表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お題シリーズ6

流されるしかない風船

作者: 枯谷落葉



 一瞬の油断で、おいらの体がふわりと浮かんだ。


 あーあ、手を放しちゃだめっていったのに。


「あっ、ぼくのふうせん!」


 持ち主が手を離したとき、おいらの体はふわり。


 狙ったかのように風がびゅおっと吹いたから、おいらは持ち主から一気に離れていってしまう。


 持ち主の男の子が慌てて追いかけるけれど、おいらはもう空の中。


 こうなったら、もう戻れないな。





 おいらは風船。


 伸び縮みする素材に空気を入れて、ばーんとふくらむまぁるい体が特徴なんだ。


 空気が逃げないようにひもでしばれば、それだけで簡単につくれるよ。


 だから、お祭りの時とかには、たくさんのおいら達が作られてる。


 材料が安いし、作るが簡単だからはすぐできちゃうのがいいのかもね。


 おいらは、どこでもひっぱりだこの、人気ものなのさ。


 でも注意が必要だ。


 おいら達は軽いからね。


 風がちょっと吹いただけでもあっという間にさらわれちゃう。


 だから持ち主になった人達は、おいら達が飛ばされないように、しっかりと握ってなくちゃいけないんだ。


 そうしないと、二度と戻ってこないかもしれないからね。







 びゅう、びゅう。


 すごい勢いで風が吹いてる。


 おいらは、どこまでもどこまでも、とばされる。


 持ち主の姿はもう見えなくなっちゃったや。


 しょうがない。


 これも運命だ。


 そう思ったおいらはのんびり、空の旅を満喫。


 持ち主との触れ合いは短い間だったけど、これはこれで悪くないさ。


 おいらは風船として生まれてきた、風船として必要とされたんだから。


 生み出されても、持ち主の手に渡る前にとばされちゃうものも、わずかにあるからね。


 おいらは風船としての仕事をやりおえる事ができたのさ。


 それに。


「ぴい! ぴい!」


 巣立ったばかりの、飛びつかれた小さな鳥さんが、おいらの上に落ちてきた。


 つい先日までヒナだった子だね。


 不安そうにしてるや。


 空に飛ばされてると、こういう事もたまにはあるから。


「ぴい?」


 おいらがいて良かったね。


 鳥さん。


 元気になるまでおいらの体の上で休んでいるといいよ。

 

「ぴい!」


 ほら、案外こんな人生ーーじゃなくて風船生も悪くは見えないよね? 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