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3・ロリコン趣味のオタクのとある日常

(2020.3.3)友人Bが抽選漏れで委託扱いになっていた間違いを修正しました。

 重要なことをもう一つ伝えなければならない。

 俺は二次元限定であるとはいえ〝ロリータ・コンプレックス〟なのであるが、ならば『三次元』現実社会でのソレはどうなんだ?と言う素朴で当たり前な質問を毎度毎度浴びせられる訳だ。ソレについては親の名、神仏に誓って断言する。全く興味はない。その根拠は追々解いていくとするが、ひとつ開示するならばそれは多感期の頃に受けた3次元異性(同姓も含む)から受けた差別・迫害であるところが大きい。いわゆるトラウマと呼ばれるソレだ。先に述べたゴミ扱いの件だ、思い出したくもない忌々しい時代だ。

 だが今となっては俺は自分で自分の精神状態を再度分析しなおし、認識を改めるタイミングにブチ当たっていると言わざるを得ない。何故なら真緒ちゃんが現れた昨日からの俺の素行が明らかにバグを伴っているからだ。精神に脆弱性を感じていると言う自覚症状も何となくある。勿論危険なレベルではないが、全く興味はないと言ってる側から自己否定するようで甚だ恐縮である。


 さてその日の深夜。俺は午前2時頃に、有りがたく頂戴した真緒ちゃんカレーを頂いた。久々に味わう家庭料理のカレー。事実美味しかったのだが、残されたままの例の事案の取扱い方法について頭が一杯でシッカリと味わえていなかった。

 結局あの後、俺は数時間もの時間を費やし最善策を入念に検討した結果、恐らく置き忘れてしまっただけであろう真緒ちゃんの衣服と洗濯機の中の下着は、やはり俺個人の洗濯物とは分けて綺麗に洗浄し、キチンとアイロンを掛けて清潔に整えてお返しするのが良いと判断した。クリーニング等に出すことも考えたがソコはしまむらに女児の衣服を買うオッサンの絵面同様、クリーニング店のおばちゃんに完全に不審者認定される事案なので控えた。

 その後の俺は今まで身に縁のなかった極めて特殊で極めて際どい事態に精神をすり減らすことを少しでも軽減しようと、気を紛らすために火急ではない仕事を再開した。品川区の正確な細かい地図の制作案件だ。下絵にそって自らの足で取材した地域の情報・ランドマークなどを落とし込んでいく地道な作業。今の俺の精神状態には打って付けと思えた。だが結果として昼間と同じく思うように捗らなかった。

 そんな時、メーラーが投函のアラームを発した。何だこんな夜中にと思った俺は、もしかすると新規の仕事の依頼かと一瞬だけ期待したがそんな訳もなく、片手でも余る程の数少ない友人からのメールだった。一昨日の日曜日に会ったその筋では有名な絵師と共通の知人で、コイツは専門学校時代の友人で前職の更に前に勤務していた印刷会社での同僚だった人物である。メールの内容はソッチの方は予感通りのショーもないものだ。

 コミケで売る薄い本が仕上がらず泣きついてきただけだった。だがこれまでの倍額の報酬を用意しているとも付け加えてあり、俺は表向きヤレヤレと思いつつもコッソリとラッキーを感じた。なにせ今の俺は金欠で貧乏、ナマポ受給者より所得が低くなりそうな有様なのだ。昨日頂戴した真緒ちゃんママからの諭吉様は厳重に運用する旨を財布の中の大蔵大臣に申し付け、そして俺はその友人に明日午前中の若干早目の時間に向かう旨メールにて返答しておいた。


  ◇


 翌日の午前8時頃、俺はおもむろに起床し、台所の流しで顔を洗い歯を磨き、出かける準備をした。昨夜の依頼に応じるためだ。いつもと違う何かに取り組んで色々酷使し擦り減らした脳細胞とライフゲージの回復をはかりたい意図でもある。俺はその日出かける直前に、洗濯機の中に入っている真緒ちゃんだけの衣類を洗濯するためスイッチを入れて外出した。

 日曜日に会った有名絵師の友人をA、これから会う友人をBとする。友人Bは実はかなり裕福な家に生まれ育っていて今でも親と同居している。居住地は何と目黒区だ。ヤツの家に行くのは今回でまだ2回目なのだが、場所はシッカリ覚えている。こんな超の付く特等住宅地の一戸建てにお住いだ。ヤツには年の離れた妹がいるとの事だが、既に家を出ていて一人暮らしとか聞いている。兄のソイツがまだ親の片脛をかじっている様は、みっともなさは既にスッ飛ばしていて寧ろ羨ましい限りだ。早々に家を出た妹はヤツを反面教師にしていたであろう。

 ただ、ヤツ呼ばわりしているその友人Bがそんな傍目にだらしなさを彷彿させてるのにも、俺同様に色々と忌々しい過去があるのだと言う。自分の事は棚に上げ他人のソレは半分は言い訳にしか聞こえてない気がするモンだが、その中にある俺との幾つかの共通点、その一つがロリコン趣味だ。しかも友人Bの性癖のストライクレンジはかなり広く、唯一譲れないと言う〝ドS少女〟ポイントさえ踏まえていれば丼飯3杯以上イケると豪語している。ツンデレなら尚可と贅沢なオプションもシッカリ要求する図々しさだ。

