第3話
「………!!」
僕は目を覚ます
あのまま……ソファに横になったまま寝こけてしまったんだ…
それに…またあの夢…
楽しかった頃の夢…
………
しばらくは見てなかったのになぁ…
時計を見ると既に夜中の1時
もう日が回っていた
「シャワー…浴びよう…」
ゆっくりと身体を起こし、僕はそのままシャワーを浴びる
シャワーを浴びながら楽しかった頃を思い出す
でも…思い出したところであの時に戻れるわけなんてない
自分に言い聞かせる様に…シャワーの勢いを強くして痛いくらいのお湯を浴びる
そして、シャワーを浴び終えて自分の部屋に戻りベッドに入り目を閉じる
眠い…でも寝れない…
眠いのに寝れない…そんな不思議な感覚の中、僕は再び起き上がる
そして、机の引き出しの中から小さな箱を取り出す
「ナナ…ちゃん…」
呟きながらその箱を開ける
箱の中にはあの思い出が詰まった…あの指輪…
が……あるはずだった
「え…?」
確かに指輪はある
でも指輪は僕のブルーのガラスの指輪だけ
ナナちゃんの指輪が……無い!!
そう、ナナちゃんのピンクの指輪だけ忽然と姿を消していたのだった
「あ…あれ?え…?うそだ…!あれ!?」
僕は箱の中を何度も見る
無い!!ナナちゃんの指輪が無い!!
おかしい…!ナナちゃんが亡くなって…辛い思い出を思い出したくなかったから…あの後すぐにこの箱にしまったんだ!
あれ以来開けてないのに!
でも…すぐに僕は諦めがつく
「…忘れろ…って事…なのかな…」
何故無くなったのかは分からない…だけど、そんな気がした
その時、突然
(……違うよ)
「え?」
僕は辺りを見回す
(忘れちゃ………ダメだかんね?)
「な…え?」
耳に聞こえると言うよりは頭の中に響く感じに近い
(もうすぐだからね…)
ま、また聞こえた…!
いや…いやいやいやいや!寝ぼけてるんだ僕は…
彼女は亡くなったんだ…
もうこの世にはいない
僕の幻聴…!
そう!幻聴なんだ!
そう自分に言い聞かせる
朝起きたら部活もあるし、早く寝ないと…!
僕はベッドに入って目を閉じる
身体が睡眠を欲していたのか、眠れなかったはずの僕は不思議にすぐに眠りへと落ちていった…
ー翌朝ー
「おはようございまーす」
僕は通っている中学校
校舎の片隅にある部屋に入る
「おー!おっはよ!レンジ君!」
部屋に先にいたのは部活の部長
前田マナミさん
ポニーテールを揺らしながら換気の為か、部室の窓を開けている
「部長…早いですね?今日は一番乗りだと思ったのに…いっつも負けちゃうんだよなぁ」
「ハハー♪伊達に部長じゃないわよ?フフフ♪」
またポニーテールを揺らし部長は得意げにする
「まぁ今日は生徒会の方の用事もあったからね…特に早かったのよ?どぉっこらせっと…!」
オバさんみたいな掛け声と共に部長は椅子に腰掛ける
部長はこの学校の生徒会長も務めている凄い人
何故だか部長に逆らう生徒はおろか、先生も頭が上がる人はいないんだ
それに、凄く美人でスタイルも良い…
生徒からは絶大な人気があるんだ
そして、部長はマコ姉ぇの後輩でもある
マコ姉ぇ曰く、
私の全てを注ぎ込んだ弟子、らしい
良く分かんないけど
部長もマコ姉ぇの事を尊敬している
「しかし暑いわね…まだ午前中だってのに…」
制服のブラウスのボタンを開け、下敷きでパタパタと扇ぐ部長
胸元…見えてるんだけど…
今日は……ピンクか…
「レンジ君?私のブラジャーそんなに見たいわけ?」
「えぇ?あ…いや…その…分かってやってますよね?」
「まぁねぇ♪」
クスクスと笑う部長
「マナミ、レンジ君が困ってるでしょ?やめなさいよ…」
部室に入って来たのは、背の高いスラリとした女性
背中まであるロングの髪の毛が印象的な人
そしてなんだかいつも気高い雰囲気を醸し出してる…こう…宝塚みたいな先輩
喜多見ランという先輩
部長と同じく生徒会の書記長を務めている
「おー!ラン!コーラ買って来てくれた?」
「はいはい…まったく…朝から人にジュースのおつかいなんか頼んで来て…」
「せーんくす♪」
喜多見先輩が部長にコーラを手渡す
それをカブ飲みする部長
「ぷっはー!労働の後の炭酸はクセになるわ〜♪ゲフゥ♪」
「堂々とゲップをしない…!…?何かやってたの?」
喜多見先輩が部長に質問する
「ん?草取りよ…3年の昇降口の近くの花壇が草ボーボーだったからね」
恐らく、部長は朝早くからやっていたんだ…
部長はそういう人
誰も見ていなくても努力を怠らない人なんだ
だから生徒会長でもあるんだ
「おはようございます」
続いて入って来たのは北条マイコちゃん
同学年で同じクラスの女の子
肩まであるちょっと癖っ毛の女の子
「ふぃー…暑いですねぇ…あ…レンジ君おはよ!」
ニコッと笑いかけてくるマイコちゃん
「さて…時間ね…始めるわよ!」
一堂、席について部活を開始する
「おはよ…ございます…」
その時、申し訳なさそうに部室に入ってきたのは
武田ノブアキ
マイコちゃんと同じ様にクラスメイトだ
「はいはい!遅刻遅刻!さっさと座りなさい!全く…君はなんでこう遅刻大魔王なのよ!」
「すみません…でも朝9時って早くないですか?」
「アンタね…あたしゃ今日は6時に来て草取りしてんの…ぶっとばすわよ?」
「すみません…えへへ…♪」
「怒られてるのにニヤニヤしない!」
まったく…ノブアキは相変わらずだな…
そして、部活が始まる…