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Alive Applicants  作者: 澱味 佑尭
ここから1章でええんか?
14/28

太陽の日差し

砂漠越えというのだから砂一面で覆われたものを想像していた。しかし、目の前に広がっているのはどうだろう。ひび割れた大地。乾燥して草すら生えず、岩石が露出している。世の中の砂漠はアラビアン的な、こう、砂漠と言ったら、アラビアンな感じだと思っていたんですけどね、予想外である。


「まだ予定している砂漠越えの、さの字すら見えてきてないわ。これから蓋窓トンネル街に行くことは覚えてる?」


つれないですね。そうでしたよね。とても大きな岩がそびえるように扇状に広がっているのが見えますもんね。あれが蓋窓トンネル街なんでしょう。


それは置いといてね、この移動中に色々聞いておきたいことがありましてですね、聞かせていただこうと思っております。


「ちなみに出発宣言でなんでRTAなんて言葉、使ったんで?このゲーム、自分以外生きてるように見えるけど、全員ロールが完璧っていうか、雰囲気でこの人はNPCだなって、あの子供たちも姿は見えないけど、それは進行の上で必要というか、デバックが足りてなかったかもしれないというか、でもRTAってそんな言葉が出るなら、もしかして俺以外にも人がいるって期待しても、」


「……貴方の言葉を借りるなら、子供たちは新しい場所で新しいロールが与えられているだけ。それに、そうね、ゲームをしている体感時間は、貴方が危惧しているように非常に現実に近くなっていると思うけど、実際に流れている時間はとても短くなってる。だから今までご飯を食べていなくても平気なのだけれど、それとも不安?」


少しだけ、いや、思考の隅で引っかかっていたことだ。こんなにゲームに夢中になっていて、自分の身体がどうなっているのか疑問に思っていた。すでにゲームの中では数日経過している。知らない間に自分の体から切り離され、電子の波にさらわれてしまったような浮遊感に、じわりじわりと襲われていたんだ。


「現地に着いたらご飯ね。おなかに何か入れてるって錯覚するだけだけれど、まぁ、今まで通りの生活を取り戻すってのも、大事なことだと思うわ。となってもトンネル街で食べれる肉は、砂遊漁ぐらいだけどさぁ……下処理されてるから、口に入れることはできるでしょ。」


気を使われてしまった。でも、なんだかこそばゆい、というのだろうか、どこか、懐かしさを感じているというか。いや待て!?他の人については逸らされてる!?


「それと、他の人はいるわ。……間抜け顔。」


いるんかい。


開いた口がすぐに閉じられなかったけど、確かめたいことは確かめられた気がするのでよしとする。痛み、という現実に少し日和っていたのかもしれない。ゲームはゲームであるのだから。


身体が地面すれすれをなでるように進んでいる一方で、視界の端にちらちらと先程から映り込んでいる。しばらく気にしないでいたのだが、やはり気になる。


目を向ける。


うず巻?


色のついたとぎれとぎれの渦が、膨らんだり小さくなったり変化している。つむじ風が木の葉をぐるぐると回すように、少量の砂を巻き込んでぐるぐる回っている。人差し指を入れてみたい。誰もが1度は思ったことがあるのではないだろうか。流水をてのひらでせき止めるように、風の流れに指先を入れて変化させるというものだ。


童心に帰ろう。


ゆっくりと、

その微細な変化を楽しむために、

ゆっくりと人差し指を、


「さわるな!」


ぎょっとして荷台にいる癒し手ことエイリスを見上げる。


「あんたあんなに怖がってた精霊に触れるわけ!?」


本当に精霊か?文字の集合体のように渦巻き、唯一痛みを伴う攻撃をしてくる、個人的にヤバいグロテスクな存在。グロとこれが一緒なのか?現実感がぬぐえねぇ……


「場所が変われば生き物だってその土地に合わせて変化する。でも精霊の一番大きな特徴は脅威度としてその外見を変化させて周知する。まぁ、この世界の人には全く害はないから、いちいち気にするのはあなたぐらいなものね。指もくっつくし。」


やべぇよ。なにがやべぇって、普通の声色で指がもげることが当たり前なのがやべぇよ。この世界、実はやばいのでは……忠告は褒めて遣わす。


「身近なお二人さん。そろそろ発言してもいいのでは?」

『旅装束:』

『棒:』


ぐぬぬぬ。

「そもそも幽玄の者ってなんだよ。さすがに説明書ぐらいは欲しい。」


「  、  !?      !」

問い、に対して吐き出される答えは大きな空気。

答えている何かは聞こえない。


「貴方がこの世界に遺された残骸を見つければ済む話!貴方の世界は貴方が認識して初めて動き出す。だから漠然としてるだろうけど、この旅で自分の目的を見つけなさいな!」


これは言えるかい、とか聞こえたのは放っておこう。口パクでのサイレント芸人と思いきや突然の音量事故。ってか今の大事なことでしたよね!?


