6話:シリアルコードはあちらです
四足の異形が扉を破壊する。俺はソレを追いかける。
だんだんと縮まってきた距離に近づき、その足を止めようとするが意にかいさないように動きを止めない。
目の前で逃げている子供の1人が何もないところでつんのめり転ぶ。それを見逃すはずはなく、動きを止めその束ねた繊維を根っこのように鋭くさせる。
心感じるままに瞬時に両手剣で手へ重みをのせ、その足へ振り下ろす。
切断
突然の出来事かのように異形は身体を震わせ、叫び声のように体から水蒸気を上げ、脇目も振らず暴れ出す。
両手剣を装備内に押し込み、すぐに子供を立たせて部屋の奥へ急ぐ。
異形はその痛みを目先の獲物へ向ける。
体の中心核のような球体は床に転がり、切られた足を含む4本の足を伸長させ、まるで蛇のような鋭く尖った螺旋を描き突出する。
手を離し、その手で子供の背中を部屋に押し込む。
扉の中から両手剣を引き抜くように取り出す。
1本目を振り向きながら切断!
半開きのドアを足で閉じろ!
回転する体ごと捻らせ2本目!
視界に入るもう1本も切だっ……ん!?
身体に伝わる衝撃。死角から迫るもう1本が体を押し込んでいた。その勢いのまま切れ込みを入れた1本を切断し、扉を突き抜け部屋の中で自分の体が転がる。
転がる先で何かにぶつかり、呻きと悲鳴で制止される。
子供がいた。
先ほど逃げ込んだ子供以外にも。
蔓が直線的に伸びる。
両手剣の腹を斜めに立てて逸らし、天井に穴が空く。それを切断。さらに伸びてきた蔓を受け流し切る。
1本は2本、2本は3本に、そして一拍置いて4本が迫る時、
蔓の伸びが止まる。
伸長させる限界?そんなことはどうでもいい。蔓が引っ込んでいく。蔓が伸びる元である種のような中心核まで、部屋の外を抜け急ぐように駆ける。
蔓が肥大していた。
エネルギーを溜めるように、推進力をあげるように、苛立ちも交えたかのように中心核から脈立ち打つナニカを受け取り、蔓が凝縮されている。
矛先は自分というより、先ほどの部屋の子供たちの背の高さぐらい。今までの蔓の向かう先もそうなのだ。なぜか俺を存在していないかのように蔓が振るわれる。近づき考える中、
蔓が突出する。
剣は斜めに振り抜いていた。
刃から斜めに別れていく蔓はそれでもその推進力は止めず、剣の腹にぶつかる側は天井へ逸れていき貫かれた天井の木材が乾燥するように萎む、片割れは自分に。
腹からくの字に吹き飛ぶ。
部屋の壁を突き破り、再度悲鳴が響く。
ふらつく体を立たせ、埃が舞う視界の先には、
すっかり萎んだナニカが転がっていた。今ので最後の力を振り絞ったのだろうか。すっかり乾燥させたようにしわしわになっている。剣を両手で持ち上げ楔を打つように穿つ。
これでおわりだろうか、それとも……たった数秒の沈黙がとても重く感じる。他の場所でもこの化け物が溢れているのだろうか。
ギィと床が軋む音、振り向けば子供たち。
「もう……だいじょうぶなの?」
「……多分」
ようやく吐き出せた言葉は2文字、先ほどのような態度が自分の心に尾を引いている。
「……っ。お兄ちゃん、あの化け物と戦ってなんでそんなに汚れてないの?」
声が震えている。その目は現実を受け入れられないように恐怖に慄いている。その雰囲気は、拒絶の反応。確かに吹き飛ばされたり貫かれたりするほどの衝撃を受けたが傷がない。精霊の噛みつきはあれほど痛かったのに。
あれ、おかしいな。顔を伝う汗が止まらねぇや。
「待って!さっきはごめんなさい!ありが……」
最後の言葉を聞き終える前に自分の呼吸音でかき消される。扉を抜ける。通りを抜ける。走る。走る。はしる。はしる。
大通りに辿り着いて、ため息がつけなかった。
異形の生き物が何かを探すように数体いた。そして見つけたエネルギーになるもの、料理や動物らしき生物もどこかへ運ばれていく。いったいどこへ運ぶというのか。
様子を見ようとして足下の小石を蹴ってしまう。
伸長
小石の周りに蔓が壁のように集まる。そして自分にも触れもうダメかと思ったとき、蔓は引っこんでいく。わけが分からない。
恐る恐る足を踏み出す。彼らの前をゆっくり歩く。足下で物体が鳴る度に幾度か蔓が伸びるが、彼らは俺に気づかない。
さっきもそうだった。あの蔓は子供たちを狙っていた。もしかして彼らは俺を認識できていないのか?
