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 アオイが孝弘の家に来てから、はや五年が過ぎていた。

 季節が巡る中で、孝弘はほとんど他人と関わることをしなかった。

 仕事を終えると自宅に戻り、アオイと取り留めのない会話をし、就寝する。そして朝になると、また一日を繰り返す。

 まるでループする映像のように、孝弘とアオイの日々は積み重ねられていく。

 二人は永遠の時を過ごしているのだろうか。

 終わらない毎日を繰り返すように、はたまた、その毎日を終わらせないように、変化を求めようともせずに、ただただ時を共にしていった。


 とある日のことである。

 孝弘が珍しく酒に酔って帰宅してきた。

 元来、彼は下戸であった。しかしどうやら、その日に限っては断り切れず、こうして千鳥足のまま玄関をくぐっていた。

 

「アオイ、ただいま……」


 それだけを言い残し、孝弘は乱れたスーツ姿のまま通路で崩れ落ちた。その声と物音を聞き、アオイは彼の元へと駆け寄る。


「孝弘さん、バイタルが乱れていますね……。飲めないお酒を飲むからです」


 手早く彼を介抱し、水を飲ませ、布団に休ませる。

 アオイは隣に座り、顔を赤くしうなされながら眠る孝弘の顔を眺めていた。

 その顔を見ていた彼女の思考に、一つの言葉が浮かび上がった。


 私は、人間……――。


「――――」


 ノイズが走る――。

 アオイは自身の行動を疑問に思いながらも、右手でそっと彼の髪に触れた。その感触を確かめるように、数度、上下に手を動かす。


「アオイ……」


 彼の寝言に、アオイは素早く手を引っ込めた。

 そして改めて、彼に触れた手を見つめた。見慣れたはずのその手は、どこか、違うもののように思えてしまう。

 その理由は、彼女にはわからなかった。


「……孝弘さん、お酒は、控えてください」


 それを誤魔化すように、彼女は孝弘に、改めて布団を着せるのであった。




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