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第18話 大胆なエッチと豪快な狩人様

 

 コワモテになりきれていないスキンヘッドことテールの案内で路地裏の奥も奥、常に暗い方に進んできたアーカムとテルマンティ。


「よし、ここだ。ここがチエカンのアジトだ」

「チエカン?」

「ん、あぁほらチエのヒツギ、だろ?」

「……あぁ」


 アーカムは若者風な略され方になんとなく緊張感の抜けていく感覚を得る。

 通の間じゃ闇の組織もキャッチーになってしまうようだ。


「それじゃ入ろ‼︎ 悪の組織をぶっ潰そうよ」

「コラコラ待て待て。テルマンティも行くのか?」


 アーカムはそう言ってやる気満々になっている桃髪を上から押さえつける。

 正直言って何故テルマンティが危険を冒してここまでついて来たのか理解できていなかったアーカムは、とりあえずノリで連れて来てしまっていただけなのだ。

 よくよく考えたら撫で撫でが通用するレベルのお子様の同行はいろいろとリスクが大きい。

 それにこんな可愛げのある小さい子を、悪魔の召喚を行なっているような危ない奴らの巣窟に連れていくべきではないのではないだろうか。

 アーカムは顎に手を当てて思案していた。


「もちろんだよ。私は凄い錬金術師、の弟子なのです。悪魔の召喚に使われてる触媒が何なのかは知りませんが、私ならきっとなんとか出来ると思うというわけなのです‼︎」


 少女は鼻を鳴らして自慢げにそう語った。

 しかし、薄い胸を張って腰に手を当て、指を立てるその姿は何とも愛くるしく、余計連れて行きたくない気持ちしかアーカムにはいだかせない。

 例え彼女が召喚の分野に強い錬金術の心得があるとしても、やはり小さい子には庇護欲というものが働いてしまうものなのだ。

 特に弟妹がいたり中学生くらいの同級生たちがいるアーカムは一層テルマンティの事を守ってやりたくなっていた。


「うーん、俺もその触媒魔術の授業は取ってたりするから、それなりに詳しいからなぁ〜。テルマンティの手伝ってくれる気持ちは嬉しいけどーー」

「専門とちょっとかじっただけの錬金術を一緒にしてはダメですよ、シバケンさん‼︎」

「うぅ、すみません……」


 アーカムは気弱になってつい謝ってしまう。

 彼としても魔術師の使う触媒の知識と、錬金術師の扱う触媒技術は全くと言っていいほど違うことを知っているからである。

 嘘の好きではないアーカムは、自分に出来ない事を出来るだなんてホラは吹きたくない人間なのだ。


「ん、随分と人が多いね」

「おっ?」


 桃髪の少女に錬金術のなんたるかを教授されそうになって、壁際に追い詰められていたアーカムの下へ、涼しげな抑揚のない声が届いた。

 アーカムはその声に万軍の味方を得た気持ちになると同時に、少女に追い詰められている事を知られたくない気持ちが働いた。

 無造作にテルマンティの身体を軽く押した。


「やぁブライド。なかなか早い到着だな」


 キメ顔を作って背後たたずむ艶やかな梅髪を持った美少女へ視線を向けるアーカム。

 つい今しがた自分より幾分も小さい少女に追い詰められていたとは、到底思えない自信に満ち溢れた表情だ。


「はわわわ‼︎ シバケンさん、そんな大胆なッ⁉︎」

「ぇ? ぁ……」


 が、そんな自信満々な表情は刹那の後に崩れ去り、1秒後には焦りの感情だけがその顔には表れていた。


 何も考えなくテルマンティの身体に触れた結果、アーカムが押してしまったのは少女の控えめな胸であったのだ。

 テルマンティはいきなり胸を触られたショックからか、顔を真っ赤にしローブの前を閉めるようにしてアーカムから距離を置く。

 アーカムは「無意識だからノーカン」と「うわぁ、触っちゃったぁ、ラッキー‼︎」の2つの感情に板挟みになっていた。

 だが、最終的には死んだ魚の目をしているエレナを見て、ノーカンの感情が上回ったようだ。


「シバケンさん、息をするように乙女の胸をチェックするなんてエッチ過ぎます‼︎」

「い、いやだなぁ、テルマンティこれは事故というものでだな」

「アーカム、小さい子が好きなのは知ってたけど、仕事中に手を出すとは思わなかった。失望」

「エレナ⁉︎ 違うよ⁉︎ ねぇねぇエレナ違うからねッ‼︎」


 焦り散らすアーカムは動揺しまくりながら、なんとかエレナとテルマンティの誤解を解こうと奮闘する。


「こりゃ豪快な狩人様だぜ」

「テメェは黙ってろ‼︎」

「ぁヒィッ‼︎ すみません‼︎」


 アーカムは場の空気に便乗して調子に乗ったハゲを威嚇して黙らせる。

 彼は男には厳しいのである。

 いや、女の子には弱いと言った方が正しいだろうか。


 かくして路地裏に揃った狩人2名と予備軍、そして控えめ少女の即席部隊は悪の組織のアジトへと突入していった。



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