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『月に嗤う』1

ーー江戸時代ーー


寺の境内で小さい子が数人遊んでいる。

賽銭箱の上に座った十代半ばと思われる二人が、時おり歓声をあげる子供達を眺めている。


「暇だぞ、(じん)


肩まで髪を伸ばしている少女と思われる方が呟く。

隣に座る少年が、おずおずと少女を見ながらぼそりと言った。


「だからあいつらと町まで行ってれば良かったのに。俺はここでぼーっとしてる方が好きだから。(よし)は今からでも行ってこいよ」


辰と呼ばれた少女は、着物だということも気にせず賽銭箱から飛び降り、刃にくるりと振り向いた。


「何? 私にあいつらの相手をしろって? それが嫌だからこうして寺に残ってるんだぞ」


刃は特に何の反応も示さず、遊ぶ子供達を見ている。刃の様子を見ていた辰が独り言のように言った。


「それに……」


辰の視線はいつの間にか刃を通り越し、刃の背後にある暗闇ーその端にあるご神体に向けられていた。


「それに、今日は満月だから」


「……」


刃は何も言わなかった。だがそれは、無言の肯定を表していた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


昼下がり。もう少しで、遊ぶ子供達の影が長くなり始める曖昧な時間。


寺は、疎外感を感じさせる程の子供達の騒ぎようと、うって変わって神妙な空気を作っている二人を包括していた。


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