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バーバリアン

作者: 山陰喉黒

奴は決まって夢の中でできて、私にこう告げるのだ「解放せよ」。


夢のパターンはいつも決まっている。

目を覚ますと私は真っ白な虚無空間で一人棒立ち状態になっている。動くことはできず、声をあげることもできない。ただそこに立っているだけなのだ。

しばらくすると虚無空間に時空の狭間のような切れ目が生じ、奴が現れるのだ。

全身毛むくじゃらで見た目は完全に猿人だ。しかし奴は見た目とは裏腹にとても丁寧な口調でこう語りかけるのだ。

「貴方の中に眠る”野性”を開放するのです。そうすると、楽になれるでしょう」

私はその意味が全く分からなかった。

こいつは私を奴の仲間か何かと勘違いしているのだろうか。

そう考えていると奴はさらにこう続ける。

「解放せよ」

そう述べると世界は暗転し、私は現実世界に戻される。


しばらく夢の余韻に浸っていると微かに不快な音が聞こえてきた。

聞き覚えのある音だった。


ー強くなれる理由を知った、そうか、それは良いことだ


聞こえてくる歌詞を頭の中で反復しながら少しずつ別の感情も渦巻いていく。


感情がピークに達したところで頭の中にある言葉が横切る


「解放せよ」


私は”奴”の正体をやっと理解した。


”奴”は私の心に巣ぐうバーバリアンだったのだ。


布団から跳ね起き、クローゼットの中のタンスをあける。

一見普通のタンスに見えるが引き戸の下に別に収納スペースがあるのだ。


その収納スペースには


一丁の、拳銃。


私は迷うことなくその拳銃を持ち部屋を飛び出る。

音の方角に向かうにつれ、音は大きくなる。


ー数か月、私は耐えてきた。


音の発信源となる部屋の前までたどり着くと、私は扉にもう突進しながらこう叫ぶのだ。


「開けろ!!!デトロイト警察だ!!!」


その音は止まり、扉の方角に足音が近付くのを感じる。私は銃口を向ける。あとは引きがねを引くだけ。


扉が開き、中の住民が何か発しながらこちらを見る


「うっせぇな」


私は小声でこう告げると、辺りには銃声が響いた。





気が付くと私はまた虚無空間にいた。

しかし今回の夢はいつもと違い、私が目を覚ますと奴はすでに姿を現していた。

「これでようやく楽になれますね」

奴は私と目が合うなりそう告げる。

私も何か言おうとするが、やはり動くことも声を出すこともできない。

「私も少し休みます」

奴は微笑みながら告げ、時空の狭間に消えていった。

そして世界は暗転した。


気が付くと現実世界に戻されていた。

夢の余韻に浸っていると微かな眠気に襲われる。


鉄格子から差し掛かる太陽の温かい光を感じながら、


私はもう一度瞼を閉じて静かに眠りに落ちた。

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