 そんな友人Bが、良く来たマァ上がって適当に座れと俺をデカい自宅に招き入れ、何だか酷く散らかっている自室に通し、俺の目の前に固くキンキンに冷えた味違いのハーゲンダッツアイスを2個置き、食いながら話を聞いてくれと促した。

 話は他でもない、コミケで売る薄い本制作が滞っていて今にも溺れ死にそうなのだと話を切り出すが、ソレは既にメールで承知している事を返すと、ならば話は早いと進捗を示す意図で原稿を俺の面前に広げた。見ると、真っ白ではないがマンガのコマ割りの中にテルテル坊主が何やら踊っていて、そしてソレも途中から居なくなって罫線すら無くなり真っ白になっている。

 駄目じゃん。ソレが俺がまず思ったことだった。率直な感想を友人Bに伝えると恐らく予想通りの返しを喰らったと言う表情で、突っ伏してその真っ白い原稿の最後に落とし込んだプロットを見るよう示す。その支離滅裂な内容を確認した俺は思った通りと確信し、友人Bが俺に求めていることを察した。要するにネタが枯渇しているのだった。

 俺はその時まず自分のやるべき事をすぐに察したものの、物事の筋と順序を弁える意図で友人Bにリクエストを尋ねた。するとヤツはシンプルかつストレートに、枯渇したストーリーのネタを恵んで欲しい事とフィニッシュ作業のヘルプを願いたい旨を述べた。俺はあまりに予想と寸分たがわぬその申し出に呆れてしまうのだが、それでもまァ臨時収入を宛てにしてワザワザこんな所まで来た自分こそエラソーに構えてられないのは自覚していたので、二つ返事を返してやった。


 友人Bは要点さえ踏まえればオールレンジジャンルと言えるのだが、ココのところのヤツはどうにも版権作品に寄り縋る傾向が高くなった。その方がキャラそのもののデザインや人格設定などの基本的なプロットをイチから用意する手間が省ける事もあるのと、要は上手に手が抜けるという目論見もあることだろう。その反面、強固に決定されているキャラ設定の範疇からは出ることがままならず、友人Bはその約束事の中での展開に新しいアイデアが見いだせず苦悩している。妙な所で原作設定を順守する律儀な性格が災いしているのだ。

 ならば最初からオールオリジナルにすればいい。そう簡単に結論づくが、要は作品のすべてを自らの力量において設計しなければならずソレが殊のほか難儀であるのが実情だ。だが俺なら、迷わず後者を選択する。何故なら既にある(版権)キャラクターは、既にその存在の定義が完璧なまでに確率されていて、同人作家がソレを自己都合で改変することによって世界に歪みが発生していまうのは避けられないからだ。だが実際はその歪みこそを楽しむやり方も同人には存在するし、ことエロ同人なんてのはその塊であり最たるものだ。そういう物なのだ。だが‥‥

 某バスケアニメのトモカはバスケが好きなだけの幼気なJSであり、某魔法少女のナントカなのはは愛と正義の魔導師でこの世の平和を守るJSであり、いずれも劣情に溺れたキモ臭いオッサンの性搾取の対称となるのを是とする定義など、この世にもあの世にも宇宙の果てにもドコにもないのだ。そこを誠に恐れながら個人的な妄想娯楽の一環として少々改変させて頂く無礼をお赦し頂くこと、ソレがエロ同人のココロだ。

 だが百人いれば百通りの性癖があるのが常で、必ずしも上記の趣向に賛同するものばかりではなく寧ろ反りに合わない箇所に異を唱える者の方が大数を占める。当然そんな下衆な改変を一切けしからんとする者も存在するだろう。ソレが薄い本の売上に如実に作用する。

 そこへ行くとオリジナルキャラクターの何とも都合の良い存在であることか。何故なら生まれながらにして生みの親の想像を自在に実現してみせる能力を備えているのだ。だったらその方が全てにおいて手っ取り早い。版権キャラにおける信者の意向などとも無縁だし。ただしその全てを自らの力量で捌かねばならない。ソレがかなりの重労働なのだ。


  ◇


 調子扱いて語り過ぎてしまったが実情はそういう事で、と言うか、その様な事をクドクド思っていてもしょうがないので、ココは手っ取り早く俺の個人的な妄想を提供することにした。それはオリジナル要素における短編で、大まかに紹介すれば以下の様な展開となる。


