17.偶然は必然
私とレイさんはちょっと似てるね。
両親の愛のために振り回されてきた人生。
それとも、家族ってどこもこういうものなのかな。
……あ、違うみたい。
伯爵家一同、お得意のポーズになっているもの。
「質問はもう終わりですか?」
「……あ──、……いや。その……何というか」
おじさんがちょっと泣いている。もしかして、男爵家の人とお知り合いなのかな?
「大丈夫ですか?」
「……すまん。……そうだ、君は今、スラムにいるといったな? 家宝など持ち歩いて平気なのか」
そういえばそうね。返せというくらいのお宝なのだもの。敵は男爵家だけではないのでは。
「そこまで馬鹿じゃないので」
「……隠してあるのか」
「どうかなぁ。たぶん、最適な場所にありますよ」
どうやら教えるつもりはないらしい。これに関して私は口を挟むつもりはないし、もちろんそんな権利だってない。
でも、レイさんのことを応援したいと思う。
「あ、でも。俺が家に帰らなかったから、明日には分かるかもしれません」
「は……? まさか、君はわざと帰らなかったのか?」
「フィリシアが心配だったのは嘘ではありません。でも、俺もそろそろ潮時だと思っていたので、あなたの思惑に乗らせていただきました」
こういうのを強かというのだろうか。レイさんは諦めず、理不尽と戦っているのね。私よりもずっと強い人だ。
「レイさんは格好いいね。……私ももっと戦うべきだったのかな」
毎日の忙しさにいつの間にか慣れていた。不満に思いながらも、自分がやらないとみんなが困るのだと言い聞かせ、ただひたすらに働いてしまった。
……私は、こうして助けを求める前に、自分で声を上げるべきだったんだ。
「俺は母さんがいなくなってようやく動けた。それまでは、母さんが笑っているならいいやって、義母上の気持ちを見ないふりしていた卑怯者なんだよ」
ああ、本当に私達は似ている。
もっと早く。そんな後悔まで似なくていいのに。
「本っっっ当に悪かった! 頼むからそれくらいで止めてくれ! も、居たたまれなくておじさん泣いちゃうから!」
あ、おじさんが本気で泣いた。やだ、おじいちゃんも⁉
伯爵家はどうやら人情家らしい。それなのに、どうしてお母さんは人情が恋情に変わってしまったのだろう。
「あなた達はいい加減になさいませ。祖父と伯父に泣かれたらフィリシアが困るでしょう」
おばあちゃんが容赦なく叱りつける。いや、確かにそうなんだけど。
「それから、パーシヴァル。伝えたいことははっきりおっしゃい!」
おじさんが名指して叱られた。
「レイさん、と呼んでもいいかしら。その子はあなたを泥棒だと疑っているのではなくて、息子の安否を心配している父親の気持ちを知っているからお節介を焼いて空回っていただけなの。紛らわしくてごめんなさいね?」
「そうなのよ。父も夫も情に厚いくせに不器用で、事をややこしくするから」
おばあちゃんとおばさんが言いたい放題だ。二人に血のつながりはないはずなのに、よく似ている。
「いえ。俺の方こそ面倒事を持ち込んで申し訳ありません」
「あら。私達は孫娘の恩人を迎え入れただけよ?」
「そうね。ただ、偶然は必然と言うでしょう。レイさんが言ったように、そうなる時期が来たのだと私も思うわ。よかったわね? パーシヴァル」
「……はい。不甲斐なくて申し訳ない」
おじさんがしおしおしてる。私達のせいで無駄に叱られてしまって申し訳ないわ。
「いえ。ただ、疑問なのですが」
「どうしたの? レイさん」
「ちょっと不思議で。どうやったらこの家で、フィリシアのお母さんは花畑に育ったのかな」
あ。私が聞けなかったことだ。
「……レイさん、ありがとう。聞く勇気がなかった」
「俺は他人だから」
「じゃあ、レイさんの家族には私が聞いてあげるね?」
私も、レイさんのご家族なら言えると思う。




