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天国かと思った


私はどうやら死んでしまったみたいだ。やりたい事は特になかったが全然親孝行できずに死んでしまった事だけが心残りである。真っ白な光から徐々に目が慣れていき瞬きをしている間に景色が変わった。やっぱり死んでしまったようだ。


体育館くらいはしそうな広い空間がこれでもかってくらい黄金で飾られていた。真ん中には少し段差があってその上にまた黄金で出来たみたいにキラキラ輝く王座がいて、そこにはいかにも王様と言わんばかりの服装をした金髪のお爺さんが目を大きく見開いて座っている。そしてちょうど私を中心にぐるっと円を描くようにしてこれまた随分と古いヨーロッパの貴族のような衣装を身に纏っている人たちがずらりと立っている。


頑張って生きたご褒美に天国の王宮で住めるようになったのかな。いやいやいや、いくらなんでも急すぎるでしょ。母さんに会いたい。怖い何ここ。あまりにも見覚えのない光景に気付いたら涙目でプルプル震えながら回りを眺めていた。


「や、やった!成功です。我が君、新世界の人を召喚する事に成功しました。」

「おおっ、…いや、待て。なんだ、髪も瞳も真っ黒ではないか。約束と違うぞ。」


一番近いところに立っていた魔法使いみたいなローブを纏っている人が大声で喜びの声を上げる。つまりあれだ。これ異世界転移ってやつだ。私に何かこの政界にはない特別な力があって皆を救って英雄になるやつだ。漫画みたいな展開でこぼれそうだった涙があっという間に消えてしまった。


しかしどうやら王様の反応が悪すぎる。黒い髪と瞳が気に入らないらしい。これから世界を救ってやる英雄様に向けてその態度はちょっと失礼なんじゃない?勝手に召喚したのはそっちでしょ。


「いきなり失礼ね!私の世界ではこれが当たり前なの!」

「なんだと?…それじゃ意味がないじゃないか。」


黒髪黒目なんて私の国じゃ当たり前のことだけど地球にはそうじゃない人もたくさんいる。でも私みたいな人をまた召喚しないようにわざとそう言い放った。そしたら王は意味がない、そう言いながら首を横に振っては席から立ち上がる。どういう事なんだろう。王が席から立ち上がった瞬間、周りの空気が一気に冷めていくのを感じた。


「新世界人でもダメなのか。ならもういい。」

「もういいって…私はもう帰れるの?」

「…誰かそこの娘を白の外に捨ててこい。隣にいる偽魔法使いも一緒にだ。」


捨てて来いって、聞き間違いか。いやいやいや、いきなり召喚しておいて帰すどころか身一つで知らない街に放り出す気!?気付いたら左右から現れたガタイのいい兵士たちが私の両腕をつかんで持ち上げていた。ショックと恐怖のあまりに抵抗も出来ない。


「王宮魔導士にするという話しは…我が君!我が君!!」

「え、ちょ、待って!捨てるって?!私、家に帰してよ!!」


私の後ろで同じく王に向けて叫んでいる声がする。その声でやっと気を取り戻し多私も後ろを振り向きながら叫んでみるが私を捕まえている兵士はそのまませっせと歩き出した。





*


あっという間に城の裏門みたいなところまで連れてこられては荷物のように地面に叩きつけられる。着地処が悪かったか顔面で盛大にスライディングしてしまい口の中まで砂が入ってきた。いくら何でも女性を顔面から叩きつけるなんてありえないでしょ。


「悪く思うなよ。王も俺達も期待が大きかった分、怒りでどうにかなりそうなくらいだ。」

「そんな!私が何したっていうのよ!…っ、痛っ」


訳も分からないまま怒りを向けられて大声で叫んでいたら唇に鋭い痛みが走る。そっと触ってみると血がにじんでくる。唇も切ったのね。約10分もしない間にとんでもないことになってしまった驚きでぼーっと王宮の裏門が閉まるのを見つめる。


「全部お前のせいだ!僕の魔法陣は完璧だったはずだ!なのに何で君が出てくる?!」

「……はあ?」


隣の方で若い男の子の声が聞こえる。裏門を見つめながらぼーっとしていた私は声のする方へ顔を向けた。さっき見た魔法使いはどうやらこの子だったようだ。あまりにも驚いていて子供か大人かも分かってなかったらしい。ぼろぼろのローブを頭まで被っている12歳くらいの男の子。ローブの隙間から抹茶のような緑の髪が見える。兵士に連れてこられる間に殴られたのかこっちも砂だらけで唇から血が出ている。


「ちゃんと白い髪を持った人を探して召喚したはずだ。なのに何でお前がここにいる!魔法陣に飛び込んだんだろう。何のために俺の邪魔をする。」

「…な、なによ!私が何したっていうのよ!そっちこそ子供のくせに召喚魔法みたいなどこからどう見ても難しそうな魔法なんか使うから失敗して私が来ちゃったんじゃないの!」

「だから失敗してないって!それと子供じゃない!来年になれば成人だ!」


顔がくっつくぐらい向かい合って怒鳴り合い始めた。誰のせいでここに捨てられてると思ってるんだよ。どこからどう見ても170センチの私より30センチは小さい子供のくせに成人だのなんだの言いながら怒ってくるので腹も立つしだんだん悲しくなってきた。王宮の裏門には私たち以外には誰もいなくていくら怒鳴り合ってても王宮の人は誰も来てくれない。


「そんなことはどうでもいいわよ!いいから早く私を元の世界に帰してよ!」

「……それは、できない。」

「はあ?!何でよ!私は失敗なんでしょ?用がないなら責任もって帰して!」

「だから!できないって言っただろう。そんな高度な魔法、王家の援助も無しに何度もできるわけないだろうが。」

「えっ、じゃ私は…」


「さっき聞いてなかったのかよ。王はお前を新世界に戻そうなんて思ってない。そんな時間も金ももったいないからだ。お前のいた世界とまた繋げたところでどうせお前みたいな黒髪黒目だけなんだろう?無駄なところに時間を使っている余裕なんて無いんだよ、今の王国には。」

日本語にしかない言葉と日本語にはない文法で頭の中がゴチャゴチャして難しいです。でも書いていると楽しいです。

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