☆第二章・簡易把握版
第二章のお手軽把握版。
1・ウォルヴァンシア王国と、この世界に慣れようと必死に頑張る幸希。
そんなある日、叔父であるレイフィードから、北の大国である、竜皇族の国、イリューヴェル皇国の大問題児であり、第三皇子のカイン・イリューヴェルが自分達の王国へ遊学にくる事を伝えられる。評判がド級に最悪な皇子様の遊学に不安を募らせる幸希だが、その不良皇子様と、ウォルヴァンシア王宮の敷地にある小さな森の奥の図書館で最悪の出会いをしてしまう。
冗談半分で押し倒されてしまった幸希は、カインをレイフィード国王から習った防犯用の術で退けるものの、そのショックは大きく……。
何とか、ウォルヴァンシアの面々やアレクの気遣いと優しい心づかいのお蔭で元気を取り戻すものの、憩いの庭園でカインと再会してしまう。
どこまでも自分とアレクを侮り馬鹿にするカインに感情を抑えられなくなってしまった幸希は、その腹の立つ顔を平手打ちしてしまい……。
もう二度と会うものかと、カインを嫌った幸希だったが、王宮図書館で三つ子達と共に昼寝をしながら魘されている彼を目撃したり、三つ子に連れて来られたカインを部屋に入れる羽目になったりと、散々な目に遭いながらも、徐々に彼の本当の面を知り始めていく。
2・カインへの嫌悪や抵抗感も薄れ、友人関係を築き始めたある日、幸希は大怪我をしたカインが小さな森の奥にある図書館に向かう姿を目撃してしまう。
その後を追っていくものの、自分の護衛騎士であるアレクディースにカインとの交流を反対され、優しく穏やかなはずのアレクディースと仲違いをしてしまった……。
アレクディースの反対と苛立ちを振り払ってカインの許に走る幸希。
治療を拒むカインを強引に説き伏せ手当をした幸希は、またひとつ、カインとの間に絆を作り上げた。
しかし……、その翌日、憩いの庭園で話をした後、カインが回廊で倒れてしまった。
王宮医務室へと運ばれたカイン……、王宮医師の二人が出した診察の結果は、幸希や周りの者達が予想もしなかった、――禁呪と呼ばれる他者からの怨念と憎悪の籠った最悪の呪い。
カインの身体を蝕み始めたそれは、徐々に彼の命を奪っていく恐ろしいものだった。
王宮医師のセレスフィーナとルイヴェルが徹夜で禁呪を解こうと奮闘する傍ら、幸希の身に宿る未知なる力により回復の兆しを見せたカイン。
その力を治療に役立てる為、王宮医師達はレイフィード国王に幸希の力を使わせてほしいと進言する。それを了承した幸希は、採血と、万が一の事態で自分の存在が必要となった場合、儀式が必要となる事を聞かされ、カインの治療に積極的に協力し始めた。
しかし、ある日の晩の事……。ユキは胸騒ぎのする夢を見た後、衝動的に王宮医務室へと向かう事にした。けれど、途中まで同行をしてくれていたロゼリアの気配が消え、幸希は王宮医務室で治療中のはずのカインと遭遇する。
身体の不調を感じさせない、不穏な笑みを抱くカイン……。
その存在が彼本人ではないと気付いた幸希は、正体不明の黒い靄とカインにそっくりな別の誰かに囚われかけてしまう……。
3・窮地に陥った幸希だったが、アレクやロゼリア、ルディー、レイフィード国王と王宮医師の二人に助けられ、カインにそっくりな目の前の人物が、禁呪そのものだと知る。
黒い靄、瘴気と呼ばれる負の力により現れる獣達……、それに立ち向かう面々。
レイフィード国王の力により退けられ、囚われた禁呪。
事態は一応の収束を見せたかに思われた……。しかし、王宮医務室で眠りに就いていたカインの身に異変が起こり、その身を蝕む禁呪の力が加速してしまった。
