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君と一緒に歩くまで  作者: 双鶴


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第4話 映画館で涙

「映画、行かない?」


放課後、俺は思い切って言った。

言った瞬間、心臓が跳ねた。

清沢弥生は、少しだけ目を丸くして、すぐに笑った。


「急にどうしたの? どんな映画?」


「えっと……アニメ。感動系らしい」


「ふーん。いいよ。土曜、空いてる」


あっさりOKが出た。

俺は、内心ガッツポーズをした。

映画館は島にはないから、フェリーで本土に渡る。

それだけでちょっとしたイベントだ。


土曜日。

フェリーの待合室で、弥生は白いパーカーにジーンズだった。

制服じゃない姿を見るのは久しぶりで、なんかドキッとした。

俺は、いつものジャージにパーカー。……ちょっと後悔した。


映画館は、港から歩いて15分。

チケットを買って、ポップコーンを買って、席に座った。

隣に弥生がいる。それだけで、緊張してポップコーンが減らない。


映画が始まった。

主人公は、病気の妹のためにロボットを作る少年。

最後、妹が「ありがとう」と言って、空を見上げるシーン…


俺は、泣いた。

涙が止まらなかった。

隣に弥生がいるのに。

なんなら、隣の席のカップルより泣いてた。


エンドロールが流れて、照明がついた。

俺は、慌てて目をこすった。

弥生は、俺の顔を見て、笑った。


「……泣きすぎじゃない?」


「いや、あれは……反則だろ……」


「まあ、わかるけど。悠翔って、感情出すタイプだったっけ?」


「……違うと思ってたけど、今日は出た」


弥生は、笑いながらポップコーンをつまんだ。

「泣いてる男子、嫌いじゃないよ」

その言葉が、なんか優しくて、俺はまたドキッとした。


帰りのフェリー。

海は静かで、夕焼けが水面に広がっていた。

弥生は、窓の外を見ながら言った。


「映画、よかったね。誘ってくれてありがと」


俺は、うまく返事ができなかった。

でも、心の中では、何度も「よかった」と思っていた。


少しずつ、距離が縮まってる。

でも、まだ“幼馴染”の枠から抜け出せてない気がする。

俺は、次の一歩を考えていた。


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