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ウォルヴァンシアの王兄姫~淡き蕾は愛しき人の想いと共に花ひらく~  作者: 古都助
第二章『恋蕾』~黒竜と銀狼・その想いの名は~
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親子のその後と疑問とクリーム

「……カインさん、大丈夫でしょうか」


 休息所での出来事から数日後。

 私はレイフィード叔父さんと一緒に、カインさんの部屋へと足を運んでいた。

 否定し、拒み続けてきた相手であるイリューヴェル皇帝さんと、向き合う事を決めたカインさん。彼は今、この扉の奥にいる。

 中から伝わってくる、不気味なほどに静まり返った気配……。

 かれこれ、一時間程は続いているだろうか……。

 あのカインさんが、声を荒げたり暴れるでもなく、部屋の中で頑張っている。

 自分にとって本当の自由を手に入れる為に、ずっと背を向けてきた過去に別れを告げる為に……。


「あの子にしては、予想外というか……、ちゃんと頑張っているみたいだね」


「はい……」


「大丈夫だよ、ユキちゃん。何も起こらないって事は、きちんと親子が向き合っている証拠でもあるしね」


「そう……、です、ね」


 不安を抱きながら扉を見つめる私の頭に、優しいぬくもりの宿る手のひらを乗せたレイフィード叔父さんが、ニッコリと微笑んでくれた。


「ふふ、だいじょ~ぶ、大丈夫」


「レイフィード叔父さん……、はいっ」


 大丈夫、カインさんは、自分の意思でお父さんと向き合う事を受け入れてくれた。

 その先にどんな結果が待っていても、彼は歩んでいける。

 新しい気持ちで、自分らしく生きていける、カインさんがずっと願っていた道を。

 そう、何も心配する事はない。

 私はここで、新しい一歩を踏み出した彼の笑顔を見る為に、扉が開く瞬間を待っていれば、それでいいのだから。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「おい、もういいぞ」


 それからまた少しだけ時が過ぎ、待ち続けていたその時が訪れた。

 カインさんの手によって開かれた扉。

 この時に至るまで、部屋の中から言い争う声や大きな物音は聞こえてこなかった。


「カインさん」


「待たせて悪かったな。入れよ」


「はい」


 それはとても、静かで……、穏やかさに満ちた声音だった。

 目の前にいるのは正真正銘、私の知っているカインさんであるはずなのに……、どうしてだろうか。前よりもどこか、……大人になったような雰囲気が感じ取れた。

 

「……あ」


「ん? どうした?」


「い、いえ……」


 まじまじとカインさんの顔を見上げていた私は、その目尻に涙の痕を見つけてしまった。元々赤い、血の真紅にも似たその二つの瞳に浮かんでいる名残は……。


(悲しいから泣いたわけじゃないんですよね? カインさん)


 表情を見ていればわかる。今のカインさんはもう、迷子の子供なんかじゃない。

 確かな光を受け止めてくれる温もりを得た、明るい気配のする表情をしているから。


「何だよ? ニヤニヤして」


「ふふ、何でもありません」


 呆れ気味に見下ろしてくるカインさんにニッコリと安堵の笑みを浮かべて誤魔化し、私は部屋へと足を踏み入れていった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 カインさんが大暴れをした、……前回の、大騒動。

 犠牲となった家具や丁度品は半端なく、壁や窓にもその被害が出ていたはず。

 だけど、室内は元通りの綺麗な状態に戻っていた。

 多分、壊れた物や傷ついた物を修復する事が生業の、修復師の人達に手を借りたのだろう。以前に騎士団の壁が総崩れを起こした際にも、修復師の人達が綺麗に直してくれた記憶がある。流石はプロ。見事なお仕事ぶりだ。