身体中に呪いの証である紋様が這い回り、王宮医師達は自分達が作っていた解呪の術式が間に合わない事を悟ると、幸希の血を用いた解呪の儀式を決行する事を、レイフィード国王に願い出た。
そして、翌日……、『叡智の神殿』と呼ばれるウォルヴァンシア王宮の地下で儀式を行ったものの、王宮の一角に隔離され、実体を持ちながらも囚われの身となっていたはずの禁呪の意志が、カインの身体を乗っ取ってしまう。
瘴気により生み出された獣達、囚われてしまい何処かへと禁呪の意志に支配されたカインと共に消えた幸希。二人の後を追う為に、瘴気の獣と戦い始めたアレクディース達。
4・ウォルヴァンシア王国内にある山へと攫われた幸希は、カインの身体を支配する事に成功した禁呪によって、暗い崖下へと落とされてしまう。
転移の術によって現れたウォルヴァンシアの面々に助けられ、カインを禁呪から解き放つ為に再び自身の血を捧げた幸希は、王宮医師達との協力により、無事、禁呪からカインを救う事に成功する。しかし……、禁呪を行使した者の影に潜んでいた存在が、瘴気の獣達を使い幸希達へと襲い掛かる。一人だけ見えない壁の向こうで孤立した幸希は、意識を保ったまま身体を操られそうになっているカインを救う為、自らの意志で身体の一部を傷つけ、その血を彼へと飲ませ、禁呪に抗う力を与えた。
自由を取り戻したカインは、幸希達を守る為に竜皇族に伝わる秘術を行使し、自分の中から禁呪を強制的に弾き出し、自身が作り上げた魔力の檻へと閉じ込める。
そして、影から高みの見物を決め込んでいた暗躍者をもその檻へと引き摺り込もうとしたのだが、突然現れた巨大な謎の陣により、魔力の檻とカインは崖下へと転落してしまう。
イリューヴェル皇帝でありカインの父親でもあるグラヴァード・イリューヴェルの介入により、カインはその命を救われた。
5・禁呪の脅威が消え去り、幸希達には以前の日常が戻り始める。
幸希のお蔭で、少しだけ自分の父親、イリューヴェル皇帝を受け入れる事が出来始めたカイン。
禁呪の収束と、イリューヴェル親子の関係が一応の落ち着きを見せた後、幸希は叔父であるレイフィード国王や王宮の人々へのささやかな感謝の形である、ガーデンパーティーに関する計画を進め始める。
しかし、今度はアレクとカインの二人から恋愛感情を向けられてしまい、幸希の心は大パニックに……。アレクからの真っ直ぐな告白と、スウォルシア山の洞窟で受けた、カインからの告白。
スウォルシア山では不可解な出来事にも遭遇したけれど、幸希にとって重大事なのは、二人からの想いだった。幸希自身は知らないものの、彼女は狼王族の中ではまだ『少女期』と呼ばれる、恋愛事に困った性質を抱くお年頃……。
想いを向けてくれる異性に過剰な反応を示し、自身にとって唯一人の相手を見定めるのに時間がかかりすぎるのが特徴だった。
幸希に余計な情報を与えすぎて心の迷いを大きくしてしまう可能性を危惧した面々は、『少女期』の事については伏せておく事に……。
真剣に、アレクとカインからの想いに答えを返そうと真面目に悩みすぎる幸希だったが、ついに迎えたガーデンパーティーの日、彼女は二人をパーティー場所とは別の場所に促し、その答えを告げる。――今の自分にはどちらにも応えられる想いがない、と。
嫌われるのを覚悟で伝えた告白の答えだったが、意外な事に、それは、アレクとカインのやる気をさらに掻き立てる事になってしまった。
幸希の想いがどちらにも恋の花を咲かせていないのなら、自分達の手でその想いを育てればいい。
そう新たに決心し直した二人を前に困惑する幸希だったが、最終的には、アレクとカインからの提案を受け入れる事になるのだった。