第2話・不良がモテるのは本当か!?(中編)
やっぱり最初の話は説明も多くなるので前編・中編・後編の三部構成にします。
とりあえずボクは会長を探した。
すると校舎裏から、何やら姦しい声が響いていたので行ってみると。
案の定、会長がいた。そして更に案の定、女子生徒三人によって囲まれている。
なにやら聞くに絶えない罵詈雑言を仰られていらっしゃるようだが、要約すると。
まず、下駄箱でボコられていた哀れな坊主頭君の件。
彼は不良から解放されて良かったねと幼馴染みに言ったらしいが。
そもそも羽藤院に告白したのは幼馴染みさんの方からだったらしい。
昨日アレからすぐ羽藤院は別れを切り出したらい。
幼馴染みさんにとってはいきなりの事でわけがわからなかったことだろう。
そんなところに本日、事の元凶が真実を暴露してきたというわけだった。
幼馴染さんはそれはもう怒髪天で、あんたとは絶交だと言い放って手を出してしまったらしい。
そして殴っている際に会長の話も出たらしく、今現在絡まれている現状に繋がるということだった。
「それで? ワタシにどうして欲しいのかを教えて欲しいんだけど」
「だから! 羽藤院に、またこの子と寄りを戻すように説得しろって言ってんだよ!」
「そうよそうよ! この子がかわいそうと思わないわけ?」
徹頭徹尾、白けた様子の会長。
対して幼馴染みさんと、その友達らしき女子AさんとBさん。
特にAさんBさんが、本人以上にヒートアップしている様子で。
いよいよ苛立ちがピークに達したらしいAさんが、会長に掴みかかろうとした。
だが会長は、軽く腕をふるっただけでAさんを投げ飛ばしてみせた。
合気道なのか柔道なのかすら、よく見えなかったので無関係なボクにはわからないが。
当事者の女子達はそれだけで震えあがってしまい、そのまま一目散に逃げていってしまった。
こうしてあっさり事態は収拾したらしいので。
とりあえず、そろそろ朝のHRの時間なのでボクは教室に戻ることにした。
会長がどうもボクが隠れている方向をじっと睨んでいる気がしたが、気がつかない振りをした。
※
「見てたんなら助けてくれてもいいじゃない」
放課後、やはりと言うべきかボクは会長に小言を言われる運びとなった。
「そんなことだからモテないのよ。世の中の女子は、ちゃんと自分を守ってくれる男子や、強引に引っ張っていってくれる男子にグッと来るものなんだからね」
ボクはハイハイと頷きながら、風紀委員の仕事が滞る予感を感じとっていた。
「そういえば、あの幼馴染みさんもナンパに絡まれてたところを羽藤院くんに助けられて恋に落ちたらしいわよ」
なんてベタな出会いなんだ。最近の恋愛漫画でももうちょいヒネりそうなもんだと思ってしまう。
「不良がモテる、って言うのはよく聞くけど。正直な話、世の中ナヨっちい男子が増えすぎてるから、不良が相対的に良く見えてるだけな気がしてきたわ」
まあ、そういう見方もあるかもしれない。
とはいえ。
あの幼馴染みさんが坊主頭君ではなく羽藤院を選んだのは、
不良どうこう以前の問題だというのは、ボクも会長もわかっていたことだ。
そもそも坊主頭君の言動を思い返してみれば明白だった。
彼はここへ来た時も乱暴に扉を叩き、先輩にあたるボクや会長に対して無礼な言動を続け、
挙げ句の果てには、羽藤院に対したときに会長を盾にするようなヘタレぶり。
普段があんな調子なら、それで好きになれというのがどだい無理というものだ。
あの振る舞いは、幼馴染みさんの好みに合わせて不良になろうとした末の代物なのだろうけれど。
結局それも中途半端になっていればもはや笑いも起こらない。
「本当にバカよね。もっと違う形で相談してくれるって、期待してたんだけど」
やはりそうか、とボクは納得する。
会長は、昨日の段階で坊主頭君が恋愛相談に来るとわかっていた。
だからこそ風紀委員の仕事に対して気もそぞろな心地で、待ち構えていたのだろう。
結果としてあのようなことになり、残念そうにしている会長だが。
正直それは、どこまで本音なのだろうか。
*
会長は、全校生徒の行動パターンをある程度予測することができる。
冗談みたいな話だが、事実だ。
それは超能力とかではなく、観察力と情報分析と並み外れた頭脳による予測演算というやつなのだ。
会長が本気になれば特定の生徒が今日どこで何をするのか、99%的中させることができる。
だからこそ、坊主頭君の行く末もある程度わかっていたように思う。
だが会長が唯一予測を外すもの。それが恋愛に関わることだ。
何でも先が見えてしまう会長にとって、恋バナこそが唯一の刺激。
今回も、坊主頭君が新しいなにかをしてくれるのではないかと期待していたに違いない。
だが、『破局の魔王』に頼ったことでおそらく運命は収束した。
会長もボクも今までの経験から知っているのだ。
会長の力は、無意識下でも発動する。
会長が坊主頭君に幻滅した時点で、会長は知らず知らずのうちに行動で最適解を導いてしまう。
坊主頭君の望みを叶え、そして坊主頭君自身の関係も壊す答えを。
人を呪わば穴二つ。
会長は、基本的に自分を頼ってくれた人を裏切ることはしない。
どんなに自分が恋愛脳であろうと、時には人の恋路を邪魔することもする。
だが同時に、誰かの不幸を望む者には相応の報いを受けさせる。
それは自分自身に呪われた能力があるゆえか。
単純に、恋愛に憧れがあるからなのか。
それは会長にしかわからない。
ともあれ会長は自身の会話、仕草、口ぶり、態度、
そして羽藤院とのやり取りさえも使って、坊主頭君を誘導した。
どういう言葉をどのように伝えれば、目の前のこの人はどう動くのか。
それらを計算して、幼馴染さんとの関係を壊すように立ち回らせたのだ。
結果。
こうして今回もまた会長は、見事に関わった全員を破局させてしまった。
それが今回の話の顛末だ。
*
だが、ボクの話はまだ終わらない。
むしろボクの役目はここからだ。
重ねて言いますが、設定とかあとで多少修正するかもしれません。