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Alive Applicants  作者: 澱味 佑尭
プロローグ
4/28

4話:人の物を取ったらどろぼー

あーだこーだ言う前に、現在目の前の行き倒れ(瀕死体)をどうにかしないといけない。一体誰がこんな酷いことをしたんだろうか(棒)縄で身動き出来ない状態にして、あまつさえ空高くあげる行為、焦げ臭さはさておき、自分のベッドにはのせたくないのでどうしたものか。


「おっさん!妙案浮かばない?」

【両手剣:おっさんではない!却下】

【旅装束:……クローゼットの中で放置でよいと思われます。】

「じぃちゃん急にその態度何!っていうか『癒し手』って何!」

【旅装束:現在このスクリーンは使われておりません】

【両手剣:現在このスクリーンは心を閉ざしています】

「めんどくさ!」


【旅装束:……むかし、大気中から産まれた寓産物がおった。ソレは自分とは何者なのか、何のために生まれたか、その理由すら分からずに彷徨い続けた。】


「突然何っ!」


【両手剣:探し求めた先に、生命は宿っていなかった。ただただ岩と砂しかない風無き惑星。ソレが動けば大気が少し動き、砂が岩の隙間を箒ではくように運ばれる。ソレは、そのほんの少しのさざめきですら自分に欠如した喪失感を満たす、体の奥深くから湧き上がるナニカに気づいた。】


【旅装束:ソレは突然地面から掬いとった砂粒を両手で握りしめ、その情動を与えるように念じ始め、いつしかその集合体から虹色に光る粒のみが手の中に収まっていた。】


【両手剣:ソレはその光る粒を自分だけの宝物のようにじっくりと見つめ、今度はその粒一つ一つを自分のお気に入りの場所へ保管し始めた。】


【旅装束:ソレが気に入っていた場所は特別他の場所より熱く、その粒はみるみる溶けていった。そうして溶かした液体を泥団子のように捏ね、ソレは地表を転がし遊んだ。】


【両手剣:このとき遊ぶ時に使われなかった液体は一際大きな団子に捏ねられ、忘れられたように放置され、徐々に温度を下げ続け大きな硝子玉になった。】


【旅装束:その硝子玉に光が差し込み、7色に分裂した。その光が当たるところに新しい生命が生まれ、後に貝殻の七光りと言われ、色は感情を表し、現代の7種族となる。】


【両手剣:原初の七光りは共に生まれたこともあり、血を分けた兄弟のように仲が良かった。その和気藹々とした空間にソレは欠如した喪失感を埋めるように惹かれた。】


【旅装束:しかし、七光りにとってみればソレは生みの親、生まれた順番だろうか、創る側と創られる側なのだろうか、ソレは七光り同士のように上手く付き合うことが出来なかった。】


【両手剣:七光りは考え、間違えた。自分たちが駄目なら他ならば良いだろうと。七光りは自分の色でそれぞれの子孫を創った。そして自分の力を最も強く受け継いだ者を代表者として『○○の手』とし、ソレを喜ばせようとした。】


【両手剣:ソレは殊更自分の中から何かを失い、何かが生まれた。そしてソレはその何かが周りの七光りの子孫に悪影響を及ぼすことに気づいた。】


【旅装束:ソレが何かを失うほどその悪影響は増していき、いつしかその七光りの子孫はソレに敵対するようになった。ソレは耐えきれず姿を消して、見えなくなった。】


【両手剣:ソレが姿を消して世界は安定したかに見えた。それは大きな間違いだった。世界は徐々に淡青色の煙に包まれ始めた。】


【旅装束:その煙は有毒であり、雷によって霧散することは分かったが、雷が起こした場所では呼吸困難になることも分かってきた。純度の高い気体は時に毒になる。】


【両手剣:虫のいい話だが、そこで各七光りの内の代表者を集め、ソレにもう一度世界に戻って来て欲しいと頼んだ。ソレはすぐに首を縦に振らなかったが、しばらくして首を縦に振った。】


【旅装束:ソレの協力もあり世界から徐々に淡緑色の煙が消え、つかの間の平和が訪れた。めでたしめでたしという訳じゃな。】

「それが『癒し手』とどう関わるのさ?」


『ゴンゴンゴン』

「いいとこで!っはい!なんでしょうか!」


「姫様。今夜も祭事を執り行います故、正装で祭壇までお越し下さい。」

「はい分かりました。後ほど伺わせていただきます。」

「では失礼しました。」


「最近ずっと祭事ばっかりで気が持ちそうになかったけどいい気分転換になったよ。作り話にしては意味不明だけどね!今日のお勤めが終わったらまた今度続きを教えてね。それと、もし必要ならそのクローゼットに入ってる仮面を使うといいわ!宵宮で手に入れたものだからまた手に入れるからさ。」


片手を壁に当て、壁から木目が伸びる。その粘土のように曲がる木材をドレスのように仕立て、壁から切り離し、体に纏わせるようにして着飾る。


「じゃね!」


扉が開き、絹のような木目の入った薄い衣が翻り、今日の1日を終えるようにゆっくりと扉が閉まる。


遠くから生活音が聞こえるほど長閑な時が過ぎていく。その静寂のクローゼットの中で、人形のように果てた男の装備から会話。


【両手剣:じぃさん。月が見えねぇなら、もうちっとばかし干渉出来んじァねえか?】

【旅装束:そうだな。幸いここは地下のようなもの。今からこやつの夢に向かう。準備は良いな?】


透明なガラス板が男の胸へと吸い込まれる。




ピピ……


ピピピピ……


ピピピピピピピピピピピピピピ!


