第108話
……
父さんが肩を震わせて泣いてる
黒い服を着ている
周りには親戚…もちろんマコ姉ぇもいる
マコ姉ぇも泣いてる
「…お母さん、起きないね」
幼少の僕
母親が病気で死んだという事が理解出来ない
「…お母さんは…起きないんだ」
目を赤くして、父さんは僕にそう告げる
まだ…僕は2、3歳くらいか
母さんの死を理解するほど成長はしていない
でも、父さんは言った
「…お母さんはね、死んじゃったんだ…」
「死んじゃった?」
普通なら
これから母さんはお星様になるとか
そんな…綺麗な言葉で濁すだろう
でも、父さんは違った
誤魔化す事無く、幼い僕に真実を告げた
「もう、会えないんだ…お母さんとはもうお別れなんだ」
父さんは僕を見つめながらそう言った
声は震えている
瞳には涙が溜まっている
でも…
幼い僕の前で大泣きする事は無かった
堪えていたんだと思う
でも、僕は覚えている
親族が帰り、誰もいなくなった家
母さんの亡骸に抱き付いて大泣きしていた事
僕はそっと…物陰から見ていたんだ
母さんは元々病気じゃなかった
むしろ、男の父さんよりも元気で…
父さんを明るく支える
そんな人だった
そう
まるで、今のナナちゃんみたいな人
仕事で失敗した父さん
そんな時、落ち込む父さんを
(何しょぼくれてんのよ?男でしょ?次に成功してみんなをアッと言わせりゃ良いじゃない!?)
父さんの肩をバシッと叩く母さん
(クビになったら?そーしたら私が仕事してアンタとレンジを養ってやるわよ♪)
そんな事を力強く…笑顔で言ってのける母さん
(私がいる…だから…2人…ううん…私とアンタとレンジ、3人で一生懸命に頑張ろ!?)
幼い僕を抱っこして優しく微笑む母さん
良くこんな風に…元気良く、そして優しく父さんを励ましていた
母さんはある日唐突に死んだ
くも膜下出血で
あまりに唐突な死
残された父さんと僕
母さんが死んだ後
何年かして、父さんは幼い僕の事もあって、再婚を考えていた
だけど結局しなかった
何故かはわからない
だけど、1度…
1度だけ父さんは僕に言ったんだ
「俺には…死んだお母さん以外は無理なんだ」
って…
純愛なんだろうか
父さんは幼い僕に尋ねた
「将来、レンジはどんな人と結婚したいんだ?」
「結婚?んー分かんない」
小さな僕にはその質問は良く分からなかった
「ナナちゃんか?」
「ナナちゃん?良くわかんないよお父さん…」
「そうだな…お父さんとお母さんみたく一緒に暮らしていく人だ」
まだナナちゃんに恋心が芽生える前の事
「そっかぁ…んーだったらナナちゃんかなぁ?一緒に遊んでるとね!すごく楽しいし!」
恋心は無かったものの、僕はそう答えた
「ナナちゃんか…そうか…あの娘ならなぁ…」
父さんもナナちゃんの事は知ってる
ナナちゃんなら
そう呟いたきり、父さんは何も言わなかった
僕は……
理想の人と恋人になれたのか
いや…
違う…
理想の恋人同士にならないといけない
ナナちゃんと2人で…
手を取り合って…
2人で…




