5話
シュタンッ━━
音も置き去りにするかの如く素早く移動する。
「ヌト様……ドワーフ達から赤染石の力が見受けられません」
「何者かの手に赤染石が渡ったと言う事か?」
「わかりませんが、調査します!」
「待て、赤染石の力が無なら、ドワーフのダビデを捕らえられる、奴を連れてこい!」
「ハッ!!」
ピシュン━━
瞬間移動する音。
薄暗く顔までははっきり見えないが、
青い石の首飾りをしている……。
今日は疲れていたのか爆睡何も夢を見なかった。
よし脱獄するか、重い腰を持ち上げるかのように硬い、ベットから起き上がる。
この狭い留置所ともお別れだな。
他の留置所を見ようと顔を出してみると、めちゃくちゃ視線を感じる。
あぁ奴らか。
俺に負けて苦やしぃんだろうな。
留置所の狭い鉄骨の隙間から、めちゃくちゃな変顔をして煽ってやった!
「おい!新入り良い度胸じゃねーか!覚えておけよ!」
もうそんなのは良いんだよ。お前達は俺には勝てないんだよ……可哀想だ、俺は弱いものイジメをしたくはない。
脱獄するには取り敢えずこの留置所をぶっ壊す!
「ゼカ!」
「ジュドォーン!!」
扉を壊し留置所の外に出た。
警報が鳴り響く。
「脱獄だー!留置所102番 確か最近入ったアラって奴だな!」
「皆んな急げ!」
留置所の真ん中に立つ俺は、看守達が来ていることも気にせず、ゆっくりと留置所の中央に行き、雑魚共を圧倒した。
さぁ天井を突き破り、ひとっ飛びと行こう。
「ゲゼカ!!」
「ボコォォォンッ!!」
「ウユフ!」
これは浮遊する魔法。
「じゃあな雑魚共!」
俺って言葉悪いよな……。
力を最大限にし、俺は飛び去った。
「さてと、城に向かう前に城下町でも堪能するか!」
城下町に着くと、そこには人が沢山、屋台や、ゲームなどがあった。
現実世界で言うお祭りみたいな物だ。
「グゥゥッ〜……」
「腹減ったな、なんか食べ物でも食べるか」
適当に1番近くにある屋台に行こう。
しかし、どこも長蛇の列。
まぁここで良いか、そのお店は(サイクロプスの目玉焼き)これ美味いのか?この世界の食べ物はちょっと謎だが、試してみよう。
列に並んでいると、後ろからツンツンと突かれた。
「ん?誰だろう?」
振り返って見てみると、そこにはこの世界に来て、俺がセクハラみたいな事をした、あの美少女!いや、女の子であった。
やばい、めちゃくちゃ気まずいし、脱獄してきてるし。
「ねぇ、君ってば!私の事覚えてないの?」
「いや、覚えてるよ」
モテる男はこの時に謝っちゃうのだ。
「あの、この間はすまなかった」
「私もさぁ警察呼んじゃってごめんねっ」
いやまぁ良いとは言えないけど、警察呼ばれて実際捕まってるんだよな……。
「あぁ!あの時の事は無かったことにしよう、俺の名前はラアだ!よろしく!」
「ありがとぅ。私はテト!よろしくねっ」
いやーやっぱめっちゃ可愛いよなこの子。
「テトちゃんよろしく!そういえば、このサイクロプスの目玉焼きって美味しいの?」
「えっ?私?食べた事ないよ!」
おい!食べた事ないんかい!
「俺も食べた事ないんだよね、ここはひとまず俺が買うよ!」
「えー!ありがとう!そういえばさぁラアくんお家あるのー?」
え?お家だと!確かに今日どうしようか思ってたけども、これワンチャンあるか!?
「あぁ、お家ないけど、これから城の方に行こうかなって思っててさ、お家はないけど……!」
家は無いと2度言って強調することで、相手に泊めてもらう、これは心理戦!
「じゃあ私の家に来なよー!お城行った後でいいから私待ってるよ!」
いや、あの、ありがとうございます。変な意味じゃなくてね。
「ありがとう!凄く助かるよ。
お城の方の用事済ませたら泊まらせてもらうね!」
すると、俺の前列でサイクロプスの目玉焼きが売り切れになった。
「おいおい!どーゆうことだよ!」
凄い野次が飛び交う中、俺はお店を放っておけなかった。
「テトちゃん、ごめん急に用事ができたから、目玉焼きも売り切れになったし、先帰っててもらえる?」
女の子を危険な目に合わせるわけにはいかない。
「えーわかった、じゃあ先に帰ってるね、」
申し訳ない事をした、本当にごめん。
テトちゃんの姿が見えなくなった辺りで、俺は野次をしている奴らに言った。
「おい!お前ら、店に野次ばっか飛ばして、何が面白いんだ?」
「おーい!皆んな見ろよ!正義のヒーローごっこが始まったぞ!」
また笑い物にされるのか……。
「よし、お前ら良いだろう!俺がまとめて相手してやるよ!」
「グウド……エクスカリバー!!」
さぁ、かかってくるかこないか!
「いやぁ、俺達が悪かったよ。いきなり変な気分になってよ」
1人が言い出した。
「変な気分?そんな事言われても困るんだ、自分達がした事は事実なんだからちゃんと……」
その瞬間、
「え、斬られた?」
自分の胸を見てみると服から血が滲み出ている。
そう、ラアは斬られていた……。