うつくしく生える森
昔書いた第二弾。
またまた病んでる系だけどちょっと希望もみたいな?
気が付くと、私は深い森の中に立っていた。
とても広い森なのだろう。周りを見回してみても森の出口が全くわからない。
更に、旺盛に生い茂った草木たちが、まるで監獄の中にでも放り込まれたみたいに周囲を取り囲んでいる。簡単に出口を探し出せるような状態ではない。
突然訪れた目の前の状況に、ひとりきりの私は進む方向も定まらず、ただ立ち尽くしていた。
時々、遠くの方から声が聞こえてきて、その声のする方へと進んでみた。
しかしその声の主にも、また他の誰かしらにも、全く会うことは出来なかった。
再び私はその場に茫然と立ち、周囲の気配、音に感覚を研ぎ澄ましてみる。
何も感じない。
何も聴こえない。
時間だけが絶え間なく過ぎていく。
たった一人きりの森。
どれだけの時間が過ぎただろう。
森は少しずつ、季節の移ろいと共にとその姿を変えていく。
太陽の陽の光が、風に揺れる緑の木々の間からきらきらと眩しく降り注ぎ、やがて葉はその色を鮮やかに変化させ、紅葉が森を艶やかに染め上げていく。そして寒さも深まると、葉はすっかり枯れ落ちて辺りはすっかり寂しくなってしまった。
私も、この痩せこけてしまった森のように、すっかり体力も衰え、やがて立つ事も出来ず木の根元にもたれかかるように横になる。
少しずつ、落ち葉が身体にかかり、身体は動かなくなっていき、皮膚は汚れ、爛れていく。身体は腐っていき、やがて、骨だけが残った。
私はこの森と、ひとつになっていた。
そして再び声を聞いた。
この森の声を。
森に住む動物達、植物達の声を。
彼等はすぐ側で、ずっと私を見守っていた。
初めてその事に気付いた私は、改めてこの森を見回してみた。
そこには、沢山の生命が溢れていて、私もその生命の中の一つであることを初めて知った。
今、森とひとつになった私は、一人ではなくなっていた。
違う。初めから一人じゃなかった。
森とひとつになる前から、私は決して一人ではなかった。
でも、ずっとわからなかった。私はこの森の中でひとりぼっちで寂しく朽ちていくのだと思っていた。
でも違った。
ようやく気付けたのだ。
森の沢山の仲間達がいつも私を優しく包んでくれていた事に。
それがどれだけ嬉しい事か。
どれだけ喜ばしい事か。
まだ、うまく素直に思えないのだけれど。
それでも少しずつ。少しずつでいいから。
皆と一緒に歩んでいけたらと思う。
この森の一員として。
この森で、春を祝い、夏を飾り、秋を彩り、冬を安らぐ。
生命の溢れる此処で、今日も私は生きていく。