プロローグ
不定期連載になります。
殺人を犯す奴は大抵無職だと勘違いしている奴らがいる。
「住所不定、無職の~容疑者は~」
とよく言っているが、その言い方はニートに対する侮辱だ。
テレビもいちいち職業を言わなくてもいいだろうに。
無職というテレビで発せられる言葉が人々の心に根付くだけで、例外もあると思う。
偉い議員さんが女子中学生をホテルに連れ込んだ。
警察上層部の人間が事件を隠ぺいした。
という事件も実際問題おきている。
ニートな奴全員が事件を起こすんじゃない。
世の中が昔に比べニートが多くなったので、事件を起こした奴の無職の割合が多く、たまたまニートなだけなのだろう。
那由多にいる無職生活をエンジョイしている人々のうち、ほんの一握りの奴が悪いことをしているということを、近所の噂好きのおばちゃん達にも知っておいてほしい。
私もニートだが、人生の負け組だと思う理由が他にもある。
外見は下の下だし、性格は人見知りで自分の言いたいことが言えずいつも1人ぼっち。
でも私の父親は違う。父親は警察官で、万引き犯を5人捕まえたことがあるし、車上荒らしを現行犯で逮捕したこともある。
小さなことだが私の住む田舎町にとっては大きな事件だ。
でも子育てに関してはノータッチで、私の事は母に任せきりの所だある。
そのせいか、私は男というものを嫌っている。
男嫌いの理由はもう1つあって、(こっちが本題なのかもしれない)
私は学生の頃、醜い顔のせいで男子にいじめをくらったことがある。
まだ私が男子を甘く見ていた頃、とある友達に、A君にラブレターを出してきてほしいと頼まれた。
A君というのはサッカーが上手で顔が良く、女子達からモテていた少年だった。私はむしろすかしていて嫌いで、前々から気に食わないやつではあったのだが。
私はA君にラブレターを渡したのだが、返ってきたのはお礼の返事ではなくグーパンチだった。
もろに腹に食らった私はしばらくもだえ苦しんだ。
A君が言うには私にラブレターを触られたのが気に食わなかったらしい。
私もそのことを親に言えば良かったのだが心配はかけたくなかったし、母親は特にヒステリックなのでAの家まで殴り込みに行きかねない。
大事にはしたくなかったのだ。
私はヒステリックな母の反動で事なかれ主義で、ケンカや言い争いは面倒だし苦手だ。
英語の塾でも、話したことのない男子から罵声を浴びせられ、ショックで1時間だけだが声が出なくなった。
その時、先生や周りの生徒は私を憐みの目で見ていたっけ。
学校の廊下を渡っただけで言われたこと。
「ブスが通った」
私はあんたに吟味していただく為に生きてるんじゃない!!
おでこが広い私は、クラスで「でこ」と呼ばれたし、脂肪が多いので脂肪酸やグリセリンと呼ばれたこともある。
「死んで人生をやり直したいな」
そもそもを全部男のせいにして生きている私にとって、男と女しかいないこの世界は地獄である。
ゆらゆらと幽霊のように歩き、こちらに向かって来る電車に近づく。
今思えばその時の私は軽いうつ病だったのかもしれない。
「危ないっ!」
「きゃあ、女の子が!!」
私は自分の足にとられ、線路に放りだされてしまった。
自分でもひやっとした。
今までの人生が走馬灯のように駆け巡ってきた。
親の笑い顔や、A君を殴っておけばよかったなという後悔や、男嫌いな私が唯一好きになった従兄の青年の顔が頭に浮かんだ。
(告白しておけばよかったな)
心の中で言い残し、私は突然の死を迎えた。
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