1・とある独り暮らしのオタクの隣室に、美人姉妹とやらが引っ越してきた。姉はJKくらいで、妹はワリと幼い姉妹だった。

2・実はその姉妹は 夢魔(サキュバス) で、元々生息していた世界を勇者に滅ぼされ命からがら逃げてきた。

3・逃げた先のこの世のこの地で自分たちの仲間を増やすため、その独り暮らしのモテないキモヲタに姉妹で色仕掛け、後はエロマンガに有りがちなテンヤワンヤの展開となる。


 この内容をもっと具体的に文字書きしたものを友人Bに見せた。その際、2のクダリについては自分で細部を練るように促す。ヤツは最初ふむふむと読んでいたが、俺は不意にアッと何かを思い出し、読んでる途中のヤツの手から素案を奪い取った。友人Bは一瞬キョトンとしていたが、ネタが補足されるなら有り難いと思ったのだろう、寧ろ何が出てくるのか興味深い目でコチラを見守っている。

 俺は先程の1の冒頭を二本線で削除し、2については部分的に活かし3を修正した。まず1の冒頭を、独り暮らしのオタクから新婚ホヤホヤの金持ちリア充カップルに変更。そして2については姉をフタナリの淫獣に変更、幼女の妹にもっぱらリア充旦那の方を攻めさせ、ソイツが彼女に隠し続けていたロリ本性を暴かせる。それは幼女に対するドMな性癖と言う誰かさんと同じもので一般社会的には眉間に深いシワが寄りそうな内容だ。そして姉の方はリア充嫁の方を、ソッチはまァよしなに、ネンゴロに、思う存分に、と言う感じだ。

 再度プレゼンしたその内容に友人Bも賛同した。特にリア充夫婦がそう云うイカガワシイ出来事で崩壊していくのが無様で宜しいと私怨を含めて気に入った様子だ。しかし俺が半ば嫌味半分にわざわざ記述した金持ちと言うフレーズには全く反応せず肩透かし。更にヤツは逃げてきたサキュバス姉妹は生殖能力が極めて低く、とにかく年がら年中、朝から晩までヤり続けなければ子孫を残せない、という、もう勝手にしてくれと言いたくなるようなオプションを追加した。

 俺はマッサラな原稿台紙に大まかに割線を入れ、友人Bが描くものより遥かに粗末なテルテル坊主をアタリとした素案をラフ描きしていく。エンジンがかかったようにベラベラと具体的な妄想を垂れ流すヤツの言葉の要点を拾い、ソレをテルテル坊主に不器用に演じてもらう作業。全12ページ分の落書き以下の素描を決めると、友人Bはソレをスキャンしペンタブで描く本描の下絵とする。そしていきなり描き始めたその絵は、旧日本海軍の艦船を美人化した某作品と、近未来のバーチャルなアクションゲーム内で騒動に巻き込まれた美男美女カップルの某作品のチャンポンとして構築されていった。オリジナルの話がキャラだけ人気作品のソレを拝借してしまった形だ。こんな原作媒体も版元も異なる2作品が融合するのも同人の醍醐味であるのだが‥‥


 俺は友人Bが描いた素絵に背景を足し、フォトショップ上でトーン貼りやベタ入れをする役目を担当することになっていた。ヤツがデスクトップPCで作画したものをドロップボックス経由でマックブックの俺が拾い仕上げる寸法だった。今ヤツがその素絵を誠意製作中でその完成を待つ間、俺は手持ち無沙汰でヤツが出してくれたハーゲンダッツの3つ目のおかわりを食ったりスマホをいじったりしていたが、ふと、真緒ちゃんの事が脳裏をよぎる。今は夏休み中、彼女は今日も独りで母親の帰りを待っているのだろうか。さすがに小学生の女の子があのアパートに独り取り残されているのは心細いのではなかろうか。腕時計で時間を確認するともうすぐ昼だ。昼食はちゃんと食べているだろうか。

 先ほど俺の妄想を具現化したようなエロマンガの素案を友人Bに提供し、一旦引っ込めて修正した理由はお察しのとおりだ。初稿はまるで先日からの俺そのものだったからだ。勿論お隣に越してきた結城さん母娘がサキュバスなワケない。ヤツには今の俺の周辺環境について詳しく打ち明ける気など毛頭ないので、そんな状況を間接的にネタにしたエロマンガを創るのを結城母娘に対して不謹慎だとも内心思ったのだ。

 しかし友人Bはどうなんだろうか。自分の生活圏に三次元美少女が降臨した場合。ヤツのことだから願望としては真緒ちゃんに股でも顔でも口汚く罵りながら踏んづけて欲しいことだろう。宜しければお母さんにも踏んづけて頂けませんかと懇願するだろう。全くなんて悍ましいヤツなんだろうと自分の事は棚に上げて心のなかで蔑んだ(勿論これは冗談である)。

 だが実は気になっているのはソコではなかった。言ってみれば上記は実際問題あり得ない想像上の事であって、そもそもそう云うヤツであろう事は知り合った当初から承知している。気になるのはヤツのリアル幼女に対する意識、どう思いどう行動するのかである。つまりヤツが今の俺の立場なら?ということになるわけだ。

