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夏休み前の彼

毎日告白しても動揺もしない先輩の反応の少なさは俺は多少なり落胆していた。

今日は手を出したというか口を出したというか…額に口付けしてしまった。

いや、だって可愛くてつい。でも後悔はしてない!

まぁ、贅沢言ったら、そこで慌てた仕草をしてたら可愛いって言って、付け込む隙があったんだがなぁ。

でも、代わりに素敵なプレゼントを頬に貰いました。人として常識のない行為をしてしまいましたが、まだ脈アリだと信じたいです。しかも今日は、終業日。夏休みに会えない間に忘れられてないよな。不安で堪らない。


「おー。見事な紅葉だな」

教室に帰るとニヤニヤして出迎えた野郎。俺の毎日の努力を知ってるのに、この反応は親友としてどうかと思うが。まぁ、でも待っていてくれただけ親友としては、思いやりがあるやつだと思う。


「いーだろ?先輩からの初めてのプレゼント」


毎度の虚勢。毎日やってたら習慣化して虚しいも何も無い。実際、初めてのプレゼントだし。しかも今回は先輩からのボディタッチもあったし、一瞬でも。それにしても先輩の肌・・・手触り良かったな。さらさらのもちもちで・・・指に残る感触の残滓に浸っておこう。


「はー。何をやらかしたのか知らねぇけど、あの人形みたいな綺麗で感情無しの先輩にそこまで出来るのはお前くらいだよ」


「俺以外に居たら、焼きもち妬いちまうっての」


「野郎の餅焼いても食う奴いなくて腐って土に還るだけだけどな」


「土に還ったら、その分の愛の栄養分が恋の花を綺麗にするだけだ」


とは、言ったものの、そんな恋の花を見てくれる先輩ではないだろうけど。


「お?その白い本だ?」


「白い本?」


聞かれて首を傾げた。白い本を借りた覚えはない。

俺が借りたのは確か2冊、有名所の文学のものと倫理本だったはず、借りた本に何かあったか?

手元を見ると何故か3冊目の本があった。薄い本だったから持ってて気づかなかったんだろうけど。

背表紙にも学校図書のラベルは貼っていない。学校の本ではない?


「…恋愛小説?」


白いブックカバーで表紙が見えず中身で確認。

パラパラと飛ばし読みすると一ヶ所で押し花の栞が挟まっていた。持ち主のものだろうか?

栞を手にとると裏に流麗な字で文章が書かれていた。


『いつもの軽い告白は好きじゃないから、私に釣り合う為に図書室に通い詰めて勉強した言葉で告白して欲しい。私の好きな本を貸してあげる、出来るなら私好みの告白してね。夏休み明けに何時もみたいに図書室で待ってます。追記:一夏の恋くらいはしてもいいよ』


「・・・秋まで精一杯頑張ります」


誰に言うまでもなく。栞を握りしめて誓いますとも、せっかく手にしたチャンスを棒に振るほど余裕のある男じゃないので。それにしても先輩に会う為以外に勉強の為に行っていたことがバレていたのは何となく気恥ずかしい。いつも素面で告白している俺が何を言ってんだって言われるかもしれないけど。


「一夏の恋してきてもいいのよ?」


覗き込んだ野郎がニヤニヤしながら追記をリピートするが、分かったことを聞くなよ。


「花火のように儚いの短い恋より、綺麗な先輩と長い恋愛の方が俺には何倍もの価値がある」


「はー。そうかよ。まぁ、いいや。帰ろうぜ、明日から夏休みだしな」


「先輩のいない夏休みなんて…」


「夏休みの間に素敵な告白考えるんだろ?」


「そうだった。よし、明日から学校の図書館は空いてないし、県の図書館に通いつめるぞ」


「あー…あっちぃな。夏って」


先輩に告白するための夏休み計画を練る俺には親友の呆れた声なんて蝉の声と変わらないくらい、どうでもよかった。

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