真に怖いのは
初のホラー小説にして初の短編小説です
書いてる自分も理解不能になりましたが最後までごゆっくりお楽しみ下さい
体験学習。
中学最後の楽しみ。
それも終わってしまった。
俺はバスの中から雪景色の外を眺める。
最初はチラチラとだけ降っていた雪。
いつの間にか吹雪のようになってしまっていた。
「こーゆー日は雪女でも現れるのかねぇ…」
恋愛経験が希薄な俺にとってはむしろ嬉しい限りだ。
すると突然、バスが急停止した。
運転手が担任に言う。
「吹雪が強くてこれ以上この道はいけません!」
「他に道は?」
「ありますが一度戻らなくては…」
「その道でお願いします!」
するとバスは無理矢理Uターンして戻っていく。
吹雪が止む気配はない、むしろ強くなっている錯覚すらした。
そして元来た道をゆっくり戻っていく。
すると高台に赤い屋根の大きな大きな洋館が見えてきた。
もう既に2回も見たが、やはり不気味である。
すると再びバスが急停止した。
運転手がうめき声を出す。
「タイヤがはまってしまったかもしれません!」
運転手は立ち上がると、外に確かめに行く。
担任は遅れると判断したのか、携帯電話を取り出し、どこかに通話しようとする。
…が、
「電波が届かない…!吹雪のせいか!?」
担任は大きなため息を吐く。
すると運転手が雪まみれの状態で戻ってきて言った。
「すみません、時間がかかりそうです、タイヤがはまったどころか駄目になってまして…」
すると女子の1人が言った。
「あの洋館、人住んでるのかな?」
「…さあ?でも意外と綺麗だよね」
生徒達が無意味な議論を繰り広げる。
すると担任は立ち上がり、言った。
「先生が見てくるから大人しく待ってなさい」
勿論猛吹雪の中飛び出ていく阿呆もなかなかいない。
そして担任が出ていくと、また無意味な議論が始まった。
バスが動き出す気配は相変わらずない。
ー数十分後ー
バスが動く気配もなく、担任が戻ってくる様子もない。
不審に思った生徒の1人が運転手の様子を見に行き…、
真っ青な顔で帰ってきた。
「運転手さんが…いない!」
「何ィ!?」
「嘘でしょ!?」
「えっ!?」
生徒達は様々な反応を示す。
すると、楽観的な性格の男子が言った。
「…きっとアレだよ!洋館の方に行ったんだよ!」
すると今度は誰が洋館に行くかという話になった。
結局、体格の良い男子達が見に行った。
3人行き、2人が戻ってきた。
「返事はないけど中は暖房が効いてるみたいだった、きっと誰かいるんだ!」
「大川は『外は寒いから嫌だ』とか言って1人で残ってる」
大川とは見に行った3人の内の1人で、唯一戻ってこなかった男子だ。
「とにかくここにいるよりは良い!皆も行こう!」
皆が立ち上がり出ていく。
じゃあ俺も一緒に行こうかな…。
ー数分後ー
近くで見るとますます巨大だ、旅館のようにも見える。
手入れはされているのか、窓から見える観葉植物は綺麗だった。
「勝手に入って大丈夫なの?」
女子は戸惑うように言う。
「寒くて死にそうだったから入った、いないと思ったとか言ってけば大丈夫だって!」
茶色の大きな扉を開ける。
「お邪魔しま~す、……あれ?大川は?」
「先生探しに行ったのかな?」
「大川ー!いるなら返事してくれー!」
しかし返事はない。
「どこ行ったんだよアイツ…」
男子の1人がキレ気味に言う。
「分担して探すか?」
「外から見た限りじゃ3階建てっぽかったな、でも広いからどんぐらいかは…」
俺も改めて周囲を見渡す。
電気はついている、というかおそらく最初に行った3人がつけたのだろう。玄関はない、洋風だ。
下は赤い絨毯が敷き詰められていた、埃もない新しい感じだ。
廊下の奥には2つの入り口があり、広い入り口の方の奥には広い部屋が見える。
しかし生徒達は小さい扉の方に駆け寄る。
「開かない、中から鍵が…」
「なら大川はそっちの広い部屋に行っただろ、どうせ開かないんだしそっちの部屋に行こうぜ」
「そうだな…」
「ここは…レストランか?」
皆に続いて俺も部屋を見渡す。
丸い部屋で、左半分の壁は透明なガラス張りだった、ガラスの向こうには枯れ木と積もる雪のみが見える。
部屋の中心には丸い形にカウンターのような物があり、ワインの瓶やワイングラスが置いてある。
すると生徒の1人がそのカウンターらしき物に近づく。
「レジのあの機械だ…!埃もないしまだ使われてるのかも!」
「でも人の気配は全く無いぜ、大川や先生もいないしよぅ…」
「まだ奥に部屋がある、行くぞ」
「えー!?もう嫌だー、私この部屋で休んでるー!」
「じゃあお前だけここにいれば良い」
基本的に面倒くさがりな女子の林原と、口の悪い男子の木山が言い争う。
