GAME OVER
こんな作品ですが、作者の遺書とかそういうものではありません。
──先立つ不孝をお許しください。
この一言で締め括ったところで漸く重い筆を下ろした。
ああ、嫌だ。
だが、ここに至っては最早詰みで、他の選択肢など有りはしない。否、他の選択は許されない。
私がそれに嵌まってしまったのはネットゲーム好きという世間でよくある理由からだった。
ネットで見かけたカジノゲーム。
確かに課金でコインを購入しゲームに興じるわけではあるが、それはゲームのための参加料に過ぎないと思っていた。
だが実際は、それは仮想通貨に当たるということで、それ故にこれは違法賭博だという。
いや、まさか? 冗談だろ?
所詮はゲームと思っていたから深く考えることはなかったけど、どうやらそれは本当に仮想通貨であったらしく、それ故に私のやっていたことは紛れもなく違法な賭博だったようだ。
このことが公に発覚した途端、雇い主は私の懲戒免職を決めた。
どうやら世間の厳しい目があるために制裁は避けられないということらしい。
現在世間の注目を浴びる中、司法の取り調べが待っている状況だ。
正直、私にも情状酌量の余地はあると思う。単に私が無知だっただけなのだから。
だが、それはそれ、これはこれということで、私が罪を犯したことに変わりはなく、企業のイメージを大きく損ねたことに変わりはない。
故に見苦しく弁明を述べるという企業へ一層のイメージダウンとなる行為は許されない。懲戒免職の身となったとはいえ、長年勤めた企業に対する義務と義理がある。
そんな私の負い目に突け込まれたのだろう、企業は他に同様な行為をした者たちの罪の軽減のために私に一切の責を負わせると決めた。つまり私を罪の根源としたのだ。
確かに私は同僚たちにこれを勧めた。
私のお気に入りの一推しのゲームだったのだからこれは自然なことだろう。
そう、私は無自覚とはいえ、犯罪行為を助長しそれを企業内に拡散させていたのだから仕方ない。企業からすればまさに逆鱗に触れる行為であったことであろう。
こうして私は彼らを被害者とするべく一身に罪を背負うことになったわけだ。
一応私にも弁護人といったものが就いてはいる。だがしかし、彼に頼り私の罪の軽減を訴えることは許されないのは先に述べた通りだ。
ならば今の私にできることは、潔く自らの身を処すこと。司法の手が及ぶのを待つことは許されない。
これが社会的責任というものだと頭では理解しているのだが……。
「いかに無知たることが罪だとはいえ、これはあまりにも理不尽だよなぁ……」
せめて苦しむことのないことを祈りながら私は大量の錠剤を呷った。