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閑話……『Daydream Believer』

 理央りおうは嬉しそうに、会社の休憩時間に赤ん坊の映像を見ていた。


 小さな命は、義母や最愛の妻の祐実ゆみに守られ、今、二人は家にいて日々楽しげに歌を歌ったり、準備をしているのだろう。


『どうしたの? リオ』


 部下になるイリアの声に、理央は微笑む。


『あぁ。僕の赤ん坊だよ。まだ小さいんだけど、ほら、双子』

『まぁ! それは素晴らしいわ! 素敵!』

『この子達が生まれて落ち着いたら、会社も辞めるつもりなんだ』

『えぇぇぇ! どうしてよ! 貴方が居るからこの支店は上位を獲得してるのに!』


 ニーナが近づいてくる。


『と言うか、この支店が元々トップを取れたのは、僕の父のお陰なんだよ。言ってなかったけど』

『えっ? どう言うことだよ!』


 シャルルに言われ、首を竦めた。


『僕の父はYugihara Company……の前総裁と言うか、形だけ総裁にまつりあげられている人間。意見も通らない。会議にも呼ばれない。それなのに、親族の赤字経営の立て直しの度に責任を負われその地位に戻され、経営が黒字になったら、又閑職に追いやられる。僕と親友達が、父の甥……つまり僕の従兄が経営も勉強してないまま役職を貰い、結婚してるのに浮気して、その相手に会社の金を使い込んだのを知って、従兄の持ってた会社を買い取って、その一つをここで経営してきたんだ。最近、日本と世界にあるユギハラの幾つもの研究所と病院を、僕と妻の貯めてきたお金で購入したからね。その仕事に専念したいんだ』

『会社の上司引き止めるわよ〜?』

『まぁね。日本本社の、若手部長も辞めるからね。僕の妹の夫で、こっちは営業畑を開拓してきたからね。父さんの幼なじみの息子は、工場の設計や他に経理担当』


 理央は腕を伸ばす。


『……『Daydream Believer』……僕は父さんの養子なんだけど、父さんの奥さんである母さんは、本当に僕のこと実の息子みたいに可愛がってくれるんだ。僕が養子に迎えてくれた2人の為にって言うと、母さんは「貴方は私の自慢の長男です! 今までだって頑張ってますよ。お父さんもお母さんも見てますよ。だから、息抜きしましょう。ほら、『Daydream Believer』にもあるでしょう? 昼間に夢見心地もいいと思いますよ」って。それに、父さんは口数は少ない人なんだけれど「理央に会いたいな」って』


 コーヒーを淹れると、ブラックで一口口にする。


『だから、子供が生まれて落ち着いたら日本で、会社運営。この会社とは違うから……』


 会社はシーンとする。

 ハッとしたように、理央は笑う。


『大丈夫だよ。皆は僕が引き抜いた優秀な人間。僕がいなくても大丈夫!』

『困るわよ! 本社から変なの来たら、絶対辞めるわ!』

『そうだそうだ! それに、日本語で仕事しろとか強要ばっか! お前こそ英語くらい喋れよと思うぜ!』

『お願いします! リオ! 私達も、ここで良いです。この会社を皆で買い取って、リオ達の会社の系列に置けませんか?』


 必死に訴える部下にオロオロし、最後に父に電話をする。


「もしもし?」

「あ、理央兄ちゃん!」

「こ、こら……遼一りょういち。父さんの上に乗らない……携帯返しなさい」

「遼一、何してるの?」

「父さんが起きないから、起きろ〜って。僕、学校から帰ってるのにまだ寝てるんだもん」


 あははは……遼一は10歳、父の彰一しょういちは、遼一と孫と祖父と言って良い歳の差である。


「もしもし……理央。大丈夫かい?」

「はい。お母さんや祐実も元気です。それが、実は、相談したいことが……」

「ん? なんだい?」


 説明する。

 すると、彰一はため息を吐き、


「じゃぁ、半年の間に、その支店を、雄洋たけひろ君に頼んで奪い取る……だね」

「えぇぇぇ!」

「他にあるかな?」

「ないです……」

「じゃぁ、頑張りなさい。その支店の人は納得してるんだよね?」


理央は返事をする。


「……無理はダメだよ。逆に『Daydream Believer』のように、考えたら良い」

「……父さんのカクテルが飲みたいなぁ……」

「もうちょっと頑張りなさい。理央」




 翌日、引き抜き希望者をチェックし、その情報を会社には隠して、約一年後まで理央は会社を少しずつ侵食していくのだった。

忌野清志郎さんの曲が有名ですが、英語訳だと題名が『夢心地で幸せな人』と言う意味です。

英語の歌詞をイメージしてますが、日本語訳も好きです。

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