「まぁまぁ、こんな状況だし、喧嘩はやめよ、ね?」
すると林原は納得したのか、
「…わかった、もうちょっと頑張る」
と言った。
木山もこれ以上争う気はないようで、
「…チッ、余計に時間くった、さっさと行くぞ」
と言った。
そして皆も歩き出す。
するとすぐに2つの入り口が見えてきた。
そこで体格の良い男子の森田が口を開く。
「俺腹減ったよ~、食べ物バスに置いてきちまったしよぅ…」
すると林原が驚いたように言う。
「凄い!そんなこと言ったらこっちの部屋厨房だよ!」
「マジか!?食べ物あるんじゃねーの!?」
走って行ってしまう森田、木山や他の生徒はため息を吐いたり苦笑いしながら厨房らしき部屋に入っていく。
中は様々な調理器具や蛇口などがあり、本当に厨房のようだ。
「器具も綺麗だ…、やっぱ誰かが管理してるんだ!」
すると奥から森田の声が聞こえてきた。
「うめぇ!このハムマジでうめぇ!」
ムシャムシャとハムを食らう森田、それを見た木山は言う。
「おい共食い豚、賞味期限とか確認したか?」
「おう、まだまだ大丈夫だったぜ!お前等も食うか?」
林原はため息を吐く。
「家主が来たらどうするの?」
「後から金払えば怒られねーだろ?お前等も食えよ」
木山は森田に背を向け言った。
「こんなところで時間を潰してられるか、先に行くぞ」
林原は言う。
「えー!?少しくらい休んだって良いじゃん!飲み物とかもあるしさ」
「じゃあ俺は先に行くぞ、せいぜいどっかの映画みたいに豚にならねーことだな」
木山は行ってしまった。
俺は一緒に行くかどうか迷ったが、行く者が1人もいないので留まることにした。
かと言って、皆が皆食べたり飲んだりしているわけではない。
それぞれ厨房の中を散策したりレストランのような部屋の中を散策したりしている。
中には果物ナイフを護身用として手に取る者もいる。
ー数分後ー
学級委員の長崎を中心に、森田、木山、大川を除く全生徒で話し合いが始まった。
森田は未だに厨房で食料を食らい続けている。
木山と大川は戻ってくる気配がない。
「これからの行動について皆で話し合おう」
長崎は言う。
「まず…、木山君のような個別行動はさらなる混乱を生む可能性を秘めているのでできるだけ控えるようにしよう」
皆が賛成する。
続けて長崎が話す。
「そして今後の行動について誰か意見は?」
すると1人の女子が挙手する。
「まずは大人の人に会うのが最優先だと思います」
「でもそのためには結局先生か運転手さんを探さなきゃいけないわけで…」
皆が困ったように頷く。
すると長崎が言った。
「仕方がない、2つのグループに分かれよう」
「2つって?」
「片方は探索を続けるグループ、もう片方はここで休憩をしつつ木山君や大川君、先生や運転手さんを待つグループだ」
ここは流石は長崎と言うところだろう。
林原のような生徒の気持ちもしっかり汲み取っている。
「じゃあ皆はどっちのグループが良い?」
「私休むー」
「俺探索するわー」
皆が口々に言うが、基本的に探索は男子、待機は女子が多いようだ。
長崎は言う。
「人数的にもほぼ半々だし、これで良いかな」
ちなみに俺は探索組だ、こう見えて積極的な性格なのだ。
「じゃあ探索組は急ごう、…待機組の皆は森田君の様子も見るようにしておいてくれ」
「任せてー」
林原が言うが、何とも頼りない。
しかし長崎はそんなことは気にもとめず奥の部屋へと進んでいく。
俺達も慌ててついていく。
後ろで林原が手を振っていた。
ー数分後ー
やはりここはホテルのようだ。
レストランのような部屋からまっすぐ進んでいくと、ロビーのような広い部屋にたどり着いたのだ。
長崎は玄関へと向かう。
「…開かないな」
他の生徒もそれぞれ散策を始める。
すると何人かが口々に言う。
「こっちに階段があったぞ!」
「こっちには大浴場へとつながる地下への階段が」
「エレベーターがあったけど、動く気配はなかった」
「フロントみてーな所漁ってたら鍵が1個だけあったぞ」
「その奥の事務室みたいな所は机とかあったけど資料みたいなのは一切無かった」
長崎は考え込んでから言う。
「鍵は僕が預かろう、そしてさらに2つのグループに分かれよう」
2階へ行くグループと、大浴場の方へと行くグループだ。
「大浴場の方はそんなに時間がかからないだろうから、終わったら2階に来てくれ」
俺は…2階のグループの方に行こうかな。
ー同時刻 厨房ー
林原は森田の様子を見に来ていた。
だがそこで林原が見た森田は、予想していた様子ではなかった。
「え…?嘘…でしょ…?」
ー数分後 大浴場ー
「やっぱこーゆーのって女子が女風呂見てくるべきじゃない?」
そう言うのは勝ち気な女子の中井だ。
