3話
判決が下り。
もう人生は半分捨てた様なくらいな気持ち、翼を失った鳥の様に、ひそひそと自分の留置所までの道を歩いた。
刑務所とは初めてだが、とても息苦さを感じる。
留置所に新入りが入るとここまで見られるのだろうか数々の修羅場を超えてきたような輩共が、舐めた視線を送りつけてくる。
刑務所内では暴力は勿論のこと薬の売買や、金でのやり取りがめちゃくちゃ多い。
「看守を味方につけると良さそうだな!」
とりあえず片っ端から気に入らない奴を、看守に言いつけ刑期を延ばさせた。
これで俺は刑務所内では舐められないで済むだろう。
ある日自由時間の時それは起こった。
俺は1人で椅子に腰をかけて本を読んでいた。
すると「ざわざわ」と音がする。
「また喧嘩だろう」
血の気の多い奴らはこれだから嫌になる。
なにやらちょっと違う感じ……。
本を閉じて辺りを見回すと、屈強な奴らに囲まれていた。
それと同時に男達の隙間から小さいオジサン?が走って行くのが見えた。
「おーい!どこ見てやがる。こっち見ろよ!」
「ほらほら、こいつ俺らに囲まれてびびってるぜ!」
「こいつ!ションベンでも垂れてんじゃねーの?」
「ママでも恋しくなったか、えーんママァ!」
「ぐははぁ!それは傑作だぜ兄貴!」
すごい言われようだ。
こうなってしまったら仕方ない、って言っても俺には何も能力もない、ただの一般人だ。
「くそ!この世界いかれてやがる!」
この世界に来てからろくな事がない。
別世界に来てしまったら、普通に魔法が使えたりしないものか。
「おい餓鬼、俺らの仲間をどうやって始末した?」
「始末?」
「あぁ、君達が刑務所内での違反をしているから、看守に言いつけただけだ。俺は何もしていない。」
事実無根、とりあえずこれでいいだろう。
「おいおい!俺らをおちょくってんのか餓鬼!
どんな力か見せて見ろ!」
全く意味が分からない。
「力を見せろと言われても困る。
俺は本当に始末なんかしていない。」
「ふぅ、」なんとか静かになった。
ふと見上げると、怒り狂った表情をして、こちらを見降ろしている。
この時初めて顔を見た。
その瞬間全てがわかった。
「パワー型が6人、平均身長250cm、平均体重176kg
握力計りきれない為100以上、足の大きさ平均36.7cm
トロル見たいな顔付き、そして何よりも息の臭さが半端じゃない」
そう、俺には瞬間把握能力があった。
しかし、これを知れたからと言って、勝てる相手ではないのはわかる。
すると奴らから仕掛けて来のがわかった。
「グウド」と1人が言った。
「グウド?」
続いて5人も言い出した。
なんなんだグウドって……。
「バトルアックス!!」
俺は目を疑った……。
一瞬にして全員ヤバそうな斧を持っている。
「おい!ちょっと待ってくれ何かの誤解だ!」
くそ、ブレスケアでもあれば、いや、そんな事を言ってる場合じゃない。
「うおぉぉー!」
全員一斉にかかって来る。
「もうダメだ、またこんな状況か。ん?またって俺は、何を言っているんだ?」
奴らの斧が振り下ろされた瞬間、白い光に包まれた。
俺は目を瞑ったままそこに立っていた。
「なんなんだ、何が起こったんだ。」
そこには、トロルみたいな奴らが吹っ飛び倒れていた。
過労時で1人だけよろよろしながら立ち尽くしている。
まるで力尽きるまで泣き喚くセミのように。
この1人は這いつくばってやがる。
だが、これはチャンス!
俺は思いっきり走り込み渾身のパンチを繰り出した。
「え?硬い。痛ぁすぎる。」
俺の手が負けるほど強靭な顔面だった。
俺の一撃が効いたのか分からないが、立っていたやつも、なんとか倒れてくれた。
これで一安心、騒ぎを起こしてしまったが、バレないように早く戻ろう。
すると奥の方から手招きをしているオジサン?がいる。
さっき絡まれた時に隙間から見えた人だ。
「ばやぐじろぉ!看守が来るぞぉ!ごっちへ来い!」
言われるがままに俺は急足でその人の所まで行った。
「よぐ来たな。さぁ中に入れ」
そこには、下へ続く。
見た事がないほど古臭いエレベーターがあった……。
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