来訪者ドウェイン
ショートショートです。
地球温暖化。絶えることの無い紛争。自然の猛威。破壊。犯罪。隣人への恐怖。
2XXX年。人類が抱えるストレスはとどまることを知らなかった。
未来への希望は皆無。このまま滅亡への道を歩むのではないかと、全人類が共通の不安を抱えていた時。一筋の希望の光が舞い込んできた。
一人の男がやってきたのだ。男は光に包まれながら某国主要施設の庭園に降り立った。
名前は「ドウェイン」なんとその男は、未来の世界からタイムワープして来た時間旅行者だと言うのだ。
某国首相はさっそく彼と接触を試みた。その男ドウェインの外見は、現代人と比べ、体は小さいが頭部は若干大きい。機械の発達で運動能力こそ衰えたものの、頭脳はさらに発達を遂げた結果だった。それは現代人がシミュレートした未来人の相貌にガッチリと一致していた。ドウェインが未来人だと言う確信はさらに深まった。
ドウェインの話す言葉は現代人のどの言葉にも一致しない謎の言語ではあったが、ドウェインの持参した機械の効果で、どういうことを伝えているのかを理解することが出来た。ドウェインは語る。
「私はこの時代のはるか未来からやって来ました。人類の念願だったタイムマシーンの発明に成功し、この私が人類初の時間旅行者としてこの時代にやって来たのです。この時代の方々は大きな不安に包まれ、希望を失っているようですが、それは大丈夫です。私の時代には戦争や格差。環境問題。一切の負の要素を克服しています。人々は笑顔に満ち、壮大な緑。清涼な空気が世界を潤しています。人類は滅びません。」
その話は世界を震え上がらせた。人類は滅びない!地球も滅びない!未来は滅びない!人々は争うことを辞め、環境保全に全力を注いだ。悪を憎み、隣人を愛した。一致団結。世界がまとまったのだ。
ドウェインは救世主として崇められた。ドウェインが来訪した日は世界共通の祝日になった。
「我々の未来は明るいぞ!!!」
そして10年が経った。
人類は、地球上の生物は全滅した。
ドウェインが来訪して10年が経った時、巨大な隕石が地球に激突し、世界は炎に包まれ、文明は10時間で消滅した。
やがて数十億の年月が流れ、地球に再び奇跡が起きる。生命が誕生し、さらに数十億年後。ドウェインのいた世界が繁栄するようになった。
ちなみに記念日の名前は「ドウェイン降臨祭」