 凄いなぁと室内を見まわしていた私は、テーブルの方にイリューヴェル皇帝さんの姿を見つけた。目元に服の袖を当て、少し俯いて肩を震わせている。

 きっと、カインさんと本音で話し合う事が出来たからこその涙なのだろう。

 テーブルの席に腰を下ろしたレイフィード叔父さんに倣い、私も席に着く。


「で、心ゆくまで話し合えたかな?」


 カインさんとイリューヴェル皇帝さん、二人の親子の間に流れる穏やかな気配を眺めながら微笑むレイフィード叔父さんには、全てお見通しなのだろう。

 全く手のつけられていなかったらしきクッキーのお皿から、カインさんがそれを一枚手に取った。そして、少しだけ照れ臭そうに横を向きながら、さくり。


「結局……、俺の答えは変わんねぇんだけどよ」


「心境的にはどうだい?」


「……まぁ、少しは、晴れた気がする、な」


「君が落ち着いてグラヴァードの相手を出来ただけでも収穫ありだよ」


 そんなもんか? と、星型のクッキーを咀嚼しながら、ちらりと自分のお父さんの方を見遣ったカインさんだけど、すぐにまたプイッと顔を背けてしまう。

 ふふ、うん、これは間違いなく照れ隠しだ。

 イリューヴェル皇帝さんの方も……、あ、テーブルに突っ伏して大号泣してしまっている。多分、カインさんがもう自分に対して完全否定の拒絶の視線を向けなくなったから、心底嬉しくて堪らないのだろう。


「グラヴァードの方はどうだい?」


「そうだな……。満足……、とまではいかないが、カインが俺を心から受け止めてくれたお蔭だろうか」


「おい、気持ち悪ぃ言い方すんなっ」


「前よりは、心が軽くなったと言えるな……。まぁ、俺としてはすぐにでもカインにイリューヴェルへ戻ってもらい、家族の関係をゆっくりと修復していきたいと思っているんだが」


 顔を上げたイリューヴェル皇帝さんが、気分を落ち着かせるように冷めたティーカップの中身に口をつける。カインさんに拒絶されて、王宮の一角で大量の小鳥達に宿り木代わりに押し潰されかけていた時とは違い、本当に晴れ晴れとした、落ち着きのある表情をしている。

 長年に渡って向き合う事すら出来なかった親子の心に、ようやく訪れた安息の時……。

 

「おい、親父。その件に関しては、俺の気が向いた時にだけ里帰りするって事で納得しただろ?」


「あぁ……、それは、わかっているんだが、な」


 そこでちらりと、イリューヴェル皇帝さんが私の方に視線を定めると、感慨深そうな眼差しでひとつ頷き、またカインさんへと向き直った。何だろう……、今の。

 

「まぁ、グラヴァードの気持ちはわかるけどね。カインが自分で決めた事だし、それを見守るのも、良いお父さんになる第一歩、じゃないかな?」


「そうだな……。幸いな事に、俺達にはまだまだ時間がある。暫くはそうさせて貰う事としよう。カイン……、健康には気をつけて、頑張るんだぞ」


「……おう」


 お父さんの穏やかで優しい眼差しを受けて、カインさんは少しだけ耳の辺りを赤くしながら返事を返した。うん、やっぱり照れてる。微笑ましいなぁ。


「おい、ユキ」


「何ですか?」


「ニヤニヤしすぎだ。何考えてるか丸わかりだぞ、お前」


「ふふ、すみません。自然に顔が緩んじゃって」


「はぁ……」



 私の態度に指摘を入れてきたカインさんだけど、本当は、色々とお父さんとの事で思うところがあるのだろう。

 心の中で整理しきれていない感情や、受け入れ始めたもの。

 そういう、今までとは違う感情に戸惑っているのかもしれない。

 だから、私に注意を向けて、お父さんの方を見ないようにしているのだろう。

 そんな今のカインさんの様子は外見よりも幼く、少年めいた可愛らしさを感じられるものだと思えた。


「ふふ」


 クッキーを食べながら笑みを深めた私は、ふと、気付いた。

 

「あの、カインさんは……、いつ、ウォルヴァンシアを出て行くんですか?」


「……は?」


 私が素直にそう尋ねると、カインさんの片眉がぴくんと不機嫌全開で跳ね上がった。同時に、レイフィード叔父さんとイリューヴェル皇帝さんも、飲んでいた紅茶にむせてしまう。ただ疑問に思った事を尋ねただけなのに、……何故?