カチッ!


バサッ


ギギィ……


ギィ……ギィ……ギィ……ギィ……


カチッ ザ〜パチャパチャ カチッ


ギィ…ギィ…ギィ…ギィ……


今日の朝飯は……なんだ日曜日か。昼飯昼飯までこりゃ飲まず食わずなんだろな(いつものこと)


パソコンを開き、キーボードをカチャカチッと軽快に叩く。検索ワードは「明晰夢_」今日の夢はゲームの中で活動したかのようにとても鮮明で、その土地に生えていた苔の匂いというか、森の土台である豊かな湿った土の匂いまではっきり覚えている。


明晰夢……夢の中で思い通りの行動ができる、かぁ。そこまで思い通りではなかった気がする。それでも地面をあのように滑るのは夢だったから可能だと思う。


次の検索ワードは「異世界_夢_」「空を飛ぶ_夢_」……抑圧からの自由……将来への不安……「夢_ゴリラ_」……あのゴリラ一部ドラゴン……まぁいいか……ろくなこと書いてねぇーな……白かったらいいのか?……これから悪いことに巻き込まれる予兆て……まぁ最後は買ったからいいだろう(適当)


よし、調べることもおわったし宿題でもするか……しかしここで手を伸ばしたくなくなるのは俺だけだろうか、勉強しなければならないと思いながら行動があまのじゃく。


ふと、パソコンのスクリーンの隅に新しいタブが点滅しているのを見つける。なんだこれ。放置してもいいが認識すると気にしてしまう。


マウスを動かし2度クリック。読み込みに少し時間がかかっている。読み込み終わったか……?


『ファイル__01:701KB』

『ファイル__02:702KB』

『無題のドキュメント』


少しの好奇心でファイルを開く。


読み込まれた『ファイル__01』には、教室を魚眼レンズで撮った、というような画像だ。黒板に文字を書き込む先生、グースカ寝てるヤツ、真面目に授業を受けてるヤツ、知ってる顔は誰もいない。


『ファイル__02』は……真っ暗?少し光が差し込んでいるようにも見えるがそれでも真っ暗だ。誤ってカメラを起動させて自分の指を撮ってしまったようなそんな画像。


家族の誰もパソコンにイタズラなんてしないだろうし、少し気味の悪い2つのファイル。その下の『無題のドキュメント』を開く。




【旅装束:起きろ】




……っは!?ここはどこ!?って痛!?


クローゼットの中から慌ただしいように肩や膝を床にぶつけるように転がり落ちる。誰もいない開いた窓から日の出のような光が差し込み、瞼を刺すようで目を細める。


先ほど着ていた寝巻きとは思えない衣服に身を包んでいることにようやく頭が追いつき、ゲームの中で寝落ちしてしまったことに気づく。


装備の画面を開き、その横に並ぶ字面を上からなぞる。『名前』『装備』『称号』『持ち物』『友情カード』『記録』『__』『オプション』


『__』に触れても何も起こらない。『オプション』は自分のステータスバーの可視化の切り替え。他の項目はない。


現状、ログアウトすることが出来ない。


ログアウト出来ないことが問題ではない。ゲームを起動させてから何時間たったかが問題である。


ゲームの中に閉じ込められる、という事件は昔もあった。だが現在はその犯罪に対抗する手段が取られており、色々な審査を潜り抜けた(よくわかってない)正式にゲームとしてリリースすることができる。この検査を行う仕事は物凄いお金が儲かるらしいが……資格を得るためには幼少期までという制限が課されている。その後にとる資格を幾つか取った上でようやくその仕事の資格試験を受けれる。


……とまぁそんな世の中で、さらにAIが人間の知覚できる速さを超えてパトロールしているため、ゲーム拉致は限りなく難しいわけでございまして、


だからこれほど長くログアウトできないということに対してとても困惑してるんですよね。って誰に弁明してんだか。


『記録』に触れる。


【ソレと色のはなし】


おとぎ話だろうか。その冒頭部分が埋まっている。残りは「・・・・・・」という風に保留のままである。


つかの間の平和って不穏すぎるんですけど……


ふと、風が頬を撫でる。窓が開いていた。近づいてよく見れば出店の準備を始めている。後ろを振り向けば、床に転がる楓の葉っぱ仮面が陽光を反射している。


なんとなく謝るような気持ちで、自分の困惑を押し込むように仮面を頭に被せ、窓から出店準備の場所へ屋根のような太い枝を伝って近づく。

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