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Alive Applicants  作者: 澱味 佑尭
ここから1章でええんか?
18/28

ふんぬっは!

ッ戻ってっ、きたぁ!


【ドラゴンッビームッ】は迫る。


意識の暗転と浮上、この僅かな間に思考の空白が生まれてしまった。砂上において踏み込んだ反発は思いのほか弱く、ビームを避けられない。


ダメージは、ない。


しかし話の中では、ドラビは命の変成魔法とされている。見た目には変化がないからと言って、油断できない。見掛け倒しとはならないはず。


それでも踏み込まなければ戦えない。


【Accepted:『想剣』の発動に成功。】

【『想剣:破砕の剣』】

【Connected】

【__】との親和性が高まります。


脳内に電子音が鳴るが今はどうだっていい。

狙いはやつじゃねぇ、砂だ!!


「どういうことなのだ!?」


煙のように巻き上がり、視界を阻害する。

今の声でだいたいの位置を確認。


砂塵の隙間ににわかの光、闇雲に打つ気か!?

どうやらチャージに時間がかかるようだ、といいつつ打撃を与えるにはちと時間が遅い。なら、


命中率は下がっとけッ!!


地面を抉るように、振り上げる。


「何故だ!?」


うるせぇ、【水運操作】で足元を滑りやすくし、転ばせてチェックメイト。


「……何故お前の経験値が入ってこない?その能力についての話を見聞きしただろう。それも使用したのは2種類の能力。どちらか一つでも私の頭の中に入ってきてもいいだろう!?」


「知るかぁってんだッ!!」


だぁっくそ、足がジャリジャリする。どっかの隙間から入り込んだのか、余計にイラつく。あぁそうとも、イラついてるとも。


「お前らはどうしてそう訳知り顔で押し進めやがる!!こちとら、なんにもわかっちゃいないんだ。説明をしやがれってんだ!!」


「私は試練の終わりを信じない。試練などという言葉のまやかし、これ迄にも数多の挑戦者が訪れた筈である。しかし依然として、我々は試練に挑まされ続ける。試練の果ての解明、それは未だに到達者が突破できていないことの表れではないのか!?お前はどうしてこの先に進めようと言うのだ!?馬鹿らしいだろう!?」


「知るかっ!」


言葉の止みそうにない顔に、めいいっぱい振りかぶる。テメェの知ってることを知りたいから前に進む。今はそんだけでいい。


くたばってるやつを置いてまっすぐに歩く。


まっすぐに。


意識の途絶える前に聞いた言葉。

今はそんだけでいい。


足を進めていくと、黒い行列が見えてきた。

アリの行列。


そんなふうに見えるぐらい小粒だったそれは、近づくにつれ、どうも人型であるようだった。


初めに会ったヤツの話を思い出す。

自分を失った人は石像になるという。

本当なのだろうか。


触ってみると、生暖かい。

少し、気持ち悪い。

まるで兵馬俑を見てるかのようだ。


どの石像も同じではない。いない人と肩組みしてるような者、手を繋いでるような者、うずくまる者、空を仰ぐ者、どれもこれも1人の石像。


目が合う。


瞬きを返される。


……生きてね?


「さらに動くぞ?」


話しかけてくんな!?


「勝手に語らせてもらうぜ。こいつらはよ、目印さ。み〜んな一方向に向いてるだろう。それが試練の終わる先。まぁ、助言を聞かずにあっちこっち、み〜んな行っちまうけどな。」


おかしい。


「先達の知恵ってもんがあるだろうに、み〜んな話を聞きやしねぇ。こちとら期待して待ってるってのによう。」


全ての者が皆一様に苦痛の表情を浮かべている。


「何か聞きたいことはないか?」


構えを取る。


「……いい質問だ。」


【警戒するのは本能か】


「はたまた理性が働いてるのか?」


【見定めよう】


「見定めてもらおう。」


【孤独に抗う術を持つのなら】


「個としての意志があるのならば、」


「【証明せよ】」


【『ソレの試練』が問われます。】

【応えて下さい/cast your spell】


唐突すぎんだろうよ!?


『ソレの試練』ってことは、薄気味悪い爺さんと会った時に進行したやつだろう。どうしてここで試練が始まるのか。


そもそもだ、この真っ暗な空の世界になってから、棒と旅装束のジジイらが一切話さない。言わば旅の補助の役割がいない。


なんてことも考えられないくらい切迫してる。


攻撃が激しいという訳では無い。


石像が動く。


一体じゃない。


先程会話していたヤツをオリジナルとすれば、周りの模造品達も一斉に動き出したんだ。


オリジナルは嘲笑うかのように、こちらを見ながらゆっくりと離れて行く。


手が押し寄せる。


動きは緩慢としているが、集団で来られるとなれば追い詰められたような感覚に囚われてしまう。


待てよ……この石像が1列に同じ方向を向いていたのは、前の挑戦者が逃げ切った方向なんじゃないか?


いや、行列の奥の遠くから石像がやってきている。そして、全ての石像の速度はほとんど同じ。逃げ切るというのは違うだろう。


名も知らぬ人よ、すんません!!


