表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
限りなく水色に近い緋色【原作版・連載中止】  作者: 尾岡れき
第1章 限りなく水色に近い緋色
10/48

8


「これは…」


 ”フラスコ”は絶句した。”ビーカー”は真っ青な顔で、ディスプレイのノイズを見やる。遺伝子特化型サンブル。識別名、限りなく水色に近い緋色、その能力は元素接合を主軸とする。つまり、空気中の酸素を元素結合し、圧縮酸素を人工的に生成する事で発火能力(パイロキネシス)を行使できる、それが報告書にあった宗方ひなたの【能力】だった。追記としては発火能力は彼女との相性が良好であり、接合した元素によっては更なるの力の開発も可能、とある。今さらながら”シャーレ”と”スピッツ”の研究は、悪魔の所業と言える。そして現実は、さらに推論を上回った。


 重力操作────地場を干渉して擬似重力を発生させた、という事か。しかし数字がデタラメすぎるくらい、コストが過剰なはずだ。


 遺伝子レベル再構成────遺伝子配列を瞬時に操作し、時軸を進め治癒力を高めた。多分、その過程で廃材(スクラップ・チップス)のバグを消したと思われる。どちらにせよ、悪魔の所業だ。


『結局、どうなったんだ?』


 電話相手が痺れを切らして、声をかけてきた。


「…後でデータを送る。計測機をことごとく破壊されたから、正確ではないが、貴方にはそれできっと充分だろ」


『数字から語るお前が珍しい』


 口笛まで吹いている。癪に触るが声にもならない。バケモノ────宗方ひなたは、間違いなくバケモノだ。その力を暴走なく制御した【デバッガー】もまた、同等の監視対象に指定すべきだ。この少女達は危険過ぎる────。


『バケモノであればある程、商品価値はあがる。そうじゃないか?』


 声の主は冷静にそう諭す。無論、それは理解できる。理解した上で愕然としたのだ。このバケモノ達の覚醒に。


「総理、データを収集した上で判断すると良い。私は初めて、研究に恐怖を感じたよ」


 この国の最高権力者は、小さく笑んだ。


『歓喜してるようにしか聞こえないが?』


 笑った。”フラスコ”は確かに(ワラ)っていた。嗤いながら唇を噛む。舌なめずりをしながら、自身の作品達を脳裏に浮かべながら。



次回で第1章完結です。この後は平常運転で日曜日朝8時更新を目指していきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