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平行
安紀は、窓の外を眺めていた。恵里菜が来ると、何も言わずに、恵里菜を見つめた。毒気が抜けたような、何の執着もないような目をしていた。恵里菜が、「安紀くん?」と言うと、「うん。」と答えた。ベットに座ると、安紀は、少し、身を引いて、恵里菜が座りやすいようにどいた。その日はよく晴れていた。恵里菜が、「これからどうするの?」と聞くと、安紀は、「大学にちゃんと通って、卒業したら、就職するよ。それで、子供たちにお金を送る。」と答えた。恵里菜は、つい、「それだけ?」と聞いてしまう。安紀は、「それだけ、で、いいんだ。」と言い切った。外では鳥が鳴いていた。
遥菜が小学校に入る年、郵便にお金が入っていた。恵里菜は、その封筒を抱きしめて、「会いたい…」と、思わずにはいられなかった。小学2年生の康人は、最近、安紀のような口を利く。真似しているわけじゃない。本当に、本質が同じになってしまっている、と、そう感じさせる。
遥菜は、ランドセルが重いので、「お兄ちゃん、待って!」と言う。康人は、「どうして?」と、この妹を見つめていたが、苦しそうな顔を見るうちに、はっとして、軽く走って戻る。「持ってやるよ。」「ありがとう。」
そのやり取りを安紀は見て、ああ、僕のようにはならない、と思っていた。