大浴場の方に来た女子は、中井1人しかいない。
「でも、個別行動は控えるべきだって…」
弱気な男子、丹波が言うが、中井は反論する。
「じゃあアンタは私と一緒に女風呂に行くの?そこで何する気?」
「べ、別に何も…」
「あーもーうるさいわね!ちょっと風呂の中見て戻ってくるだけじゃない!私を大川とか木山の阿呆と一緒にしないでよ!」
弱気な丹波は引き下がるしかなくなる。
「アイツなら大丈夫だろ、空手に柔道、剣道にボクシングを習ってる超格闘女だし……、俺達も男風呂散策しに行こうぜ」
「う、うん…」
ー同時刻 2階ー
「今更だけど、ここってやっぱホテルだよな」
「本当に今更だな、しっかし大川も木山も先生も一体どこ行ったんだよ…?」
「意外とバスに戻ってたりしてな……って!?」
窓を見て驚愕したのは森田、大川に続いて体格の良い男子の塩谷だ。
俺達も続いて外を見る。
「吹雪が止んだ…」
長崎が言うと、塩谷はもどかしそうに言った。
「いや、それもそうなんだけど…俺達のバス、見えるじゃん?」
「ああ」
「誰かいたんだよなー、運転手かな?……行ってくる!」
長崎は止めようとする。
「個別行動は好ましくない!感情を抑えるんだ!」
「大丈夫大丈夫!今は雪も降ってないし!」
その体格で長崎を軽く振り払い、走って行ってしまった。
すると塩谷の親友、砂場がため息を吐く。
「しゃーないな、長崎!俺行ってくる!……個別行動は控えろ、だよな?」
砂場も走って行ってしまった。
ー数分後 大浴場ー
「うーん、やっぱ何もねーな」
「そ、そうだね…」
丹波達は男風呂から出る。
「中井はまだ出てねえみたいだな」
その時丹波は違和感を感じた。
「あの…、出てないにしては静かすぎないかな?」
「ははっ、じゃあお前見てこいよ」
「え、え~っ!?」
「言い出しっぺの法則~♪」
「は、はい…」
丹波はこんな気が弱い自分が大嫌いである。
「お、お邪魔しまーす…」
そこで戸を開けた丹波は恐ろしい光景を目にする。
「え…?嘘…だよね…?」
ー同時刻 バス車内ー
「塩谷ー!おーい!」
砂場は呼ぶが、返事がない。
「何だよ、塩谷どころか誰もいないじゃねーか」
ー数分後 ロビーのような広間ー
長崎や他の生徒達と戻ってきた俺達は、慌てて走ってきた他の生徒達と合流する。
そして話を聞いた長崎はかおを真っ青にする。
「大川君、木山君、森田君、林原さん、中井さん、丹波君、塩谷君、砂場君、……8人が行方不明だって!?」
「待機組は塩谷か砂場見なかったのかよ!?」
「砂場君が出て行くのは見たよ、けど塩谷君は…」
「じゃあ砂場はバスの中にいるだけじゃね?」
そこで口を開いたのが1人の男子だ。
「はぐれた馬鹿共にはある共通点がある」
「馬鹿って言うことはないじゃない!」
「いいや、俺様、沖田様にとっては馬鹿だね、コイツ等は、……その点お前達は運が良かったと言うべきだろう、そして長崎、お前は賞賛に値する」
「良いからさっさと共通点言えや厨二病!」
この沖田様は気づいたようだね、俺は大分前から気づいてたけど。
「この館…、より正確にはこの館の近辺で個別行動を行った者…、それが行方不明になる条件だ」
行方不明?俺とは少し考えが違うみたいだ。
まぁ間違いでは無いだろう、現に行方は不明なのだから。
沖田はドヤ顔を披露しながら言う。
「バスは捨て、全員で早急に館から離れ近くの民家に助けを求めるのが得策だろうな、不幸中の幸いか、今は天候にも恵まれている」
レストランらしき部屋も出て、赤い絨毯の廊下まで戻ってきた。
「そういや長崎に預けた鍵、どこのだったんだろうな」
「案外その部屋のだったりして」
入るときに見えたもう1つの鍵のかかっていた部屋。
長崎は止せば良いのに、その鍵穴に鍵を差し込んだ。
「…マジか」
「おい、開けてみろよ」
口々に止めたり進めたりする生徒達、それを押し退け、沖田がドアノブを握った。
「俺が開ける」
と言い切った瞬間だった。
真っ白な手が伸びてきて、沖田の腕を掴み部屋の中に引きずり込んだのは。
中から沖田の女々しい悲鳴が聞こえた。
そして開く扉、その中に見えたのは…、
血に染まった部屋
首吊りで殺されている行方不明者達
黒髪を前足まで垂らした白装束の女(?)
それを見た瞬間、全員が一斉に外に向かって走り出した。
そして全員が外に出るのを確認すると、長崎は扉を押さえつけた。
「ここは僕に任せて皆は逃げろ」
その後どうなったかって?
知らないね。
だって俺はあの時知ってしまったんだ。
俺の姿が、誰にも認識されていないことを。
…どうでしたか?
主人公について疑問がある方はしっかり読み直して下さい
実を言うと、内容は後付けで、最後の最後の真のどんでん返しが書きたかっただけですw