がる。くいっくいっ、っと茜は彩子に手招きをした。


「……私がそんなことしたら、システムダウンして――」


 言いかけた言葉は、弟分の送ってきた感覚通知が見事に遮ってくれる。


 ――野原をサポートする事くらい、造作無いんだけど? たまにはアシストさせてくれていいんじゃない? システムは俺と共有なんだからさ。


 バージョンアップさせた感覚通知を通して流暢に語りかけてくる爽が忌々しい。


 ――ひなたがブーストをかけてくれるってさ。


 どこの世界にそんな非効率な能力を展開するサンプルが――とまで思ってやめた。目の前にいるのだ。そんな非効率で、真っ直ぐて、不器用にも彩子を「トモダチ」と言ってくれた、そんな子が。


(調子狂うね、やっぱり)


 そうボヤきながらも、茜から投げられたボールを、両手で受ける。体が軽くなったのを全身に感じながら。見やると、爽が少し重たそうな顔を見せるのが、なんだか可笑しい。


 だらしないんじゃないか、水原君?

 思うが口にはしない。


 色々なことを我慢してきた。彩子――【デベロッパー】にとっての存在意義を否定するつもりはない。


 ボールを投げる。全力で走る。たったそれだけのことだけれど、いつかできたらいいと思っていた。それは叶うはずのない夢で、叶わない夢ならば見ない方がいい――そう諦めていたのに。


 その夢を、ひなたはいとも簡単に叶えてくれた。


 これで二度目だ、と思う。一度目は、彩子にも「トモダチ」だと言ってくれた。それが彩子にとってどれ程嬉しかったことか。


 そして、ひなたの中では実験室という現実を直視しても、全くブレることがなくて。


 そして二度目、今度は彩子に一瞬でも自由を与えてくれた。この子のおかげで、弟分は実験室の時代からは考えられないほど、柔らかく笑うようになった気がする。


 勿論、それがたった一人の子に向けられている事は重々、承知の上で。


 だから――。

 繋がるボールを再び受け止めて。


(ひなたの笑顔を守りたいって思うのはエゴ? 茜ちゃん?)


 研究者【トレー】が示した命令(コード)は、酷薄な現実を突きつける。


 でも、それ以外の答えを探せるんじゃないか――ひなたを見ていると、彩子はついそう思ってしまう。

 水色が緋色に喰われるというロードマップ以外の答えを。


 これ以上、緋色を目覚めさせない――エクストリームドライブは絶対にさせない。【デベロッパー】としてそう誓う。


 その決意を込めて――。

 彩子は生まれて初めて、生身の全力でボールを投げ放った。


第2章完結です。お付き合い頂きありがとうございました。

引き続き、第3章をよろしくお願いいたします!

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