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あるバーのマスターの話  作者: 刹那玻璃
マスターの章
17/66

『Continue』

 今日は寒波の第2波到来とラジオでは伝えていた。

 マスターは家に滅多に帰ることはない。

 奥の休憩室に毛布と枕などがあり、お客様が長居をして送り出した後、戻って寝ると言うのも面倒でそのまま仮眠をとることも多い。


 昨日もそうで、仮眠をとると近くの銭湯に行き、糊の効いたシャツに着替えると身支度を整える。


 そして、そう言えば、受験シーズンだったなとラジオで聞いていた内容を思い返し、今日は気分を変えてお客様をおもてなししようとCDを選んだ。


 カラン……


ドアベルがなった。

 物静かと言うよりも、落ち込んでいる様子の青年である。


「いらっしゃいませ。お客様」


 マスターは銀のスプーンを磨きながら微笑む。


「寒かったでしょう。暖かいこちらにどうぞ」

「ありがとうございます」


 滅多に雪は降らないが吹雪いていたのか、肩や頭が真っ白になっている。


「大丈夫ですか?タオルを……」

「あ、大丈夫です。ありがとうございます」


 コートを脱ぎ隣の椅子にかけると、席についた。


「ここは……雰囲気は趣があるのに、曲は……」

「あぁ、すみません。私のその日の気分で選ぶものですので……」

「そうなんですか……SEAMOのCDがかかっているとは思わなかったです」

「そうですか?」


 クスッと笑う。

 実は、このベストアルバムCDは、珍しく聞いて気に入って購入したものである。


「すみません……もしよければ、気分の晴れるようなカクテルと言うのはありませんか?目標を見失いそうで……」


 青年の言葉に、マスターは頷いた。


「かしこまりました」


 カクテルグラスを用意すると、分量を丁寧にはかり、シェーカーを振った。

 そしてゆっくりとグラスに移し、青年の前に差しだした。


「どうぞ。曲と共にお楽しみ下さい」

「ありがとうございます」


 青年はオレンジ色のカクテルを口にして、じっと見つめる。


「これは……」

「オリンピック(Olympic)というカクテルです。今流れている曲は『continue』。諦めず続けてこそ、世界にたてるのだと思います。不知火寛爾しらぬいかんじさんですよね?迷い悩んでも、貴方には未来があります。ですから、今日はここで愚痴をどうぞ。明日からは、未来を探して下さい」

「……ありがとうございます。今日一日だけ……甘えさせて下さい」

「良いですよ。お酒の上での話は、なかったことですからね」


 マスターはウインクをしたのだった。

『オリンピック(Olympic)』


ブランデーベースのショートドリンクカクテル。

フランス産まれのカクテルで、「ホテル・リッツ・パリ」で作られたとされている。

1900年にパリで開催された第2回オリンピックを記念して作られた。

時代と共にレシピが変化してゆくカクテルがある中で、このカクテルのレシピは変わっていない。


標準的なレシピ


ブランデー : オレンジ・キュラソー : オレンジ・ジュース = 1:1:1


作り方


ブランデーとオレンジキュラソーとオレンジジュースをシェークして、カクテル・グラス(容量75〜90ml程度)に注げば完成。

オレンジジュースは、その場でオレンジを絞ったものを使用するのがベストであるが、市販のジュースを用いても良い。

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