 俺がそんな妙な事で悶々と考えてる様を友人Bがふいに気づいて、ヤツは俺が昼も近いし腹をすかせたのだろうと勘違いしたらしい。チョッと待ってろと言って作業を寸刻中断し、ネット上で処理をした。何をしたのか訊ねると、行きつけの寿司屋にランチ握りの出前を頼んだという。その寿司屋はネットで注文を受けるという随分手軽で便利なシステムを導入しているのだとか。しかし俺は何だか日頃より何倍も贅沢な昼飯を提供されることに少々申し訳無さを訴えると、ヤツはまたチョッと勘違いし〝ちらし寿司〟の方が良かったかと言うので、面倒くさいのでご厚意に甘えることにした。


 程なく丸い重箱2段に盛られた寿司ランチセットが届く。豪勢な事にアサリの味噌汁も付いている豪華さだ。俺はソレをそこら辺の適当な神様仏様とついでに友人Bに感謝の礼を述べつつ食しつつ、物凄い遠回しな表現でさっきの懸念事項を訊ねてみる。ヤツは変なところだけは物事にけじめを付けたがる性格で、さっきまでの薄い本製作の手を昼食の時間だけはキチンと休めて、俺と膝を突き合わせて寿司を味わうことなく口に放り込んでいる。

 このように訊いてみた。友人Bは自分の性癖を鑑みた上で自分の歳の離れた妹についてどう思ってるか。その解答はそっけないもので、血縁関係であること以上の思入れはないと言う。向こうもコッチを特別意識など全くしていなくて半ニートのダメアニキ的な目線で見られていると断言した。だが友人Bは前述のとおり〝ドM〟であり、そのような仕打ちは寧ろ望むところではないかと切り返すと、ヤツは間髪入れずに冗談はよせと否定した。高坂兄妹ならイザ知らず、あまつさえ三次元・現実世界のソレは果てしなくシュールで取り付く島がないらしい。そもそも一切の接触がないという冷めた血縁だと一蹴した。俺はその辺については実は返答は予測出来ていたが敢えてその様に話を誘導した。実はコレにも順序があったからだ。

 この次に切り出した話題は、その妹が幼い時の話だ。例えば洗濯物などの妹の下着を面前にしたり手にした事が全く無くはなかろうと。するとヤツはおかしなことを言うんだなと鼻で苦笑し、そんな繊維質の物体が自分の性癖に干渉した覚えは記憶にある中ではまったくなく、当然他人のものであってもそうだと断言した。その根拠は、自分の性癖の中には下着などの装着物に対する関心がジャンルとして殆ど存在しないことを明らかにした。

 結論は、三次元などに興味はない、それに尽きた。だが〝ドM〟と言う性癖は三次元で実際に体現されなければ得られる満足がないものでは?と俺は思ったが、友人Bが上記の通り否定するのでコレ以上のツッコミは話が混乱するししつこいのでやめといた。俺はツマランことを訊いたと一応謝罪して俺も黙々と寿司を口に運んだ。


  ◇


 時計の針が午後2時を示す頃に、友人Bの原稿は順次上がり始めた。ほんのちょっと切っ掛けを提供しただけで、ヤツは気が乗り集中すると驚異的な速度で作業をすすめる能力があった。俺はその原稿をフォトショップ上でレタッチしていく。印刷はこの高解像度データをそのまま移行すると言う。

 便利な世の中になったもんだ。以前のアナログ時代はこの下書きされた絵にペン入れしベタを塗りトーンを張って原稿が完成したモンだった。しかし友人Bは最初からこのテルテル坊主が踊る原稿にシャープな濃い線を描いていき、ソレを補正してペン入れ原稿と同じ体裁に仕上げていく。その後でトーン貼りなど施すため線描きの細部で気配りが必要な作業だが、ヤツはその辺もキチンとこなし尚且つスピードも衰えない。

 そして、夕方5時になろうかと言う時には3ページ分のアウトラインが仕上がり、本人も俺も驚くハイペースで作業が進んだ。ただし台詞などは最後に自分で入れると言う訳で空欄のまま。ココで一旦夕方の休憩となった。手を動かす時は熱心に動かし、休む時はキチンと休む。行動にけじめやメリハリが利いているのも友人Bの人種的特徴だった。


 友人Bが貰い物だ遠慮は無用と言いつつ俺の前に出してきたのは、なんだか高そうなショートケーキが2皿。ヤツは一般的には恐らく金持ちの部類に属すると見受けているが、金持ちはこう云うのを自分で買わずに貰う事もワリと多いのか。金持ちは金を使わないケースも有るモンなのだな。勿論インスタントではないコーヒーが付いてひとまず俺にとっては贅沢な休憩時間をくつろぐ。

 その雑談の中で、今日明日だけで半分近くのページの見通しが立つだろうと予測、ヤツは表紙にじっくり2日使って着彩しても悠々〆切に間に合うと話し、これまでに例を見ないスピード仕上げと感嘆仕切りだった。そして俺に対しては寧ろ秀逸なネタの提供に感謝する旨を重々述べていた。