 だって、カインさんは遊学が終わったら、イリューヴェル皇国には帰らず、旅に出ると、そう言っていた。だったら、禁呪の件が片付いた今、ウォルヴァンシアに留まっている理由はないはず、なのだけど……。

 もう一枚サクサクとクッキーを口の中で味わい始めた私に、カインさんがゴンッ!と顔をテーブルに突っ伏して小さく何か独り言をぶつぶつと漏らすのが聞こえてきた。


「はぁ~……。何言ってんだ、この馬鹿っ」


「カイン……、道のりは長そうだな?」


「ふふ、そう簡単に願いが叶うと思ったら大間違いだからね~。いやぁ、ユキちゃんがまだ気づいてなくて、何より何より」


「あの、私……、何か場違いな事でも言ったんでしょうか?」


「大丈夫だよ~、ユキちゃん。何でもないからね~」


 どんよりと、暗い雲に覆われているかのようなカインさんの姿。

 その様子を見る限り、何でもない、とは思えないのだけど……。

 イリューヴェル皇帝さんに背中をポンポンと励ますように叩かれているカインさんに首を傾げていた私は、また口を開こうとして遮られた。


「誰が出て行くかよ……っ」


「はい?」


「残念だったな! 俺はこれからも当分、この国の世話になるんだよ!! ふん!」


 椅子を蹴倒す勢いで立ち上がったカインさんが、テーブルをバンッと叩いて私を睨みつけてきた。

 敵意ではなくて、どことなく……、恨めしそうな気配がするのは、何故?

 自分が何か悪い事を言ってしまったのだろうかと記憶を探ってみるけれど、……う~ん、普通に質問しただけ、の、はず。

 じゃあ、どうしてカインさんは不機嫌なのだろう?


「カインさん、怒ってます?」


「別に」


「ちゃんと言ってくれなきゃ、わかりませんよ?」


「知るか。ったく……」


 う~ん、単刀直入に感情をぶつけてくるカインさんらしくないなぁ。

 ……でも、そっか。カインさんはまだ当分の間、ウォルヴァンシアに留まるんだ。

 その事実だけを頭の中で呟くと、何だかほんのりとあたたかいものが胸の奥に広がった気がした。


「素直じゃないねぇ~……。まぁ、僕としては大助かりだけど。ともかく、カインのウォルヴァンシア滞在は、今のところ無期限で本人の気が済むまでって事になったなんだよ。まぁ、ウチは基本的に賑やかだし、一人増えても同じだからね」


「じゃあ、これからもよろしくお願いしますね。カインさん」


「――っ、……お、おう。暇があったら、また、遊んでやるよ」


「我が息子ながら……、わかりやすい反応だな」


「君の息子だからね~……。不器用で照れ屋なとこなんて、本当にそっくりだよ」


 何故か、私に対してもぷいっとそっぽを向いたカインさんの耳は、イリューヴェル皇帝さんにそれをした時と同じように赤かった。

 本当に、出会った頃は最低最悪の人だと思っていたのに……。

 その物言いの荒さや態度から覗く、彼の不器用な優しさ。

 人の温もりに慣れていないが故の可愛らしい反応があると気付いたのは、いつからだっただろうか。きっと今顔を背けたのは、私の反応を見て、それを嬉しい事だと感じてくれたからに違いない。ちらちらと私の方を気にしている真紅の視線を感じながら、私は口元を笑ませる。


(アレクさんの狼姿とはまた違った可愛さがあるなぁ……)


