1話 でも、ひょっとして
主人公の女の子の名前はまだ出てきていません。
目を覚ますと視界がゆらゆらと揺れていた。
周りは白くもやのようなものがかかっている。
頭を打ったのだろうかと思い手を当ててみても血はでていないしへこんでもいない。
私は基本天国とか地獄は信じていないのでここはそういう場所ではないと思った。
もしあったのならば人間なんて残酷なもので、食料用に毎日豚や牛を殺しているし、ダニなんて踏んづけてだれでも殺しているので全員地獄行きだ。
でも神なんてものがもしいたら、自分を醜い顔に作ったことを恨み殴ってやりたいと思っていたのに。いや、この場合は生んだ両親を恨むべきなのだろうか。
私の母は美人だと言われているし、私自身もそう思う。
妹だって痩せていて綺麗な顔をしている。
以前こう言われたことがあった。
「妹は可愛いのに・・・」
似たとしたなら父親だろうと思われるだろうが似ていると言われたことはない。
そういえば父も母に一目惚れして結婚したっていってたっけ。
そう聞いた時点で私は父を避けるようになった。
結局男なんてみんな顔で女を選ぶんだ。
「最低」
起き上がり首をふるふると振るう。電車に引かれた割にどこにも異常はなかった。
人間ってこんなに頑丈だっけか。
ここはどこで
一体何が起きて
どうしてこうなったんだ
無い頭で必至に考えていると、背中に妙な違和感を感じた。
つんつん
私が急にいなくなったってことはお父さん達警察が動いているだろう。
こんな訳の分からない所にいる自分を探せるのか。
つんつん
そもそもここは日本で人がいるのだろうか。
海外だったらどうしよう。
英語分からないしな。
でも実は私は勉強嫌いなほうじゃない。
勉強は「したらしただけ」身に付くものだからだ。努力次第で何とでもなる。
授業中も先生の話を聞いているだけでいいし。
問題は「してもしても」どうしようのない事だ。
身長なんて頑張ったって低くはならないし。(私は身長171㎝とでかい)
お兄ちゃんが欲しかったが今さらできない。
性格はよほどの事がない限り変えられない。
つんつん
考えている中、背中の違和感がようやく分かった。
誰かに背中を突かれているんだ。
今更ながら、よかった、人がいるんだと思った。
でも誰だろう。
警察?にしては早すぎるし。
どこかの民族がそこら辺で拾った棒で突いているのだろうか。
だとしたらちょっとムカつくぞ。
怖いけど1、2、3で振り返ろう。
1、2、3!
振り返ると、にこにこした女の人が指を出していた。
怖い人だったらどうしようと思っていたがよさそうな人で安心した。
かなりの美人で、年は20代前半くらい。
肩までのウェーブがかった髪で、金髪が美しく輝いていた。
(いいなぁ、こんなに美人だったら人生楽しいだろうな)
なんて場違いな考えを巡らせた。
美女はぎゅっと私に抱き着いてきた。
膨らんだ形のよい胸が私の胸に当たる。
ん?
またもや違和感を覚える。
美女の胸の感触は感じるのに、自分の胸は真っ平ら。
上からの視線でも分かる。
「アレンったら、どこにいってたの?」
猫のような可愛らしい声だ。
自分のことをアレンと呼ぶ謎の美女の笑顔に胸が高鳴った。
今までに女の人に感じたことのない、ふんわりとした気持ちになる。
従兄のことを好きな気持ちとよく似ている気がする。
もしかして私、この美女のこと好きなのか。
胸がない・・・私と一緒です。