 そして、夕食はどうすると意見を訊いてきた。何なら泊まっていっても可だと言う。だが夕食はともかくサスガに泊まるのは気が引けるので遠慮すると申し出ると、友人Bは了解した。その理由は、俺も友人とはいえ他人の家に寝泊まりする事があまり好きな部類ではないのだが、もうひとつ、余計なこととは承知しているが真緒ちゃんの事が気になっていると言うのがワリと大きな割合で加味されていた。勿論それはヤツに伝えはしない。


 結局、時計の針が夜9時頃を示す時まで、俺は友人Bと同人誌制作に没頭してしまった。何と5ページまでアウトラインを仕上げ、先の展望がようやく見えたヤツも安心した様子だった。俺も結局は夕食までご馳走になってしまい(夕食は鰻重の出前だったが)、友人Bは気分転換にドライブすると言い出し、俺を自宅まで送ると申し出たので折角だし好意に甘える事にした。そしてヤツの母親の帰宅と入れ違いに、俺は友人Bの愛車のベンツの右側の助手席の荷物として収まった。

 友人Bが運転するベンツが環状7号に出る所まで俺達は互いに無言だったのだが、そこでヤツの方から今日の件について感謝の意を伝えてきた。俺も実は仕事が暇でソコへ少しでも謝礼が貰えるというので乗ってきた話だと伝え、てか昼飯の寿司と夕食の鰻重と、高そうなケーキとハーゲンダッツ3個で充分埋まってしまった案件だと逆に恐縮してると、ヤツは気にするなと一笑し謝礼は間違いなく払うと約束した。

 ただ友人Bは俺の内心に感づいていたのか、何があったのかとにわかに訪ねてきた。やはりあの時変な質問をしたのが気になっていたらしい。勿論俺は事実を話すことはしなかった。ヤツを信用していないわけではないが、何だか根拠なく公にしてはいけない気がしていたのだ。そこで友人Bに対しては状況に沿ってフィクションを創作し、コインランドリーから持ち帰った自分の洗濯物の中に女児の下着が混ざっていたのだと虚偽説明した。

 ソレを聞いた友人Bは一頻り笑った後、まずは口に入れて味を確かめた後、試着して感触も確かめるるべきだと言い放った。その後すぐに、洗濯した後だから味も価値も薄くなっているからあまり有り難みはないであろうと付け足すと、ソレを聞いて俺はアホか!と一蹴するのと同じタイミングで冗談だと弁解した。

 だがその後、俺が必要としていた回答についてはあまりに無難な内容を返すのみであった。今更どこの誰のものとも判らないソレは無用なトラブルを避けるために破棄すべきと言うものだ。とにかく俺達の人種は公安にしてみれば検挙率を上げる絶好のお宝を隠し持っているに等しく、実質利益をもたらすソレでない以上は存在価値がない。そう言う粗筋の事を説いた。もっとも俺におけるソレは持ち主が判明しているのでこのアドバイスは逆の認識と理解すべきだろう。


  ◇


 交通量が少なくなった夜の都内を快調に走行していると、前方で赤色灯が回転しているのが見えた。俺達にとってはいささか物騒な赤い光だ。とは言え今の俺達に何らやましい事はないのだから平然とそこを通過して問題はない。友人Bも飲酒検問か何かだと思った様子で、こんな夜にご苦労なこったと嘘の労いをする。だが状況は違った。

 事故だった。中型のトラックが完全に横倒しになって、環7の中央分離帯のある片側2車線・外回りの全面を塞いでいる。対応として、反対側車線の内側のレーンを対向車線に簡易流用しスレ違いにして流していたが、その通りぬけ渋滞が比較的長々と連なっていた。

 友人Bは渋滞列に並んでそこを通過するか、回り道をするかの選択を俺に委ねた。だが都内の道なんて俺は全く解らないし早めに帰宅したいこともあり判断を返上すると、了解したヤツは次の交差点で左折し、細い住宅街の中に入っていく。訊けばこの辺、渋谷区から中野区に通じる境目のこの辺りは迷宮まがいの複雑な住宅路地のためあまり入りたくないとの事。結局どこを走っているかは不明のまま気がつけば首都高速に上がって新宿方面に向かっていた。

 俺はよく解らないが、車はやや急な下り坂を降りて行きそのまま長いトンネルへと入る。これがまたまるで地下鉄でも乗ってるかのような延々と続く長いトンネルで、俺の人生そのものかと奇妙な感想にふけっていると、やがて急めの上昇角度で登って行き地上に出たかと思ったら再び高架道路へと変わる。そのまま車はジェットコースターの溝のような両壁が迫る首都高を快走する。その間は友人Bは特に何も話しかけなかったせいで、俺は若干うつらうつらしてしまった。気がつけば、車は何となく見たことのある風景の中を走っており、時計も夜の11時前頃を示していた。


 首都高に上がり単調な走行が続いたところから一般道に降りてからも友人Bは他愛もない会話を途切れ途切れに繰り出す。俺も都度ソレに上の空で答えていたが、チョッと間が空いて、ヤツは9月から父親の経営するクリニックで小児科医として働く事を打ち明けた。俺は唐突なカミングアウトに一瞬狐につままれてしまいポカンとしていたが、その顔が面白かったのかヤツはゲラゲラと笑い出す。て言うか、俺はヤツが医者であることをこの瞬間まで全く知らなかった。ずっと親の片脛かじるロリヲタ・もとい二次元ヲタのニートだとばかり思っていたのだ。