この気持ちはなんだろう、恐怖と同居した好奇心が自分を行動に移せ!って言ってるようで
この気持ちはなんだろう、迷ってしまったならばガムシャラにやって確かめればいい!と身も蓋もないけれどかっくいい言葉に動かされるようで
大通りを全速力で走る!
石をおもっきり投げる!
終いには異形の目の前で剣を構える。
そして呼吸を整え、中心核を切り裂く。溢れる蒸気音。暴れ出す異形。何事かと他の異形が困惑の色を示すが、すぐに自分の任務に戻る。
本当に気づかれていないのだ。そこまで知能のように高い生物ではないのかもしれない。簡単な命令しか行わないのだろうか。逆手に取れば、その命令を下したナニカはいる。
あの異形の種は落ちてきた。そしてあの異形が運ぶ先はこの街の中央。原因の先は天啓樹。
知らない場所で何も関わりがない親しくもない人たちに何も恩もクソも感じてないし、子供から向けられた拒絶に対するむしゃくしゃをぶつけたいわけでもない。
目標
・このクソッタレな世界の運営者を殴る。
現状の整理
・異形・・・・・・街の住人は見える。俺を認識しない。
・異形の攻撃・・・・・・衝撃のみ(ゴリゴン同様)
・精霊・・・・・・クソ。痛い。
・子供・・・・・・精霊を神聖視。やっぱり精霊が全部わるい。
目標
・精霊も殴る
……よし!目標が決まった!道は開かれた!責任は全部精霊にあるはずだ!この街の平和だって多分精霊が守ってんだろ(適当)!だったらこの被害は精霊のせいに違いない(妄想)!死のにおいってなんだ!臭いのか!これも精霊のせいだ(錯乱)!よし運営!精霊を殴る方法くれたら許してやんよ!なーはっはつはっは!目の前は真っ白に明るい未来が待ってるぜ!
ん?どうした?蔓?お前俺のこと認識してくれるわけ?いや〜慣れって怖いッスね!もう1人ぼっちなんてほとんど怖くないっすよ!ね?
呼……来……魂……食……呼……来……魂……食……呼……来……魂……食……呼……来……魂……食……呼……来……魂……食……呼……来……魂……食……呼……来……魂……食……呼……来……魂……食……?
ああああああああぁぁぁ!スクランブルダッシュ!
お、蔓が精霊と戦ってる!足止めは任せたぜ!そんでお前らの大将殺ってくるから安心して白い文字群動物と遊んででくれ!
お!店の中に冷蔵庫から食べ物発見!なかなか香ばしいにおいで何かの乾燥肉だと思う!
てめぇら!空飛ぶボンレスハムを見たことあるか?
よしきた!蔓が勢い良く近づいてくる!いいね!その伸びを待ってたよ!だがこのハム、自分から近づくんだぜ!
つる、ハム、つる、ハム、つる、差し込め!剣!
そして俺は右手に剣、左手に肉を掲げながら空へ出荷されるのだった。
右手と左手どっちに剣でしたっけ?(遊〇王)
効果発動したら逆になるんでどっちでもいいですよね?(懇願)