 カインさんにそれを言ったら絶対に怒るのだろうけれど、大人の男性が時折垣間見せる意外な面というものは、所謂、ギャップ萌え的なときめきがある。

 ……な~んて、お母さんが以前にそう教えてくれた事を思い出した私は、顔を背けているカインさんを眺めながら、クッキーをもう一枚手に取った。


「だがカイン、この国で世話になるのなら、それ相応の働きもしなくてはならないぞ」


「おう。とりあえずタダで世話になる気はねぇからな。王宮の雑用でも何でもやってやるよ。ついでに、城下で仕事を見つけるのも面白そうだしな」


「それはいい心がけだね~。君が充実した日々を過ごせるように、僕も色々頼んじゃおうかな~」


「カイン、レイフィードから無理難題を押し付けられたら全力で逃げろ。いいな」


 爽やかな笑みを湛えてカインさんを歓迎するムードになっているレイフィード叔父さんをぎろりと睨みながら、イリューヴェル皇帝さんが早口でカインさんに言い含めた。確かに、ちょっと何か企んでる気配を感じないでもないけれど……、きっとレイフィード叔父さんなりの歓迎の仕方なのだろう。


「別に俺が出来そうな事だったら、こき使われても構わねぇんだけどな」


「甘い! 甘いぞ、カイン!! お前はこいつの本当の恐ろしさをまだ目の当たりにしていないから、そんな生贄同然の発言が出来るんだ!!」


「学院時代に何があったんだよ、親父……」


 ぶるぶると震えながら、自分の持っていたティーカップの持ち手にあたるハンドル部分をビシ、ビシシと、亀裂を走らせて大声を上げたイリューヴェル皇帝さん……。

 一体お二人の過去に何があったのか。

 聞いてみたい気もするけれど、多分聞いたら絶対に後悔するような予感しかしないので、やめておこう。

 カインさんも鬼気迫るイリューヴェル皇帝さんからの忠告に、コクコクと頷いて気を付けるように返事を返している。あぁ……、親子二人を見ているレイフィード叔父さんの優しいブラウンの瞳が、瞳がっ……。


「グラヴァード、あとで久しぶりに手合わせでもしようか?」


「なっ!!」


「いやぁ、久しぶりだから腕が鳴るな~、手加減なしでいいよね?」


「い、いや、レイフィード、それは、あ、あの、だなっ」


「あぁ、それとも、今のこの場でじゃれ合うのもいいかもしれないね~」


 ゆらり……。

 鬼神の如き暗黒極まりないオーラを纏ったレイフィード叔父さんが、席を立ち上がった。それと同時に、ガタッとイリューヴェル皇帝さんが椅子を後ろに倒して、逃亡に入り始めてしまう。あぁ、イリューヴェル皇帝さんっ、全身から一気に血を抜かれたかのような顔色にっ!!

 逃亡体勢に入った哀れな子羊。無事に逃げられますように、と、応援をしてあげたくはなったのだけど……。


「ふふふふ。どこに行くのかな~? グラヴァードぉおお~?」


素早く移動したレイフィード叔父さんが扉の前に立ちはだかり、その足元から生まれてきたのは……、無数の蔓。しかも、安定のビッシリ棘つき。


「れ、レイフィード……っ」


「さぁ、語り合おうか? ゆっくりと、友人同士の大切な話を、ねぇ?」


「ひぃいいいいいい!!」


 命令:イリューヴェル皇帝を捕獲せよ!!