 俺はどういう事か詳細を訊ねた。その直後友人Bは車をコンビニの駐車場に入れ、トイレにいくと言って車を降りた。やがてコーヒーの入ったカップを2つ持って戻ってくる。一つは俺用らしい。俺は何から何までスマンとサスガに丁重に礼を述べた。

 その後友人Bは再び運転席に収まり、車は止めたままで先程の俺の質問にカクカクシカジカと説明してくれた。粗筋は、どうやらヤツは長いこと休学していたらしい大学医学部を卒業して医師免許の試験にもとっくに合格していると言う。そこまでの筋道を学校を休んだり俺と同じイラストレーター養成の専門学校に通ったり、印刷会社で働いたりと言う異常なまでの遠回りや寄り道を繰り返し、父親との確執も双方の歩み寄りの上、刀を鞘に戻すことにて合意してそこに至ったのだという。

 俺は気になって一つだけ質問を追加した。その父親との確執とは。するとヤツは呆れにも見える顔で苦笑し、ロリ趣味以外に何があるのかと質問返しを喰らった。当然今製作進行中の薄い本の件もご法度でバレたら全てが水疱だと言う。やはりソレだったのかと思いつつもそんなアレで小児科医が勤まるのかが甚だ気になる所だが、何と言うかその部分は触れてはいけないような気もして、ソレ以上は控えた。


  ◇


 俺の住む街の最寄り駅に近い所を通過する。ここから先は俺の道案内で友人Bは車を走らせた。駅前通の住宅街へ通じる並木道をそこそこ走っていると小さな川にかかる橋があり、その手前の路地を右折する。そこから程ない所に俺のアパートがある。友人Bも実は俺のアパートに1度だけ今回のように車で送ってくれたことが過去にあった。細かい指示は必要とせず車をアパート前に停車させる。

 俺はもし続きの作業があればヤツのアカウントのドロップボックスにデータを上げておけばいつでも対応する旨を伝えた。ヤツも無論そのつもりだと言い、併せてコミケ当日の手伝いもよろしく頼むと付け加えた。今回は初日にブース販売し売れ残りは友人Aに委託もするのだという。ただ友人Aは人気作家であるため、その影に完全に隠れてしまいそうな気もしたが些か失礼かと思い、諸々承知した旨を伝えて車を降りようとしたその瞬間だった。

 反対側からタクシーがやって来て俺達と斜向かいの位置に停車した。そして中から真緒ちゃんママが降りてきたのだ。その時俺は何を思ったのか友人Bに、スマンがスーパーで買い物するのを忘れたととっさに口から発してしまった。時間は夜の11時前を示しており、11時で閉店するので申し訳ないが向かってくれないかと。ヤツは一瞬何事かとポカンとしたが、解ったと承諾して車を発車させる。タクシーとのすれ違いざまに俺の視界に品川ナンバーのプレートが入ってきた。

 俺はそこからスーパーまでの車で3分の道のりの中で、先ほど見た風景を思い返した。そしてスーパーの前で友人Bの車から降りると、別れの挨拶を交わして走り去るヤツの車を見送りながら脳内はさっきの状況の分析を開始していた。


 この辺りは都心部から電車で1時間弱のベッドタウン。だがサスガにこの時間でもまだ電車は走っているし、その一方、タクシーなんか乗って帰ろうものなら深夜3割増で軽く1万円を超える。こう言っちゃ失礼だが、うちのアパート住人の所得事情においては相当な贅沢だと思われるが、もしかすると勤め先の経費で落ちるのかもしれない。イヤイヤ‥‥

 先日の真緒ちゃんの証言によると真緒ちゃんママは午後のパートタイマーの仕事に従事してるとの事だった。俺の理解が正しければ。だが仕事の内容や業種にもよるだろうがまだ電車が走っている時間帯にタクシー代が実費請求できるものだろうか、ましてやパートの職員に。少なくとも俺が勤め人をしていた時はソレはあり得ないことだったんだが‥‥

 俺はそんなことを考えながら、実際にはスーパーには買物の用事なんてないのでそのまま自宅アパートへと歩いて帰る。左右交互に出る自分の足のつま先を見ながら歩いていると、まるで催眠術にかかったように真緒ちゃんママの疑惑にのめり込む。しかしそんな昼ドラかゴシップ週刊誌の記事みたいな話は事実はあまりにも呆気ないものだったりするのが常だ。俺はそんな自分の考え過ぎをセルフで諭しつつ、もっと有りがちですんなりと筋が通る一つの妄想が当初から既に確立していることに気づかざるをえない。それはつまり真緒ちゃんママの職業が『水商売』なのではないかと云うことだった。