振りかぶって、思いのほか吹っ飛ぶ。

この石像たちは軽いのかもしれない。


石像の中で余裕そうに身体を伸ばしているオリジナル、そこまで離れていない、いける……か?


一撃、押し倒す、


一撃、吹き飛ばす


一撃、蹴り飛ばす、


一撃、弾き飛ばす、


一撃、殴り倒す、


一撃、蹴り返す、


一撃、突き出す、


一撃、殴り飛ばす、


一撃を繰り返す


「始まりの試練は何を問うか、知っているか?」


声が鮮明に聞こえる。


「自分自身について、理解するんだ。」


オリジナルとの差は縮まらない。


「闘争がお前の本懐か?頑張っているところ申し訳ないが、無意味な事だ。この石像たちは生きるデク人形。こうして試練に挑む者に相対する役割をになってもらってる。こうしてお前が答えを出すまでの単なる時間稼ぎに過ぎない。なにせ、自分のことすら分からない壊れかけの魂、代わりにちったァ役にたってもらうってことだな。意志をもってねぇが、意識を持ってるんだから救えねぇけどな。ん、どうしたよ。文句あるか?」


オリジナルはこちらを向く。


「それにしたってお前も難儀な存在だよな。意志だけが先行して、意識がなっちゃいねぇ。歪で歪んだ記憶だけで動く人形。自分でも引っかかってることがあるんだろう?だんだん人としての感覚が強まっているってな。」


何が言いたい?


「記憶、それは経験値とも言うがな、見ただろう?物語の中で。人の言葉が、想いが形となって言霊となり魂が宿る瞬間を、その魂が生命としての輝きを生み出そうともがく愛らしい姿を。……お前がよ、作られた存在ってことをな。」


……


「驚くのも無理はねぇ、人に近づくってことは、今までにない感情が膨れ上がってくるもんだからな、でも安心しろよ。ここならゆっくり気持ちに整理できるぜ。誰かのために働くことができる。誰かが自分の役割を見出すための助けになれる。そうやっている間に、自分の感情に意味付けしていくことができるさ。体を預けて、楽になろうぜ。」


……何を独り歩きしている?


ぶっちゃけ心底どうでもいい。

どうでもいい!

どうでもいいったらありゃしねぇ。


指を指す。


作られたから、作り手の希望通りに動く人形にならなきゃいけない義務はねぇ。子供は親の道具か?違うね、どいつもこいつも自分勝手に生きるのさ。


そして、ここ大事。


俺、人に言われたことあんまり信じね〜んだぁ!


あくまでゲームの世界。

そういう世界観?

大いに結構。


なりきるのも、客観視するのも、人それぞれよ。

頭空っぽで生きるがモットー!!


第一目標:お前を殴り飛ばす


「勢いが増すか。サテと、痛いのはゴメンだね。さっさと手続き済ませてドロンさせて頂きちゃーん、ね。」


このおおおおぉ、クッソォォォォォ!!

待ちやがって下さい!


腹立つ、


言いたいことだけ言って去られるパターンが多くて腹が立つ。何か俺にも言わせろい!


「頭空っぽで生きる、実際考えてることは言葉に出さないんだな。さぁて、応えてもらったからには、出口を作らんとな。」


あと一体じゃい!!


「バイビー」


愉快そうな顔は歪む。


間に合った。


ふぅ……


ふざけた野郎だった。

なんともなしに拳を作る。


依然として動かない石像の列、その向こうは砂塵が濃くかかっている。見てわかるぐらい違和感の塊である。


向かう。


向かう道には無数の像。

同じような像。

止まってしまった 像。


砂に塗れた顔は何処か夢見て、

隣人はその砂を払い続ける。


先程のヤツとは違うようだ。


ふと、言葉が出てしまった。

貴方はどうして。


「昔ながらの友だからな。」


その人、目覚めるんですか。


「目覚めるさ。繋がりがあるからな。」


繋がり、ですか。


「ボウズも同じもんだろう。だから進めよ。」


同じ、ですか。


「やっぱ面倒見ちまうんだ。腐れ縁ってやつ。」


それ以上は話すつもりは無いらしい。

別れの挨拶、もう二度とは会わないだろう人。


彼らにも物語があるのだろう。


砂塵が濃く。


目も開けられない。


まっすぐに。


まっすぐ。


手を、繋がれる。


グイッと引っ張られる。


「まっすぐに……」


目に、光が刺す。


「ここからまっすぐにようやく砂遊魚の案内所があるから、いいのが売れる前に競るよ!というわけで、はいっ急ぐ!!」


エイリスの声。


『旅装束:人にぶつからんよう気をつけるでの』

『棒:この女、行動が読めない定期。』


役に立たん御二方。


一直線に走る。


まっすぐに、はヒントじゃなかった。


そんなときもある。


この先を知りたいから、いまを走る。


たとえ、自分が周りから見て明るいところからだけで作られていようとも、別にどうだっていい。


自分の姿が誰かにとっての光になっているなら、今の自分について考えなくたっていい。


走る。


【『ソレの試練』に応えました】

【名ばかりの試練は誰が為】

【神は救いを与えず、試練を与えず。】

【求める】



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