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7頁


 一気に距離を詰められた私。振り上げられた包丁は悠太に向かって振り下ろされる。


「させるかぁあ!!!」

 蹴り足を無理やり戻して、戻り足で蹴ったけど、反転させた肩に包丁が刺さった。


「ぁあああ!!」


 痛い。痛かった。人生で1度も味わったことの無い痛み。


 包丁は深く刺さってる。お腹からはドクドク血が出てる。


 これは、ヤバいかも……。


 血が足りなくなった私は足がふらついて仰向けに倒れた。

「ごほっ」

 倒れた衝撃で出た咳には血が混ざっている。


 この辺で意識は朦朧としてたよ。私の下で啜り泣く悠太の声と温もりを感じながら、冷静にここまでかーって思ってた。

 もう。動けない。


 男からの追撃?


 蹴りがたまたま金的に当たったみたいで恨めしそうに私を見ながら蹲ってたよ。


「いやぁああ!!!!」


 心に限界を迎えたのだろう、菜月が悲鳴を上げた。


「あああ!」


 男が私の元にきて包丁を私から引き抜いた。引き抜かれた箇所からまた血が吹き出した。

 でも、不覚にも、強い痛いが、魂の抜けかけた私を覚醒させてくれた。


 悠太と、菜月、だけでも。


 そう思って息を思い切り吸い込んだ。私の上で男が再び包丁を振り上げている。

 力を振り絞り、上体をあげ、男の顔面を殴りつける。恐らくダメージはない。

 だけど、死にかけの私から食らった一撃に動揺したのか男は私から飛び退いた。


 その隙を突いて私は男に飛びついた。

 


「菜月!今のうちに悠太を連れて逃げなさい!!!」


 私を引き剥がそうとしてくる男に必死に組み付きながら言った。

 絶対に離さない。離すもんか。


「で、でもお姉ちゃんが!お姉ちゃんが!」


 いつもは葉月ちゃんなのに。お姉ちゃんなんて呼ばれたの本当久しぶり。嬉しかったよ。


「私はもう手遅れ!無理!たすかんない!だから菜月と悠太だけでも逃げて!」


 この間にも私は髪を引っ張られたり、刺されたりしてる。めちゃくちゃよね、こいつ。


「しっかりしなさい菜月ぃ!!あんたは悠太のお姉ちゃんでしょうが!」


 本当はもっと言ってやりたかったよ?

 菜月が加勢してしてくれたら勝てたと思う。私が生存してたかもしれないし、あんたも死ななくて済んだはず。

 あの子私より強いしね。


 んふ。でもあの子は臆病だからねー。


 笑い事じゃない?ごめんね。私を恨んでもいいから菜月のことは恨まないで上げて欲しい。


 それこそ私を恨む筋合いがないって?あるよ。

 あんたには悪いと思ってるけど、私は、菜月が臆病でいてくれて本当に良かったと思ってるの。

 だって菜月が怪我するかも知れない。もしかしたら一緒に殺されちゃうかもしれない。


 そんな事になったら誰が悠太を守るのよ。そうでしょ?

 んふふ、だからあの子はあの子のままでいいんだ。


 だから、私が言っても直ぐに動かなかったのは、最後まで悩んでたんだと思う。

 


「わかったよ。お姉ちゃん」


 ようやく菜月が動き出してくれた。後は私が、私の命が続く限りは、もがくだけ。


「絶対離さないからっ」

 目潰しのつもりで血でべったりの手で男の顔に押し付けると、目に血が入って染みたのか男は目を擦った。


 でも、私には組み付くことしか出来ない。

 攻撃出来ないのが悔しいかった。



 

「馬鹿ね」


 数十秒は時間稼ぎはできたかな?もう菜月は悠太を連れて逃げてくれたかな?

 あはーもう無理だー。体に力入らないよ。

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