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愛なんか消えてしまえと願う私は悪くないと思う  作者: ましろ


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4.親切な人に出会いました


 ドッキドッキドッキドッキ。

 心臓の音が大変なことになっている。


「これか? 坊主」


 誰だろう、この人。

 褐色の肌にキラキラとお月様みたいな瞳の男が、私のバッグを差し出してきた。


「……ありがとうございます」


 なんとかお礼を言ったものの、どうしても視線を外すことができなかった。だって──


「怖い?」

「……へ?」

「悪いね。異国の血が混ざっているんだ」

「……だからそんなにきれいな眼なの?」


 いいなあ。そんなにもきれいな瞳なら、鏡を見るたびに幸せになれそうだ。


「ハハッ! 違う、肌の色だよ」

「……はだ。……ああ、日に焼けているのを気にしていたの? でも、お隣のダンおじさんも日に焼けて真っ黒よ?」


 知らなかったわ。日焼けを気にするのは女性だけではなかったのね。


「……お前、女か?」


 あ、しまった。せっかく変装していたのに、女言葉で喋ったら意味がなかったわ。


「えっと、用心のために男の子の服を着ているの。……内緒よ?」

「俺が悪いやつかもしれないのに?」

「カバンを取り返してくれたのに?」


 お互いに疑問形。でも、なんでそんなことを言うのかしら。悪い人ぶりたいお年頃なのか。


「悪者はそんなに格好良くないから、普通にいい人でいたほうがいいわよ?」


 あなたは間違っていますよと親切に教えてあげたのに、なぜか大笑いされてしまった。

あ、そうだ。この人ならもしかして。


「あの! 親切ついでに教えてもらえるとありがたいんですけど!」 

「俺で分かることなら」


 笑いすぎて涙が出たのか、目元を拭いながらもOKしてくれた。やっぱり優しい人だわ。


「エインズワースという家を知りませんか?」

「……まさか、貴族の?」

「はい。行き方を教えてほしいんです!」


 よかった! 知っているみたい!

 どうやら私の不運は終了したようです。こんなに早くに手がかりをつかめるなんて──


「そんなナリで行っても門前払いされるのが関の山だぞ。どんな理由かは知らないが、お貴族様はこ汚い平民の小僧など相手にしないからな」


 ショック! こ汚いって言われたわ!

 でも、否定できないところが悲しい。今の私はどう見ても薄汚れた小僧だもん。そう言われても仕方がない。


「だ、大丈夫です! 秘密兵器がありますから!」


 ちゃんと持ってきたもの。お母さんの宝物。お祖父様にもらったって言っていた。家紋も入っているから絶対にお母さんの物だって信じてくれるはず。

 彼に見せようと、なくさないように首から下げていた物を取り出すためにシャツのボタンを外す。


「おい! こんな所で何するんだ!」

「え? お兄さんに見せようと思って」

「恥じらい! ここは往来だぞ!」


 叱られた。ただ、お母さんのブローチを見せたいだけだったのになんで恥じらい? お母さんの宝物は恥ずかしくなんかないもん。


「……レイだ。お前は? というか、何歳だよ」

「私はフィリシアです。十五歳になりました!」

「俺は十七。今日はもう遅いから、行くなら明日だ」


 そんな! 早く行かないと、グレースがきっと困っているのに!




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