 ――の、コマンドが働いたのだろう。

 レイフィード叔父さんが操っている無数の蔓がイリューヴェル皇帝さんに向かって脅威を放ち、あっという間に哀れな子羊が空中で捕獲されてしまった。


「ぎゃぁあああああああっ!! れ、レイフィード!! おろ、せっ!! うぐっ!! ちょっ、こら!! 痛っ!! 棘を刺すなぁあああああああっ!!」


「か、カインさん、どうしましょう」


「別にいいんじゃねぇか? それよりも、お前さ……」


「はい?」


 自分のお父さんがレイフィード叔父さんからとんでもない目に遭わされ始めたというのに、カインさんはまるで気にしていない。

 クッキーのお皿の横にあった、少し塩辛い味のスナック菓子に似たそれを摘まんでから私に話しかけてきた。

 視線は私の方に向いているけれど、続きを言うわけでもなく、ぱくりとお菓子を頬張るカインさん。

 ボリボリボリ……。カインさんがお菓子を食べている音。

 イリューヴェル皇帝さんの阿鼻叫喚な悲鳴と、レイフィード叔父さんの笑い声が響き渡る室内で、私はどうしたものかと視線を彷徨わせる。

 イリューヴェル皇帝さんを助けに入った方が良い気もするし、だけど、カインさんの何か言いたげな雰囲気も気になる……。――と、その時。


「失礼します。……おや、楽しそうですね、両陛下」


「ルイヴェルさん!! その感想は物凄くおかしいと思います!!」


 中からの許可も何のその、銀フレームの眼鏡の中心に指先を添えながら入室してきた王宮医師のルイヴェルさんが、室内の騒ぎを見た瞬間に微笑ましそうな音を零した。確かにレイフィード叔父さんは楽しそうだけど、イリューヴェル皇帝さんにとっては地獄としかいえない光景だ。だというのに、ルイヴェルさんは全く動じもせずに、その様子を眺めながら私にツッコミの返事を向けた。


「この程度、子狼が親狼に甘噛みをされて可愛がられているようなものですよ。問題ありませんね」


「で、でも、一応、大国の皇帝陛下様相手なんですよ? 国同士の関係に万が一ヒビでも入ってしまったら……」


 お二人が友人同士とは言っても、親しき仲にも礼儀ありという言葉もある。

 あまりやり過ぎると、どこでその関係に亀裂が入るとも知れない。

 だから、早くお二人の騒ぎを止めてくれませんかと懇願する私だったけど、やっぱりルイヴェルさんは全然心を揺らす様子を見せてくれない。

 カインさんの方に寄って、身体の調子はどうかと尋ねると、私の方にも経過を聞いてくる。動じないにも程がある!!


「いいですか? たとえ体調が戻っているとしても、暫くは注意して生活してください。でないと、また寝台に逆戻りした挙句、苦い薬を呑む羽目になりますからね」


「全然私の話を聞いてくれませんね、……ルイヴェルさん」


「両陛下の事なら心配いりませんよ。この程度で戦争になど発展しませんし、関係の悪化もありません。あれが、あのお二人の仲の深め方なのですよ」


「本当に……?」


「ふあぁぁ……、親父だって本気で腹が立ってんなら、すぐにやり返すだろ……。それをしねぇって事は、レイフィードのおっさんに対して心を許してるって事で」


「許してない!! 許してないぞ、カイン!!」


 欠伸を噛み殺しながら椅子に重みをかけたカインさんに向けて、すかさず飛び込んできたイリューヴェル皇帝さんからの必死過ぎる抗議。

 何だかさっきよりも悲惨な事になっている気がするのだけど……。

 確かにあんな大きな竜にも変身出来る人が、本気の抵抗もせずにそのままされっぱなしというのもおかしな話だ。どうやら、ルイヴェルさんとカインさんの言葉は正しかったらしい。


「そうなんですね……。わかりました。じゃあ、もうお邪魔はしません。お二人で心ゆくまで楽しんでくださいね」


「ユキさん!? 間違った情報をそのまま鵜呑みにするのはやめてくれぇえええ!!」


 あれがお二人のスキンシップの一環なら、心配する必要もないだろう。

 思う存分友情を深めてください、レイフィード叔父さん、イリューヴェル皇帝さん。まだ手をつけていなかったフルーツケーキの柔らかな生地にフォークを差し入れ、私はその蕩けるような甘さと瑞々しい果物のハーモニーを楽しむ事にしたのだった。


2015・04・28 改稿完了。

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