夏休み後の彼の親友
9月の最初の月曜日。
「いい日だよな」
「そう思うのは少数派だろうな、俺はこの日が来るのを毎年呪ってるよ」
蝉の声も途切れトンボが飛ぶ季節になった。季節は夏の跡を残しつつ秋を迎えた。
そして今日は学生にとっては一番嫌な日と言っても過言ではないと思う。まぁ否定の少数派はいるだろうが。
ちなみに俺の席の前で騒ぐ親友の柿本は紛れもなく夏休み明けを喜ぶ少数派だ。
「先輩はこの夏どうすごしてたかな?」
「少なくとも朝から晩まで図書館通いじゃなかったと思うぞ」
こいつは1学年上の先輩に何でか知らんが恋して付き合いたいと願っているらしい。実に無謀だ。
成績優秀で本好きなクール系美人とくれば、男からの人気は高い。片方は、成績平均で運動好きのチャラい系の柿本じゃ趣味的にも何もかも釣り合わない。
いや、それでも親友としては応援はする。が、迷惑はかけるなと言いたい。夏休みの平日は図書館通いに付き合わされてたせいで夏休み過ぎた今皆、健康的に日焼けしているのに俺達は肌が白いままだ。不健康な夏休みになっちまった。図書館の休館日くらいじゃないだろうか、外で遊んだりしたのは。
「そのおかげで今年は宿題を夏休み最後の日にしなくて良かったんだろ?」
「それに関しては嬉しい副作用だな」
平日付き合わされたおかげで宿題は夏休み前半ですっかり終わったとも。
こいつの先輩恋しさに泣き言を聞きながらの宿題は何とも言い難いものだったが。
「それで?先輩への告白は決まったのか?」
「一応。まぁ、先輩好みの告白かどうかは別にして夏休みの成果を示す」
ぐっと拳を握り上を見る親友には頑張ってもらわないと、ここまで迷惑かけられたのに不発でしたとかなったら流石に俺はキレる。
「じゃ、俺は図書室行くよ」
「おー。頑張れよ。」
どんな告白かは俺は知らねぇけど、『2人だけの秘密だよ。何か秘密の方が燃えるじゃん』とか言われたら聞く気はしなかった。人の恋愛に首突っ込んで馬に蹴られるのは嫌だからな。
親友の嬉々と浮かれた背を見送りながらため息しか出ない。あー俺も彼女欲しい。