 だがそんなこと悶々と考えたところでどうしようもないし何にもならない。まさに時間の無駄である。そう俺は振り切って脳内から先程目にした光景をすべて削除した。そして今週末には一旦仕上げて納品しなければならい例の品川の地図作成の件や、友人Bの同人誌のヘルプ作業の件など、生活の糧を得るための重要事項をキチンと成し遂げるべく気持ちを整理した。

 やがて自宅アパートに帰り着き、お隣の結城さん母娘の住む、明かりが灯る居室の前を通って自室の玄関の鍵を開けて中に入ると、まず目に入ったのが流しの中の水が張られているボール容器。昨夜ご馳走賜った真緒ちゃんカレーが詰まっていたボール容器だ。ソレを見た瞬間俺は自らが抱えていた、もっともっと重要な問題が遂行中のまま現状未解決であったことを思い出し、頭を抱えるついでに自分の両手で顔を叩いて失念を罰した。


  ◇


 俺は洗濯機の蓋をそーっと開けてみた。すると中で既に洗浄脱水が終了している真緒ちゃんの衣服一式が揉みくちゃな状態で洗濯槽の側壁にへばり付いていた。まずはコチラの案件を処理しなければならない。俺はその洗濯物を一枚づつ取り上げると軽くパンパンとはたいて大まかに皺を伸ばす。何というか女児の衣服はこうして見ると意外と小さいものだ。雨にズブ濡れた真緒ちゃんが着用していた極めてシンプルなデザインの前開きの薄いピンク色の半袖シャツ。脱水の遠心力で細かいシワが無尽に走っていてこのまま乾かすと良くない。

 俺はその真緒ちゃんシャツをスーパーの買い物の際に使う大きめの帆布の手提げに無造作に入れる。あまりシゲシゲ見つめるのも変な意味汚れそうなのと、俺自身が妙な衝動に駆られない保証がないからだ。自分自身すら信じることができない情けない話である。次に取り上げたのは7分丈のジーンズ生地のパンツ。最近は足を細長く見せる意図なのだろうか、カッティングがヤケに細身でテーパードだ。これもパンパンとやってから手提げ袋に放り込む。

 次に手にとったのはインナーシャツ。ノースリーブ。要は俺たちが言うところのランニングシャツだ。これも丈が短い。その次はソックス。普通の丈のいわゆる靴下。俺自身はしまむらで買ってきたニーソーの方が好みだ、あの店員さんはいい趣味をしている。イヤそんなこたーどうでも良い。そして最後、いよいよ俺の手が掴んだそれは女児ショーツ、一般的にパンティとかパンツとか言ってるアレだ。俺は必要最小限の接触時間で直視することなくその女児ショーツを手提げ袋に放り込んだ。先程から真緒ちゃんの服をぞんざいに扱うような印象だろうが、実はこれも俺自身が余計な意識を持たないよう配慮した結果であり作戦だ。


 俺は自宅に衣類乾燥機を持っていない。なので近所のコインランドリーのソレを拝借することにした。ただ真緒ちゃんの服だけを持ち歩いていては万が一の時に非常にヤバイので、何とか誤魔化せるように僅かな逃げ道を確保する意図で自分の服を多分に混ぜて持ってきた。ただしこれは洗濯物ではなく既に洗って引き出しなどに仕舞っていた服をわざわざ濡らして持ってきたのだ。ここまで用意周到に計画してると我ながら悪いことをしてるような気分になってしまい、自ずと素行が怪しげになってしまわないよう注意した。

 それはともかく、とにかくこういうのはさっさと片付けるに限る。むしろコソコソしてると余計に悪目立つ。俺は自宅から歩くこと10分、例のしまむらがある所のもう少し先にあるコインランドリーに到着した。幸い他の利用者は居ないようだ。時計は深夜12時前を示していたがココは24時間利用可能なのでありがたい。と言っても多分二度と利用することはない。

 中くらいの大きさの乾燥機に持ち込んだ洗濯物を放り込むと、200円投入し20分間回す。そして端っこの椅子に座ってスマホの画面を見たり、回転する洗濯物を異常が起きないよう監視したりしてこの場の時間を潰す。また時折回転中の扉を開け乾燥状態を確認する。実はこれが重要、生乾きのまま持ち帰るのだ。

 そう言えば友人Bの家でこんなシチュエーションの作り話をしたのを思い出す。まさか現実になるとは‥‥

 いい感じの湿り気を確認し、生乾きの洗濯物を手早く選択荷物を手提げ袋に取り込む。そして乾燥機内に忘れ物がないか、周囲に落としたりしてないかを入念に確認する。根が小心なのでこういう所作が大袈裟になってしまう。キモヲタを自称する者にはワリとありがちな行動だ。

 さてこんな場所はさっさとズラからんとばかりに急々と退却しようとした時、ガタイの良いレスラーのような大男がデカイ麻袋のようなものを2つ抱えて入ってきた。まるで中に攫って来た子供が入ってそうなデカい袋だったが、まァ溜まった洗濯物を一気に片付けようというのだろう。だが危ない危ない、俺の行動が少しでも遅かったらコイツと鉢合わせるところだった。そもそも他人の洗濯物なんかに関心などなかろうが‥‥ とにかく深夜のこの辺は頭悪そうなヤカラもチョイチョイ出没するので、面倒が起きないうちにさっさと帰宅する。


