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あるバーのマスターの話  作者: 刹那玻璃
マスターの章
16/66

『夢であるように』

 今日も寒い日だった。


 首都圏や北陸東北地方等、出勤の人々は、猛吹雪で大変そうである。

 冬になると、お客はやはり減る。

 特にマスターのこの店は狭く、大人数は入りきれないし、常連客もいるが毎日来る訳ではない。


 しかし、最新式のデッキに買い換え、こつこつと集めたCDはかなりの枚数になり、その上常連客が聞かなくなったと言っておいて帰る場合もある。

 今日はあるお客が、


「大好きなんだけど移したから、貰ってくれないかしら?」


と置いて帰ったCDから、お気に入りの曲の入ったアルバムを見つけ、かけていた。

 DEENのアルバムである。

 ZARDの坂井泉水さかいいずみさんに提供して貰った曲などもあり、とても有名な曲が多く、それに声に癖がなく聞きやすい。


 カラン……


ドアベルが響き、現れたのは一人の青年……。

 清潔そうな身なりだが、表情は固い。


「いらっしゃいませ。寒いでしょう。どうぞ」

「ありがとうございます」


 マフラーを外しコートを脱ぎ、近づいたのは30前の青年。

 重苦しい表情でスマホをカウンターに置いて座った。


「エアコンの温度をあげましょうか?」

「いえ、大丈夫です。マスター、もしよければカクテルをお願いできますか?」

「かしこまりました」


 微笑む。

 そして準備を始めた。


「……あれ、この曲は……」

「あぁ、DEENのCDです。ご存知ですか?」

「えぇ‼この『ベストアルバム』を持っています」


 楽しそうに笑い、そして陰る。


「……ドライブによくかけてました」

「そうですか……」


 青年はカウンターに肘をつき、組んだ手の甲に顎をのせる。


「……彼女と別れちゃいました。新年早々。俺としては……結婚を考えてて、その為にも必死に残業をして……でも、彼女のことを忘れてはいなくて、ただ必死だったのに……いつから食い違うようになっちゃったんだろう……」

「どうぞ」

「ありがとうございます」


 青年は、グラスを引き寄せる。


「これは……?」

「ソウル・キスです」

「曲も?」

「いえ『夢であるように』ですね。ゲームの挿入歌になっていますよ」

「……そうなんですね……夢であるように……もう無理だと思った」


 ゆっくりとグラスを傾ける青年は、


「ソウル・キスは少し今の自分には苦いですね……」


と呟いたのが、マスターには響いたのだった。

ソウル・キス(Soul Kiss)


ワインベースのカクテル。



標準的なレシピ


ドライ・ベルモット ・・・ 2/6

スイート・ベルモット ・・・ 2/6

デュボネ ・・・1/6

オレンジ・ジュース ・・・1/6

- デュポネはキナ樹皮を使ったフランス産のアペリティフ・ワイン。


他のレシピ


ドライ・ベルモット ・・・ 2/6

ライ・ウイスキー ・・・ 2/6

デュボネ ・・・1/6

オレンジ・ジュース ・・・1/6


作り方


シェークする。

カクテルグラスに注ぐ。

- 素材に合わせて、シェークではなくステアしても可。


備考


アルコール度数が高い(35度程度)。

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