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あるバーのマスターの話  作者: 刹那玻璃
マスターの章
14/66

『みんな夢の中』

今回は、間章となります。

 深夜に、寒さが堪えると思っていたが、玄関の扉を少し開けて外を見ると、雪が降ってきていた。


 今日は高田恭子のアルバムを選んでかけていたが、寒さにエアコンの温度をあげて、カウンターに戻った。


 マスターの携帯電話は、仕事用と私用を持っている。

 お店の客や取引のあるお店からの電話は、すぐに取れるように、手を伸ばせる棚に置いている。

 しかし、私用の携帯電話はカウンターの奥にある休憩室のテーブルの上に置いていた。


 仕事中は絶対に取らないようにしている。

 その為、友人でもあった高坂こうさかなどは、店に来るようにしていた。


 マスターの私的の携帯電話は、もうほとんど鳴らなくなっていた。

 思い出したように充電をするだけで、見ることもない。

 教えていた知人や友人も縁遠くなり、親族とも距離を置くようになった。

 遺産相続、借金を頼み込むような電話も嫌になり、取らないままだ。




「もう、どうにでもしてくれ……!」


 あの時、マスターはそう言い放った。


「何をいっているんだ! お前は……」

「うるさい! いつもそうだ、あんたたちは、じいさんたちの金目当てじゃないか! 面倒なことを全て俺に押し付けておいて、じいさんたちが病気が悪化している今になって、病院じゃなく、これか!」

「遺産相続権は平等だ!」

「遺産遺産……うんざりだ!」




 今日は、誰も来ない……。

 このような虚しい思い出を、繰り返し思い出すのは、過去の選択を後悔していると言うよりも、孤独が心を蝕みそうになる時があるからだ。


 小さくため息をつき、思い出したように一つのカクテルを作る。


「……『午後の死』……ヘミングウェイに乾杯」


 壁にあるのは愛読書のヘミングウェイの小説。

 そして、スピーカーから流れるのは『みんな夢の中』……。




 全て……夢であったら、良かっただろうに……。

 私は、夢の中に微睡もう……。

『午後の死』

英語名「デス・イン・ジ・アフタヌーン」(Death in the Afternoon)とも呼ばれている。

有名な作家、アーネスト・ミラー・ヘミングウェイが作ったカクテル。

カクテルの名前は、ヘミングウェイの短編小説の題名でもある。



レシピ


・シャンパン(ヘミングウェイの指定によるとマムズ) - 3/5

・ペルノー - 2/5


元々は黒色火薬をシャンパンで割ったものだったが、余り一般的でなかったので、アブサンへと代わった。20世紀初頭アブサンが禁止になり、ペルノーで代用されるようになった。現在は、アブサンが禁止されていた国でも解禁されており、アブサンを使用するレシピが復活している。


・シャンパン(ヘミングウェイの指定によるとマムズのもの) - 3/5

・アブサン - 2/5


なお、ペルノーを使うレシピでもシャンパンとペルノーを 3:2 の割合でグラスに注ぐのではなく、ペルノーを45ml注いで適量のシャンパンでグラスを満たすレシピもある。


・ペルノー - 45ml

・シャンパン(ヘミングウェイの指定によるとマムズのもの) - 適量


作り方


シャンパン・グラスにペルノーを注ぎ、マムズを静かに加える。

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