「はい前方に第1村人発見!」


話をそらすためのブラフかと思いきやそうでもない。行き倒れ。疑い深いって?このぐらいがちょうどよく感じてきた。体格は少年。一抹の風で吹き飛びそうなボロ切れ。胡麻和えにされたように体全身砂に塗れている。


「ってか、ブレーキどうすんだぁああ!」



人身事故処理中。



「いや〜ぁ、ありがとう!まさか脱水症状になるとは思わなくてねぇ〜。」


へいへい!どうして砂漠のど真ん中で熱中症にならないと思ったんで、このちびっ子少年!


『棒:徒歩圏内で村も見えねぇし、食い扶持減らしのために捨てられたか?』

『旅装束:ほぅ主でも見知らぬか?こやつらはサンドゴーレムだのぅ。見た目は童であるが魔物に分類され、これから向かう先ソルベーレイでは討伐対象に指定されておる。』


「どうしたの、さっきから黙りこんで?……わかった!兄さん達は見たこと砂漠外の人達、今ぼくに出会うほど迷っているんだろう。ぼく、この砂漠のことならなんでも……とまではいかないけど地理のことなら得意だよ!お姉さん、ぼくもこれから帰路でね、行先は同じだと思うんだ。最短ルートを示すから一緒に乗せてくれないかな?」


「はぁ、かわいくない。断れないこと分かっといて……けどまぁ、問題起こしたらわかってると思うけど、この一時はよろしく。」


「よろしくね!」


エイリスが珍しく長いため息を吐いてる。相手は俺より年下のように見えるが、以前の子供に接するような雰囲気ではなく、むしろ大人に接しているかのような態度……突然話しだした爺さんや、一体どういうことか説明してくれんか。


『旅装束:サンドゴーレムは砂を操るからの。ここで断っても、この砂漠のように砂が多い地域では「やぁまた会ったね!」って言われるのがオチでな。まぁ、近年のサンドゴーレムは魔物化しとるから、こうして知性をもつ者は珍しいんだがの。』


怒らせたらヤバいやつ認定させていただきます。

しっかし、サンドゴーレムなのに水が必要なのか?


『旅装束:湿った砂はくっつきやすいじゃろ。まず第1段階として水、次にとき卵のようにくっつける魔力が第2段階、そして記憶領域を司る砂漠の花が体内に第3段階。』


「お兄さんはこの辺に疎そうだし、なんとなく強者のオーラみたいなのはないけどさ、便乗しようと思ったわけだよ。よろしくね!」


『旅装束:昔、その花は永遠に朽ちぬ愛とされ狩りの対象にされての、サンドゴーレムは砂に生き、砂に消える。生きた証として一輪の花を遺す。では他の砂はいずこへ?彼らの追憶は砂と交わり、砂を通して後世に伝えてしまう。憎しみをな。』


「あぁ!よろしくなちびっ子!(かわいくないて……)」


『旅装束:今ではサンドゴーレムは憎しみを持って生まれる。この砂漠に彼らの砂がある限り、負の連鎖はなくならない。歩み寄ろうとした者達もいたがの。』


なんで重い話をされんだよ!?こういう話ってのは物語中盤ぐらいでやる話やろ!どんな顔して接すればいいかわからんだろがい!この爺最低っ!!


『旅装束:V』


ほんとに最低だな!!


「……なんでそんなに色んな顔をしてるのかな〜と思ってみたりするんだけどさ。雰囲気固いぞ〜!よし、ここはもう1回ド〜んとぶつかってみよう!」


「ご好意、ありがとうございます。貴方様の胸をお借りして貴重なご機会をいただき大変嬉しく存じます。」


「…えっとお姉さん、この子はけっこう面白い子なのかい?まぁいいや、移動方法なら任せてほしい。行先は、ソルベーレイで合ってるかい?」


遠回しにドン引きしてますの意思表示ありがとうございます。


「いいえ、その前の地点、蓋窓トンネル街ね。」


「トゥルビヨンか~。あんまりいい思い出ないけど、行先はもともと違うようだね。水のお礼もあるし、そうだね、しばらくソルベーレイで待ってるよ。じゃあね。」


風が吹き、不自然に砂が巻き上がる。反射的に目をつぶってしまい、再度開くと彼の姿はもう見えなくなっていた。後に残されたのは、ぶつかった時に広がった荷物が散乱しただけである。


まるで嵐のように消えていった。しかし最後に見せたあの大人びた笑みは一体なんだったのだろう。子どもではないことは確かだ……


とりあえず、荷物を整理しなければ始まらない。


ん、傘?


「文句ある?」


「いや、」

日陰、必要なんかな。


自分の肌を確認する。

見上げた太陽の日差しは強いのだろう。




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