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愛なんか消えてしまえと願う私は悪くないと思う  作者: ましろ


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7.ようやく伝えられた

 おじさんがじっと私を見ている。

 私も早く誰なのか知りたいのでじっと見返す。

 しばらく見合っていると、ようやくおじさんが口を開いた。


「……私はソフィアの兄だ」


 お母さんのお兄さん?

 知らなかった。お母さんにも兄弟がいたんだ。

 初めて会う親戚に、どう反応を返したらいいか悩む。とりあえず、自己紹介かな?


「あの、私は」

「駆け落ちなんて恥ずかしい真似をして、今さら子どもを使って金をせびりに来るとは情けない」


 おじさんが苦々しく吐き捨てると、大きくため息を吐いた。

 ……もしかして、おかねのむしんって、お金をくださいって言いに来ること? 


「……違います」

「では、何をしに来たというんだ。あれだけ大騒ぎしておいて、まさか、ただ顔を見に来たわけではあるまい」


 確かに騒いだけど! でも、そうじゃなくて。そう、言い返したかったのに。


 チャリーンッ、と音がした。


 音は私のすぐ足元。視線を下ろせば、街灯に照らされ、キラキラと光る金色のコインが三枚転がっていた。


「平民ならそれでしばらくは暮らしていけるだろう」


 ……初めて見た。

 金貨をそっとつまみ上げる。

 こんなにも小さいのに、これ一枚でお父さんの何ヶ月分のお給料なのかしら。

 ちょっと怖いと思いながら、三枚すべて拾い上げた。


「おじさん」

「……なんだ。まさか足りないとでも」

「はい。落としたらすぐに拾わなくちゃ」

「…………は?」

「あら? もしかして、おじさんもお(ひざ)が痛いの? それなら仕方がないわね」


 お向かいのおじいちゃんも、膝が痛いからしゃがむのが大変だといつも言っているわ。


「なっ、誰がだ! それはお前たちに恵んでやっただけだ!」

「めぐむ? どうして?」

「それはっ……、いや、待て。……まさか、君は女の子なのか?」


 ショック。今まで男の子だと思われていたの⁉

 そりゃあ、男の子の服を着ているし、髪だって短い。でも、こんなに近くで話しているのに。

 じわりと涙が滲む。

 覚悟はしていた。でも、私はまだ自分の姿をちゃんと見ていなかったから。……見る勇気がなかったから。

 ……そんなにみすぼらしくなっちゃったんだ。

 お母さん譲りの髪だけが自慢だったのに。


「お、おい? 一体どうなっているんだ。だいたい、ソフィアはどこにいる? 宿で待っているのか?」


 急におじさんがオロオロしだした。

 もう、それよりも早く金貨を受け取って! こんな大金を持っているのは怖すぎる。

 おじさんの大きな手を掴むと、ビクリと(おび)えられた。なぜ。


「もう落とさないで。ちゃんとお財布にしまってください!」

「……は? だが……、その、金に困って来たのだろう?」

「違いますけど」


 あ。でも。そうだった! 困っているからここまで来たのよ。本当はおじいちゃんに会いに来たんだけど、でもこの人、お母さんのお兄ちゃんなのよね? だったら!


「違うけど違わないっ! です!」

「は?」

「お願いしますっ! おじさん、助けてっ!」

「……何があったんだ?」


 ……よかった……ちゃんと聞いてくれる……。

 うぅっ、泣くな。まだ早いっ。


「……おじさん、お願いだからお父さんとお母さんのこと叱ってくださいっ‼」





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