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エピローグ
春。
制服のシャツが少しだけ肌に張りついて、朝の空気が街に流れ込んでくる。
港の方から船のエンジン音が聞こえていた。
美晴島の春は、いつもこんなふうに始まる。
坂道を、2人の高校生が並んで歩いていた。
柳沢悠翔と清沢弥生。
制服姿で、笑いながら、肩が少しだけ触れている。
会話は途切れがちだけど、空気は穏やかだった。
その様子を、港のベンチから見ていた漁師の夫婦がいた。
おじさんが、魚の箱を積みながら声をかける。
「おっ、お揃いで登校か、お似合いだぞ」
おばちゃんは、笑いながら言った。
「あんた、からかうのはおよしよ。いってらっしゃい」
2人は、少し照れたように笑って、頭を下げた。
そして、また並んで歩き出す。
ゆっくり、でも軽やかに。
そして今、俺、いや、俺たちは一緒に歩んでいる。これからも、ずっと…