 自宅アパートに帰り着き、結城さん宅前を通った際、すでに居室内の明かりが暗く落とされていた。真緒ちゃんママは明日も早かろうし早々にお休みになったのだろう。一方俺の方は実は明日は昼からチョッと予定があるのだが、ソレよりも今は真緒ちゃんウェアをキチンと整えることが先決だった。それに今頃友人Bが数ページほど仕上げの依頼を寄せてきてるだろうし。

 俺はズボンの尻ポケットから家の鍵を出そうとした。するとズボンのポケット内で縫い目だか布がほつれたかで、キーホルダーのリングに絡まり引っかかって出てこない。全く、安物の衣類を貧乏臭くヨレヨレになるまで長く穿き潰すとこう言う事になり、余計に身も心も貧しさが色濃くなるものだ。俺は鍵を力任せに引っ張りだすと、ブチッと音がしてポケットに穴が空くのを感じた。

 同時に、不意に右方向から呼び声がして俺は大袈裟なほどに驚いた。声の方を見るとそこには真緒ちゃんママの姿があった。とっくに布団の中でお休みなのかと思っていたので、その様子にもかなり驚いてしまった。そんな俺を見て真緒ちゃんママも恐縮したのか、驚かせて申し訳ないと謝罪の言葉を口にしたので、俺は思わず慌てて制しようとした。

 真緒ちゃんママは、前日夜で申し訳ないが資源ゴミを出してきたのだという。俺はその言葉を聞いてアァそう言えば、と自室のゴミで該当するものがあることに思い当たる。ただ生ゴミならともかく資源ごみなら動物が荒らすこともないだろうと、気にしなくても良い旨を伝えた。実際そんな理由で前日夜に出す人も多いのだし。

 玄関先で深夜のご挨拶も程々に、俺たちはそれぞれの部屋に戻る。それにしてもサスガにさっきのは驚いた。日頃から弱い草食動物のようなビクビクした生活を送ってるわけではないが、社会的なヒエラルキーは似たようなモンだ。俺は深い溜息とともにこの後のミッションに向け諸々準備する。


 生乾きの洗濯物を選別し真緒ちゃん衣装のみを丁寧に選り出し籠に入れると、残りの俺の服は先に物干しにぶら下げた。コッチはただの賑やかし素材でしかなかったのでこれにてお役御免だ。そしてアイロン台をセットしアイロンの電源を入れる。アイロンが高熱を持ち準備が整うと、俺は籠の中の真緒ちゃん衣装の一枚目を取り出す。最初のそれは女児ショーツだった。俺の手が一瞬怖気づいて停止するが、意を決しアイロン台の上に据え俎板の鯛を捌くように作業を開始した。

 熱いアイロンが当てられて薄いパステル色柄の女児ショーツは湯気を上げる。シワが綺麗に伸び形もキチン整えられる。この時、そう言えば友人Bが冗談でクロッチ部分をくわえてドウノコウノ冗談を発していたのが脳裏をよぎる。その瞬間俺は熱いアイロンの腹を自分の顔に向け、コレ以上劣情をイメージしたらコレを押し当てるぞと自分で自分を脅迫した。だがその手がゆっくりと下に降りていっても、真緒ちゃんショーツを載せた左手が自分の口もとに向かうことはなく、そのまま針金で出来ているハンガーに二折にしてぶら下げられた。

 続いてインナーも同じようにシワが伸ばされハンガーに吊るされ、その後は半袖シャツ、ジーンズ生地のパンツ、最後にソックスと、すべての洗濯物のシワ伸ばし作業が完了した。何とか洗濯のミッションを終え、後はコレをどういうタイミングで返却するかを考えねばならない。どうしたものかと俺はその時真緒ちゃん衣装の洗濯物を、特にショーツに目線がぼんやりと置かれた状態で考え込んでいた。

 そして次の瞬間、ハッと我に返った俺はイカンイカンと頭を左右に振り両手でバシバシ両頬を叩いて正気を叩き起こした。そして返却作戦の立案は洗濯物が完全に乾燥してから考えなおそうと、俺はデスクの椅子に座ってパソコンのスリープを解いた。ドロップボックスには画像が4点、新規で追加されている旨が表示されている。俺は今日は眠くなるまでソレの仕上げ作業をすることにした。

登場人物


【真緒ちゃんママ】文字通り真緒ちゃんの母親、結城さん。日中は資格取得のために学校に通ってるらしく、夕方以降は働いているというが‥‥ おそらくは水商売ではないかと予想しているが、その人間関係にも疑惑が満ちた謎めいた存在。


【友人B】俺の専門学校時代からの数少ない、友人Aと共通の友人。もちろん二次元オタクだがドM属性。最初に勤めた印刷会社も同期で働いていたがヤツはたった1年で先に退職、その後引きこもって同人誌を制作するニートとなった。が、実は俺の知らないところでイロイロハイスペック野郎だったのである。

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