第88話
「まぁ、ヒトミには書面でも伝えたし、口頭でもおおかた話したけど…改めてきちんと話すわ…」
広い校庭のど真ん中
私達は小さく丸くなってエリさんの話に耳を傾ける
「まず、坂崎レンジ君?」
「は…はい…?」
急に呼ばれたレンジはキョトンとする
「ここにいる女性陣は、普通の人間じゃありません…掻い摘んで言うと死神です」
えーーーー!
そ、そんなサラッと!?
「死神…いや…まぁさっきナナちゃん達の会話でも聞きましたけど…」
「そして、私はあなたを殺す様にこの桜川ナナに命令しました」
「はひ?」
レンジは素っ頓狂な声を出す
「あ…いや…え…?いや、その…なんで僕は殺されなきゃならないんですか?」
「あなたはこの先、新型インフルエンザにかかります」
「い…インフルエンザってだけで死刑になるんですか!?鬼ですかあなた達…」
エリさんは腕を組み直す
「完全な新型の上にワクチンがないインフルエンザ…あなたがきっかけで地球上で億の人間…最終的には人類の半数が死ぬからね」
「お…億…?」
「そう…私達死神の組織の1つであるテラーはそれを阻止するためにあなたの元にこの桜川ナナを送り込んだのよ?」
「は…はぁ…僕を殺してそのインフルエンザそのものの脅威を消そうとしたわけですね…」
レンジは少しずつ、飲み込めてきたみたいだ
「で、凶悪なインフルエンザに感染する君を殺す代わりにナナは想いを募らせる君と死者の世界で永遠に暮らせる権利をもらえるはずだったわけ」
「……」
ポカンとするレンジ
「で、こっちの白いブレザーの2人は私達のその行動を阻止する為に動いていたわけ」
「え?どうしてですか?同じ死神なのに…」
「死神にも色々あんのよ…まぁ死神にも組織が2つあるのよ」
「ふたつ…良く分かりませんけど…その組織同士で対立をしてたわけですか?」
レンジはなんだか複雑そうだ
「白いブレザーの方は普段は私達みたいな…強制的に命を狩る事は禁じてるんだけどね…だけど今回の…君のケースは違うのよ」
そう、それが疑問だったんだ
そして、エリさんは唐突に、とんでもない事を言い放つ
「坂崎レンジ君…君は死神の生まれ変わりなのよ」
「は?」
「は?」
私とレンジでハモってしまう
「闘神、カルマという死神の生まれ変わり…君は自覚ないでしょうけどね」
「か…かるま?な…何それ?私聞いてないよ!!」
「そりゃそうよ…言ってないもん」
もん!って…
「テラーは君の死神としての力を欲っしていたのよ…君を殺して再びカルマに戻す…そういう魂胆」
「僕が…死神…?」
レンジは自分の身体を見たり手を握ったり開いたり…とにかく複雑そうだ
「良い?ここからが重要よ…?んしょ…」
ーパサ…ー
エリさんは束ねていた髪の毛をほどく
風に吹かれてサラサラとなびく
「坂崎レンジ君…君はインフルエンザに感染するんじゃないのよ?」
「は…?さっきと話が真逆なんですけど?」
「インフルエンザに感染を、させられる、のよ…」
「させられる?だ…誰によ?」
私の質問に…エリさんは間を空けて答える
「テラーと委員会、両最高部会よ」
な…なんだって…!
「え…エリさん…?それって…どういう事…?」
「…テラーと委員会は…この終わりの無い魂の管理を放棄したいのよ」
「放棄って…私達の仕事じゃないのよ…大体なんでテラーと委員会でやんの?敵対してるのに…」
エリさんは続ける
「敵対と言ってもね、そんなのは表面上よ」
表面上…?
「案外、個人的には結構つながりがあったり仲が良いのよ…ね?ヒトミ♪」
「ハハ♪そうだな!」
ヒトミ…さんと呼べば良いよのか
マイコちゃんの上司の人がタバコを咥えながら笑う
「そして上層部となればもっと蜜月関係の死神もいるわ…」
「まぁ、仲が良いとは言ってもエリと私はもちろん、組織上では敵同士だ…」
ヒトミさんが補足をする
…でも、何で仲が良いの?
「私はテラー、ヒトミは委員会を、お互いに自らの組織を裏で監視…そしてお互いに報告し合ってるのよ」
「は…え?何で?」
自分の組織を監視?
「自分の組織が不正を働いたり、私達に不利益な行動をするのを防ぐためよ」
「……えと…つまり、お姉さん達は会社で言えば労組みたいなものなんですか?」
レンジが口を開く
ろ、ローソン?
「さすがは男の子ね!その表現は的確ね…頭の中身はスケベな事ばかりじゃないわね!」
「あ…あの…なんでエリさんはローソンで働いてるの?」
「ナナちゃん…お店のローソンじゃなくてさ…ろうそ、労働組合の事だよ」
「私は死神としての訓練だけじゃなくて勉強も教えたつもりなんだけどね…はぁ…」
エリさんがやれやれといった素振りを見せる
うぅ…
な…なんか…バカにされてる?
「普段は敵対してるが、お互いの組織の情報の交換や意見の出し合いをしてるのさ…私とエリは」
ヒトミさんが補足してくれる
「組織上は敵対してるものの、死者の世界や死神の組織をより良くする為にお互いに話し合い、行動してるわけよ」
そしてエリさんが更に補足をする
「しかしエリ、私に今回の事を何故詳しく教えなかった?そしてこの先どうするつもりだ?」
ヒトミさんの問いにエリさんは更に説明を続ける




